居心地の悪さ感じる紀夫 / べっぴんさん 第43話

連続テレビ小説(朝ドラ)『べっぴんさん』
2016年11月21日(月)放送
第8週 第43話「止まったままの時計」

『べっぴんさん』第8週 第43話 あらすじと見どころ解説

紀夫がすみれのもとに帰って来ました。紀夫の生還を知らされた五十八や潔、紀夫の両親らも早速駆けつけて来ます。紀夫を待っていた面々は、すみれたちがこれから入居する新しい店で紀夫の生還祝いを開くことにしました。

紀夫の生還を誰もが喜んで迎えましたが、紀夫は居心地の悪さを感じていました。自分が継ぐはずだった坂東営業部は戦時中にすでに消滅していたこと。その坂東営業部を、自分が不在の間に潔やゆりが復活させようと尽力していること。

そしてすみれも自分で商売を始め、それを心から楽しんでいること。特に主婦たちが商売をはじめたことは紀夫の理解を超えていました。すっかり変わってしまった神戸の街の様子が紀夫をさらに困惑させます。

紀夫はすみれが店を経営することに異を唱えました。すみれが失敗して借金を抱えてしまうことを紀夫は案じていたのです。さらに紀夫は坂東営業部に復職するつもりはありませんでした。紀夫は自分の居場所を見失ってしまっていたのです。

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紀夫が戻ったことすみれが喜んだのもつかの間、出征前から心の中の時間が止まったままの紀夫は、その後の環境の変化についてゆくことが出来ません。

一方、紀夫とは「初対面」となるさくらは、幼さ過ぎることもあり紀夫のことを父親として認識することが出来ません。

ようやく帰国出来たものの、紀夫は孤立を深めてゆきます。

『べっぴんさん』第8週 第43話 事前発表あらすじのレビューと史実解説

紀夫の帰国後の描写は史実と大きく異なります。リアルでは、それぞれの人物は何を思いどのような行動をとったのか。劇中キャラ名によってまとめてみます。

ジャカルタから船で帰国した「紀夫」を「すみれ」は岡山県勝山町で迎えました。その頃、「すみれ」が岡山県に住んでいたのは、戦時中に「ゆり」を頼って姉の嫁ぎ先の実家に疎開していたからです。

「紀夫」が「すみれ」のもとに戻るとほどなくして夫妻は神戸に移転。

「紀夫」と「すみれ」一家は慣れ親しんだ神戸の地に戻ったものの、戦時中まで暮していた家は神戸大空襲によって失っていました。

家もなければ家財道具のひとつもないところからの新生活の出発を「すみれ」と「紀夫」は余儀なくされました。

昭和21年(1946年)5月。「すみれ」28歳、「紀夫」29歳、「さくら」は3歳でした。

『べっぴんさん』第8週 第43話 観賞後の感想

生還早々の紀夫くんの疎外感!

坂東営業部での疎外感

もし仮に紀夫くんが潔くんと同じタイミングで戻って来たとしても、坂東営業部を復活させようと励む潔くんとゆりちゃんの姿を見て、引っ込み思案の紀夫くんは疎外感を感じていたような気がします。

几帳面な性格の紀夫くんは、すでに形が出来上がっている戦前の坂東営業部ではきっと有能な社員であったかと思います。

戦前の坂東営業部での紀夫くんの働きぶり。誰よりも早く出社して机まわりの整理整頓からその日一日の仕事を始める勤勉な態度が彼の有能ぶりをよくあらわしていました。

しかし、闇市からの再起を目指す坂東営業部は、名前は一緒でも戦前の坂東営業部とは状況がまったく異なります。

勤勉さがあれば通じる世の中でもありません。

潔くんが戦前からの得意先との関係を次々と復活させもしかすると新しい得意先も開拓する中で、そんなことが大の苦手な紀夫くんは疎外感を感じていたような気がします。

自分の出る幕はないと。

潔くんと同時期に帰還し一緒に坂東営業部の復活に向けて働いていても疎外感を感じていたに違いない紀夫くんが、潔くんたちがすでに坂東営業部の復活を進めている真っ只中に戻って来たら、その疎外感たるや筆舌に尽くし難いものがあったのではないかと思います。

すみれちゃんの家で、帰って来た紀夫くんを囲む五十八さんや潔くん、ゆりちゃん、そして忠さん。面々の賑やかな談笑の音声は消え、孤立を深める紀夫くんの表情のみにフォーカスが当たる。

