昭和17年、すみれ女学生 / べっぴんさん 第6話

連続テレビ小説(朝ドラ)『べっぴんさん』
2016年10月8日(土)放送
第1週 第6話「想(おも)いをこめた特別な品」

『べっぴんさん』第1週 第6話 あらすじと見どころ解説

昭和17年(1942年)。17歳になったすみれは、親友の多田良子と田坂君枝とともに女学校で「手芸倶楽部」をつくり刺繍に没頭する日々を送っていました。一方、20歳になったゆりは、女子大を卒業後は父の会社に入社するつもりでいました。

その頃、父の五十八は坂東営業部の経営の一切を野上正蔵とその息子の潔に任せ、自身は貴族院議員として方々を奔走する日を送っていました。しかし戦争の影響により坂東営業部は商売の縮小を余儀なくされていました。

坂東営業部の縮小の影響は坂東家にも及びます。坂東家は家の使用人たちを解雇せざるを得ない苦境に立たされていました。解雇された使用人の中には明美の母で女中のマツも含まれていました。マツを解雇された明美はその理不尽さが納得できません。

そんな中、潔に召集令状が届きます。潔の出征を知らされたすみれは、その時はじめて自分が潔に恋をしていることに気がつきました。しかし、潔に想いを寄せているのはすみれだけではありませんでした。姉のゆりも潔に恋心を抱いていたのです。

midokoro
ヒロインの幼少期が描かれるのは第一週の金曜日まで。土曜日の放送回の大部分は、成長したヒロインの姿が描かれるようです。

今回劇中で描かれる時代はすでに戦時下。

日中戦争や真珠湾攻撃に端を発した日本と英米との開戦の描写をスキップし、戦前から戦時下に一気に突入するスピーディーなストーリーテリングがみごとです。

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『べっぴんさん』第1週 第6話 事前発表あらすじのレビューと史実解説

前回の劇中で描かれた時代は昭和9年(1934年)。そして今回が昭和17年(1942年)。その間の8年間が大胆にスキップされましたが、史実はこの間に重要なイベントがいくつも存在しています。

すみれの実在モデル・坂野惇子さんが、女学生時代に将来の夫・坂野通夫さんと出会い交際をはじめたのが昭和10年(1935年)。

その四年後、昭和14年(1939年)坂野惇子さんは京都帝国大学を卒業間近の坂野通夫さんと婚約。翌年の昭和15年(1940年)に結婚しています。

尚、五十八の実在モデル・佐々木八十八さんが佐々木営業部の経営の一切を、野上正蔵の実在モデル・尾上設蔵さんに託したのは大正12年(1923年)。

劇中で五十八が実業界を引退するはるか以前のことでした。

また、劇中で野上正蔵の右腕として秀でた商才を現しはじめる正蔵の息子・潔。彼の実在モデルである尾上清さんは、戦後に初代レナウン社長に就任。名物経営者として、数多くの逸話を残しています。

