連続テレビ小説(朝ドラ)『とと姉ちゃん』
2016年6月23日(木)放送
第12週 第70話「常子、花山伊左次と出会う」
『とと姉ちゃん』第12週 第70話 「常子、花山伊左次と出会う」あらすじと見どころ解説
編集長の谷が警察に捕まりました。常子が企画した「ユーモア特集」が不謹慎だと検閲の目に止まり、甲東出版の責任者として谷が連行されてしまったのです。五反田は雑誌の回収作業の陣頭指揮に立ちました。役人の命令に即座に応じられるための対応です。
同じ頃、青柳商店では清が大きな案件の仕事をとってきました。しかし、その仕事に滝子が難色を示します。清がとってきた仕事は安い材木ばかりが用いられ、しかもその材木で建てる工場宿舎は四畳半の部屋に四人が寝泊まりするというものでした。
滝子はそんな安普請の仕事に関わることが許せませんでした。しかし、こんな仕事でも引き受けなければ青柳商店を続けてゆくことが出来ないと清は滝子に反発。滝子は清の意見を受け入れ、工場宿舎の仕事を清に一任します。
一方、谷が釈放され戻ってきました。雑誌の販売許可はおりたものの、それには一つの条件がありました。ユーモア特集のページを削除することが販売の条件です。常子は自分が発案し挿絵をとって来たページを黙々と切り取り始めるのでした。

近所の子供たちを笑顔にする隈井の行動に着想を得て雑誌の企画をまとめた常子でしたが、それはお上の意向に沿わないものでした。
自分の職業に誇りを持つほどに働きにくい時代の到来です。
『とと姉ちゃん』第12週 第70話 「常子、花山伊左次と出会う」
事前発表あらすじのレビューと解説
暗い時代だからこそ笑顔を取り戻そう。
常子の願いは世間一般の人々の望みと合致していたかと思います。しかし、お上の意には沿わないものだったようです。
「笑い」など不謹慎だと常子の企画は検閲で引っ掛かり、常子の上司に当たる谷編集長が検挙されてしまいます。
ところで、お上に捕まってしまう谷編集長を演じるのは山口智充さん。
前作『あさが来た』クライマックス近くで、加野屋の庭に梅の木を植樹する植木職人に引き続き朝ドラ連続出演です。
一方、青柳商店もピンチです。
久しぶりに青柳商店の仕事として清がとってきた大型の案件はしかし、滝子の納得出来る内容の仕事ではありませんでした。
病床の滝子の苦悩を観るのがつらくなりそうな回となりそうです。
『とと姉ちゃん』第12週 第70話 「常子、花山伊左次と出会う」
朝ドラ観賞後の感想
清くんの誠心
清くんの真剣な姿がまぶしい!
病気のため青柳商店の経営の一線から身を引いたらしい滝子さんよりも、今は店の台所を預かる番頭さん・隈じいはもちろんのこと、実務の最前線を担う清くんのほうが青柳商店の窮状を深く理解しているのかも知れません。
「いい加減にしてください!」
清くんが滝子さんを一喝するのには心底驚かされましたが、考えに考え抜いた末の工場宿舎の受注の決断を清くんは下していたのでしょう。それだからこそあそこまで強い口調で言えたのかと。
完成後の工場宿舎の住環境は決してよくないこと。そこに使われる材木も安物ばかりであること。そして、それらを滝子さんは嫌がることも清くんは承知していたはず。
しかし、清くんは隈じいと宿舎のつくりを秘密にしてまでもその仕事を受注したかった。
そして工場寄宿舎の仕事を受注したかったのは、自分の手柄を立てたいなどという私欲のためでなく、青柳商店の暖簾を守りたいという一心からのこと。故郷に返した小僧や女中を再び呼んで賑やかに働きたかったからのこと。
そんな清くんの誠心が泣かせてくれます。
隈じいが清くんとの「共謀」にのったのも、清くんの決断を信じたからに違いない。そして泣き虫だけれど仕事は確かな隈じいが認めたのだから、清くんの判断は確かなものだと約束されたようなもの。