紀夫くんの疎外感を痛々しいほどにあらわす演出でした。

商店街での疎外感

家の外で絶えず警戒感をあらわにする紀夫くん鋭い目つきが痛々しさを増幅させました。

商店街を闊歩する二人連れの米兵をにらみつける射るような眼光。自分の生活圏内に米兵が暮らしていることに慣れていない上に、彼らは一年前は敵でした。

しばらく前であれば、彼らの姿を目撃したらたちまち交戦がはじまった環境に身を置いていた紀夫くんからすれば、米兵の姿に生命の危険すら感じたかも知れません。

生還祝いの宴の席で出された食事の大半が米軍の食糧品ということにも違和感を禁じ得なかったかと思います。

そしてまたしても仮の話ですが、もし紀夫くんが潔くんと同じタイミングで戻って来て、潔くんらと闇市からの坂東営業部の復活に従事していたら、やはりそれはそれで深い人間不信に陥り、人を簡単には信じないようになっていたような気がします。

闇市の中では元締めが力による支配を行なっている。戦前からの取り引き先まわりの道中では幾度も危険な目に遭ったかも知れません。

戦後の混乱した世の中は、引っ込み思案の紀夫くんの目には生き馬の目を抜くような環境に映ったはず。

そんな環境ですみれちゃんが働くことを紀夫くんは反対していたに違いない。もしかすると昭一さんが君枝ちゃんが働くことを反対した以上にです。

ところでちょっとだけネタバレになりますが、紀夫くんは心に深い傷を負っています。

生き残るために友を裏切ることすら日常茶飯事だった環境に身を置いて完全な人間不信に陥っていると思われる紀夫くんにとって、女性たちが世知辛い世の中の真っ只中で誰からも守られずに働いている。

そんな紀夫くんにしてみれば危険極まりない状態を、よその家の夫たちは笑って見ている。

心に深い傷を負っていなかったとしてもすみれちゃんが商売をすることを案じていただろう紀夫くんです。

今の目の前で展開している状況。完全に理解を超えているはず。

かくして紀夫くんはすみれちゃんに対しても心を閉ざしてしまいました。止まったままの時計が再び動き出すまでの物語の始まりです。

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8 Responses to “居心地の悪さ感じる紀夫 / べっぴんさん 第43話”

  1. たこやき より:

    紀夫くんの孤独感。声高にならない演出だから聞き逃してしまいそうだけれど、紀夫くんからしたら、列車のなかで聞いた噂話などから、すみれちゃんたちが「闇市」のなかで女性たちばかりで商売をしているイメージを持ったんでしょうね。そりゃあ、心配だし反対もするでしょうね。

    何も出来なかったお嬢様のすみれちゃんが紀夫くんに意見を言ったり、孤独になるしかないですよね。

    ところで、うちの3歳の男の子はさくらちゃんの大ファンで、教育テレビを録画したものの次に「べっぴんちゃん観よう!」と言ってくれます。前作は花山さんとか松さんが怖くて一緒にみられなかったので、今回は楽です。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうござます。

      > 「闇市」のなかで女性たちばかりで商売

      商店街だけは焼かれずに済みましたが、周りを見渡せば闇市や廃墟のような街ばかり。そんな中で女性だけで商売しているわけですから心配しないほうが不思議かもしれませんね。

      > さくらちゃんの大ファン

      さくらちゃんを演じている子役の女の子の熱心なファン第1号ですね!

  2. あかり より:

    米兵や彼らに群がる子どもたち、アメリカの缶詰。紀夫さんには受け入れがたいものだったことでしょう。私にとってはは歓迎会の最中、通りで流れる「同期の桜」がもの悲しく感じられました。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうござます。

      > 紀夫さんには受け入れがたいもの

      数ヶ月前までは戦っていた相手ですからね。戦闘相手の食べ物で生還祝い、紀夫くんには皮肉過ぎる迎えられ方だったと思います。

  3. 笑子 より:

    はじめまして。
    「あさが来た」からこちらのサイトを楽しませていただいています。

    今までいろいろドラマを観てきましたが、心の壁を物理的に作ってしまう人を見たのは初めてなような気がします。
    先週末の予告の時から気になっていましたが、隠れたうえに扉をガラッと閉じる音が印象的でした。

    そして、今までもさくらちゃんが小さいのに演技力あるなぁ、と思いながら見ていましたが、今日は目力と目の動きだけですごい演技をするなぁ、と改めて思いました。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      はじめまして!コメントありがとうござます。

      > 心の壁

      子供が部屋に閉じこもるというのはよくありますが、大の大人がああいう行動を取るのは珍しいかも知れませんね。

      > さくらちゃん

      人見知りをまるでしないところもすごいなっていつも感心してました。本当にいい子です。

  4. よるは去った より:

    紀夫「僕には理解できません。」妻たちが働いているという現状、坂東営業部に自分の居場所がないのではという思い込み。そして米軍兵に「ギブミチョコレート」と群がる子供たち、パーティーの卓上に並ぶ、アルファベットで商品名が記された数々の食品、そんなものまでが紀夫君の複雑な想いに拍車をかけているんですね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうござます。

      > 僕には理解できません

      出征前との環境のギャップ。そしてしばらく前まで身を置いていた戦場や捕虜収容所とのギャップ。浦島太郎以上の浦島太郎気分を紀夫くんは味わっているのではないでしょうか。

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