『べっぴんさん』第1週 第6話 観賞後の感想

目立たない三人組

女学校の仲良し三人組。ヒロインのすみれちゃんは他の二人を引っ張るリーダータイプではなく、良子ちゃんもすみれちゃんと同じくらいおとなしい。

悦子さまに反論を試みた君枝ちゃんも、やっぱり他の二人と似て小心者。

「なんか、なんかな」

思ったことをなかなか言葉にあらわすことが出来なかったリトルすみれちゃんの性格は今もなおそのままで、集まってくる友達もみんな似た者同士。

クラスの中で一番目立たないタイプばかりが集まった三人組。いつも隅っこでおとなしくしてるグループが今後の物語の中心になるというところがとっても新鮮です。

このおとなしい三人組が創業者として会社を率いてゆけるのか?と思う反面、どのように成長してそんなところにたどり着いてしまうのか、興味津々です。

ちなみにヒロインすみれちゃんのモチーフとなった坂野惇子さんは、自分が何かで一番になること、すなわち目立つことが嫌いな女性だったようです。

だからファミリアを創業後も、社長になることを固辞。ファミリアの創業者の他の三人の女性いずれも社長には就任していません。

そんな史実を参考にして、劇中ではすみれちゃんたちを目立たない三人組にしたのかも知れませんね。

明美ちゃんの暗い情念

目立たない三人組とは対照的な性格の、未来のもう一人の創業者・明美ちゃん。性格だけでなくその境遇も対照的です。

長い年月にわたって坂東家に仕え続けてくれた女中さんのマツさんを解雇せざるを得ない五十八お父様の断腸の思いをまったく知らず怒りを募らせる明美ちゃん。

食糧事情が厳しくなっているとはいえまだまだおっとりしている女学校三人組と対比しながら描くことで、明美ちゃんの暗い情念を際立たせる演出の巧み。

その明美ちゃんの暗い情念にまったく気づかず、明美ちゃんがいることにすら気づかず、相変わらずポーッとしながら自宅に帰るすみれちゃん。

この描写が明美ちゃんの暗い気持ちを増幅させて見せてくれました。

目立たない三人組が会社の創業者になるというのも、今の三人の姿からは想像も出来ませんが、そんな三人組に明美ちゃんが加わるというのはもっと想像することが難しい。

だからこそ、今後の展開から目が離せなくなる。

第一週にして、観る者の心をここまでつかんでしまうストーリーテリング。

スピーディーな展開のように見えて、一人ひとりの人物描写や細かな場面のディティールにもこだわりがあり、飽きがこない。

傑作の予感がしてきました。

潔くん25歳

召集令状が届いたそのウップンを晴らそうと神戸の街中をバイクで疾走しつつも、坂東営業部に戻るやそんな気持ちは封印し、元気のない社員たちに檄を飛ばす姿。

潔少年もいい男でしたが、潔青年は男に磨きがかかりました。

潔くんのモチーフとなったのはレナウン初代社長の尾上清さんです。この尾上清さんの人物像がとにかく面白い。

この人物を忠実に再現したドラマか映画を観たいほど。

そんなわけで劇中での潔くんの描かれ方に注目していたのですが、今回観たかぎりではなかなか面白いキャラになりそうです。

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16 Responses to “昭和17年、すみれ女学生 / べっぴんさん 第6話”

  1. ぷん より:

    明美ちゃん母子の黒っぽい傘と、ボーっとしている すみれちゃんの赤い傘が対照的でした

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。お久しぶりです!

      > 赤い傘が対照的

      状況が状況だけに赤と黒の対比が残酷なほどでしたね。

  2. とん より:

    マツさんも五十八さんの苦悩は知ってたはずなのに、明美が悪態ついても五十八さんを庇うための今までの恩義は一言も口にしない。マツさんにとってここは単なる働き口であり、あくまでもビジネスライクな働き方だったのかな?
    個人的には明美逆恨み、マツたしなめる、を期待してました。「堪忍な」で一人背負い込んだつもりなのでしょうか。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > マツたしなめる

      僕もそうなるものとばかり思ってました。でも仕事は見つかると強がって言ってたのは焦りの裏返し。たしなめる余裕などなかったのかも知れません。

      • とん より:

        なるほど、確かに余裕がなかったのかもしれませんね。
        明美が泥棒扱いされた時も、明美を庇おうとせず「堪忍な」で済ませてました。
        明美のキャラクターを形作ったのは、いつもいっぱいいっぱいのマツさんの言動だったんでしょうね。

        • 朝蔵(あさぞう) より:

          コメントありがとうございます。

          > いつもいっぱいいっぱいのマツさん

          立派な人格者でなく、どこにでもいる小心な女性ということなのかも知れませんね。

  3. もんすけ より:

    「はしたない…」
    悦子さまの言動に対してつぶやく君枝ちゃん。
    久々に胸がすく言葉を聞いた気がします。

    はっきりと物をいえることは素敵なことではあるものの、それを聞く人の気持ちへの心配りがなければ、ただの独りよがりな自己主張になってしまう惧れもあります。
    よい意味での「たしなめ」の言葉を使える、芯ある奥ゆかしさを持つ君枝ちゃんにとても好感がもてますし、また、「なに?」と耳に手をあて答えることしかできなかった悦子さまも、続く正論にちょっぴり(はっ!)としたのかもしれないと思うと、これまたちょっと可愛らしく思われて…。

    1週間経ち、ようやく名前やキャラクター設定に慣れてきました。
    来週は、一気に物語が進行しそうですね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 芯ある奥ゆかしさを持つ君枝ちゃん

      君枝ちゃんのキャラクターへの深い洞察をうなずきながら読ませてもらいました。

      > ちょっと可愛らしく思われて

      悦子さまは気位が高そうですが、やはり育ちの良いお嬢様なのか根は素直そうですね。

      仲良し三人組や悦子さまたちの学園ドラマをもっと堪能したいなと思うのですが、来週は物語がさらに加速し学園ドラマをまったり楽しむヒマはなさそうです。

  4. えびすこ より:

    年内の放送分は歳月の進行が速いようですね。
    とと姉ちゃんでは中盤で終戦なので。
    高良くんふんする潔は白洲次郎のようですね。
    さて、べっぴんさんにシャーロットさんの出演も決まり、現時点で新旧ヒロインが4人登場です。

    先週まで放送されたとと姉ちゃんのヒロインだった高畑充希さん。今年の紅白の紅組司会本命だそうです。
    実現できると男女通じて「平成生まれ初の紅白司会」になります。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 潔は白洲次郎のよう

      同じことを考えてました。そして、白洲正子・次郎夫妻をモデルにした朝ドラを観てみたいなとも。

      > 紅白の紅組司会本命

      『とと姉ちゃん』紅白特別編も楽しみです。隈ジイと清くんが出てきたら感激です。

      • えびすこ より:

        以前にどこかで言及したかもしれないですが、高良くんはNHKドラマで
        白洲次郎の青春期を演じておりその時を彷彿としていました。
        なので白洲次郎の様だと言っても過言ではないです。
        場所が違うので当然と言えば当然ですがとと姉ちゃんの時と比べると、同じ戦時中でも街の様子・世間の雰囲気・主人公の知人の気概が全然違いますね。
        さらに主人公自身が既婚者か独身かでも日々の気の持ち方も全然違うでしょう。

        ところで昨日の土曜スタジオパークは見ましたか?

        • 朝蔵(あさぞう) より:

          コメントありがとうございます。

          > 白洲次郎の青春期

          思い出しました。伊勢谷友介さんが白洲次郎を演じたときの作品ですね。これは観ました!

          > 土曜スタジオパーク

          こちらは観ることが出来ませんでした。

  5. よるは去った より:

    菅野N「この頃、ほとんどの人が日本は勝つと信じていたのです。」 日本政府や軍のお偉いさんは皆「勝ち目のない戦争」とはわかっていたそうですね。でも口にすることは出来なかった。結局突入させてしまったのは「世論」だそうですね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 結局突入させてしまったのは「世論」

      某新聞社もずいぶん煽ったみたいですね。しかも煽れば煽るほど販売部数が伸びるので、記者たちは戦時中はバブル状態だったと当時の記者の手記を読んだことがあります。

  6. 日赤太郎 より:

    朝蔵さん、よろしくお願いします。
    第一週目で自分の片親が病死して、影響を受ける。
    完全にトト姉ちゃんの構成と似ていますね。史実では長生きされたお母様を早く亡くならせてしまい、これもトト姉ちゃん母と同じですね。
    これでは何処かの国のドラマと同じで、交通事故と記憶喪失を繰り返し、多くのストーリーが進む物と変わらくなります。
    今後は再考を願いたいです。
    また、不治の病で重要人物が比較的早く亡くならせていくのも前々作からの続きですね。
    医療従事者としてなんかなーと思ってしまいます。
    話しは変わりますが以前に亡くなった母が
    美人さんを見るとべっぴんさんと言っていましたと 朝蔵さんにお伝えしましたが、このべっぴんさんは別品さんという事みたいですね。でも美人さんの意味もあるのですよ。母は主人公より年下の昭和七年生まれ。準ミス大坂に選ばれOSK大坂松竹歌劇団に入っています。私の聞いていたのは水の江滝子さんと狸御殿という舞台をやったり、ラインダンスを踊ったいたという事です。そこに東京から来た大学出の金融機関で働いている男性が劇場に通い詰めて結婚を申し込みます。父の話しですが、今で言えばAKBに結婚を申し込む様なものですね。その父も映画の加藤隼戦闘隊や姿三四郎に出ていた俳優で親に反対されて会社員になり大坂に来るのです。史実はなんと変化に富んでいますね!
    出来れば史実にもう少し近づけて書いて頂きたいと思います。史実は面白いです。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 片親が病死

      肉親の死がヒロインの人生に影響を与えるという展開で思い出すのは『ちりとてちん』。しかしあの時の肉親の死のフラグの回収のみごとさには腰を抜かしそうになりました。

      > AKBに結婚を申し込む様なもの

      すごいドラマですね!そのまま朝ドラになりそうです。本当に事実は小説よりも奇なりです。本作の史実は脚色を一切加えなくても泣けるレベルなので、ありのままの史実は当ブログで楽しんでいただければ幸甚に存じます。

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