かつての自己流を人にも押し付ける滝子さんの悪いクセが一瞬出てきたものの、清くんと隈じいの私心のない気持ちが通じたのか、すべてを清くんに一任することになりめでたしめでたしでした。
「責任」を「手柄」に上書き
自分の提案した企画「ユーモア特集」が目をつけられ谷社長が逮捕。そのことを気に病む常子ちゃんに対する、会社に戻ってきた谷社長の第一声が粋なことこの上ない。
「一人の手柄にされちゃ困るな」
谷社長がいくら今回の騒動は自分の責任だと言ったところで、常子ちゃんのような性格であれば、よけいに自分の責任を感じてしまっていたはず。
自分の「責任」を痛感し落ち込む常子ちゃんの「責任」を「手柄」に上書きして「責任」を一身に背負い込む常子ちゃんの心の負担を軽くしてあげたその上で、その「手柄」を独り占めするなとユーモアで丸く収める谷社長の手腕がみごと。
さすが人の上に立つ人。見習いたいものです。
常子ちゃん、二度目のページ削除作業
思えば甲東出版での常子ちゃんの初仕事は検閲に引っかかったページの削除でした。そして今回再びページの削除を強いられれる。
ところで初仕事の時のページ削除、その時の常子ちゃんは何の感情も持たずにページを切り取っていたはず。(一方の五反田さんはさぞかし悔しい思いをしていたかと)
今回、初仕事の意味するところが痛いほどわかった常子ちゃん。
同じ作業を繰り返し行い、その作業の悔しさを味わったことが自由な雑誌出版への憧れの原動力になったのかも知れません。
コメント
建築の宿舎ですが、今日の放送では四畳と言っていたような。
コメントありがとうございます。
四人で四畳だとケンカにならないので、四畳かもです。確かめようと思ったのですが録画されてませんでした(涙)
出だしからごめんなさい。朝蔵さんあらすじの部分で四畳って書いてありますが、四畳半の間違いでは?
清くんと滝子さんの親子(?ですよね)初めて観る言い争い。これもまた初めて観るあの清くんのへこんでしまった姿。でも、さすが翌朝は任せるって言ってあげる滝子さん。
谷社長、口のケガだけで良かったですね。これからも~っと酷いことされた人いましたもんね。あえて名前出しませんが・・・。しかし、<ごちそうさん>といい、なんで当時のお上は理不尽なんでしょうね(怒)
コメントありがとうございます。
谷社長、小さなケガだけで済んで良かったですが、劇中で役人の姿が描かれなかったのも救いでした。腹立つ役人が画面に登場したら朝から不愉快になるところでした。
> 四畳半
早速訂正しました。ありがとうございました。
清さんが初めて滝子さんに意見しましたね。
もうプライドでやっていけない時代なのですね。
清さんにもうまかせてもいいと思うのですが。
常子もせっかく自分の企画が通って出版されることになったのに。
本当に軍国主義はいやですね。
今でも軍が政治を握っている国は国民の事を考えてないですしね。
コメントありがとうございます。
滝子さんに反論する清くんの姿を見て、彼は本気で仕事してるんだと深く理解できました。滝子さんが見込んだだけのことはあっていい男です。
滝子「みんな現在の暮らしを守ろうと懸命に・・・・・。」 この言い分はどこまで通じたのでしょう?青柳商店を守るために今までのやり方を否定するやり方の仕事をうけざるをえなかった清君の心中もはかりきれないものがありますね。そして甲東出版の面々が哀しみを隠すが如くに黙々と「問題」ページを切り取る姿も見ててやりきれなかった。
コメントありがとうございます。
ページ切り取り作業。常子ちゃんの初仕事もこれでしたが、あの時も五反田さんはつらく悔しい思いを胸にかくして仕事してたんでしょうね。
滝子さんの病名は再生不良性貧血だと思います。当時は効果的な治療法はなかったと思います。日赤太郎
情報提供ありがとうございます。
当時は治療法が確立されていなかった病気であることを知り、どれほど深刻な事態なのかようやく腑に落ちました。