喫茶店主を引退するすず / べっぴんさん 第108話

連続テレビ小説(朝ドラ)『べっぴんさん』
2017年2月10日(金)放送
第19週 第108話「希望」

『べっぴんさん』第19週 第108話 あらすじと見どころ解説

二郎の夢を邪魔したくない一心から、一人で子供を育てる覚悟を固めキアリスで働き始めた五月でしたが、一人で子供を産むことへの不安に押しつぶされていました。二郎に会いたいと泣く五月に明美が告げました。今日が二郎のヨーソローの最終日だと。

明美のその言葉を聞いたさくらがヨーソローへ駆けつけると二郎がすずに別れを告げているところでした。しかし旅立ちを目前に控えた二郎は、憧れだった東京行きを断念せざるを得ない事態に陥ります。二郎の父が失踪してしまったのです。

父がいなくては暮らしてゆけない。東京に行かないでくれと弟に泣いてすがられた二郎は自分の運の悪さを嘆きました。そんな二郎をさくらが一喝します。運命と立ち向かい今の事態をどうしたら良いのか考えてほしいと。

翌朝。キアリスの面々が朝礼をしているところに二郎がやって来ました。二郎は五月に告げました。音楽は東京でなくとも出来る。しかし五月は神戸にしかいない。自分は東京に行くのをやめた。一緒に生きて欲しいと。

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midokoro
東京に行ってデビューのチャンスをつかむ夢を失った二郎。

自分一人だけで夢を叶える道は閉ざされてしまいましたが、愛する人と一緒に夢を追う新たな道を、二郎は五月とともに探す決意を固めます。

ほどなくしてその道は二郎と五月の前に開けるのでした。

『べっぴんさん』第19週 第108話 事前発表あらすじのレビューと史実解説

ジャズ喫茶ヨーソローのママ・すずが引退を宣言します。

夫に先立たれ一人息子を戦争で失い、たった一人でジャズ喫茶ヨーソローを切り盛りして来たすずでしたが、年齢には勝てないということでしょうか。

しかし手塩にかけて育てて来たジャズ喫茶ヨーソローを、これまで我が子同然のように可愛がっていた二郎と五月の若夫婦に承継したいと提案。

二郎は自分が追う夢に一歩でも近く環境を手に入れ、家族との縁が薄かった五月は最愛の夫とともに働く環境を手に入れました。

ちなみに店名のヨーソローとは外来語ではなく足利時代からわが国で使われ続けている日本語で、漢字では「宜候」や「好候」と表記します。

その言葉の意味は「(船を)このまま前進しろ」。『宇宙戦艦ヤマト』を楽しんだ世代にはお馴染みの言葉です。

ヨーソローを継いで欲しいというすずの申し出はまた、二郎と五月に「このまま前進しろ」というすずからのメッセージでもあるのでしょう。

かつてすずは言いました。五月には幸福をつかんで欲しいと。

すずの願いが今回ついに叶います。

『べっぴんさん』第19週 第108話 観賞後の感想

「こんなに嬉しいことは生まれてはじめてやわ」

今回の冒頭で描かれた、心から微笑み合うさくらちゃんと五月ちゃんの図。この場面を見てさくらちゃんはもう大丈夫だと確信することが出来ました。

そして、そんな安心感を与えてくれる場面から始まった『べっぴんさん』第108話は、さくらちゃんの加速する成長ぶりが強烈な印象を残しました。

二郎くんがヨーソロー最後の日だと聞かされたさくらちゃんが、ヨーソローへ駆けつけたのは、もはや自分の恋心のためでなく五月ちゃんのため?

五月ちゃんに顔も見せずに発つつもりなのかと、さくらちゃんは二郎くんに詰め寄るつもりだったのでしょうか。

一方、いきなり駆け出すさくらちゃんを追うすみれちゃんには、まだ一抹の不安が残っていたみたいです。二郎くんが旅立つと聞いて消えかけたさくらちゃんの恋心にまた火がついてしまったのではないかと。

でも母親の娘に対して抱いていた懸念は杞憂に終わりました。

上京を断念せざるを得ない状況に陥った自分の運命をののしりふさぎ込む二郎くんを一喝するさくらちゃんは立派でした。

「愚痴を言ってどうするの?運命から逃げずに立ち向かうためにはどうすればいいのか考えてください!」

このさくらちゃんの姿を見て、すみれちゃんもようやく娘の成長を心から信じることが出来たのではないかと思います。

ところで、しばらく前までは子供扱いしていたさくらちゃんに怒鳴られてしまった二郎くんですが、彼は彼で謙虚な一面があるみたいです。

さくらちゃんに叱り付けられてその場では黙り込んでしまったものの、その後ずっとさくらちゃんから言われた言葉の意味するところを考え続けていたのでしょう。

振り返ってみると、これまで描かれてきたジャズ喫茶ヨーソローは自分の居場所がない若者たちが現実から逃避する場所でした。

家の中での孤独に耐えかね孤独から逃げ出すためにヨーソローに入り浸っていたさくらちゃん。五月ちゃんもヨーソローにいる頃は笑顔を完全に忘れていましたが、それはつらい現実から目をそらすために必死だったからかと。

二郎くんがヨーソローで演奏していたのも夢を追うためというよりは、ダメな父親のもとで生まれてしまった自分の運命から逃げ出すため。

二郎くんの夢そのものすらも現実逃避が根底にあったような気がします。

そんな中、五月ちゃんがいち早く自分の運命と真正面から向き合う状況になりました。

でも五月ちゃんがようやく向き合ってみた自分の運命は、運命から逃げ回っていた時には想像すら出来なかった心優しい人々に恵まれるという運命でした。

さくらちゃんも運命から目をそらすことをやめた時、そもそも逃げ出す理由がどこにもないような恵まれた星のもとに生まれたことに気がつきました。

そして、一見するとカッコよく見えていたものの実は他の誰よりも運命から逃げ回っていた二郎くんが、運命と向き合うきっかけを作ってくれたのはさくらちゃん。

運命に立ち向かえと檄を飛ばすさくらちゃんの言葉を真摯に受け止めた二郎くん。このところヘタレぶりが残念でしたが、ちょっとばかり希望が見えて来ました。

さて、さくらちゃんに背中を押される形で二郎くんは五月ちゃんと再会出来ました。

その二人の姿を見て感極まって泣きだすさくらちゃん。

さくらちゃんの涙の半分は、五月ちゃんの幸福を喜ぶ嬉し涙。半分は自分の初恋がこれで完全に終わったことをさとった涙。

でもきっと前者の五月ちゃんの幸福を祝福する涙の方が、失恋の涙を上回ったに違いありません。そしてそんな自分の成長が涙が出るほど嬉しかったのかも知れません。

「こんなに嬉しいことは生まれてはじめてやわ」

さくらちゃんの「嬉しい」は、まだまだ言葉通りには受け取ることが出来ない複雑な感情をはらんだ嬉しさかと思います。

でも、その複雑な感情を「嬉しい」と言い切ったさくらちゃんの成長が僕も嬉しい。

そして誰よりも娘の成長を喜ぶすみれちゃんと紀夫くんの優しさと親の愛情に満ちあふれた表情がまぶたの裏に焼き付いて離れません。

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12 Responses to “喫茶店主を引退するすず / べっぴんさん 第108話”

  1. もんすけ より:

    「こんなに嬉しいこと…」とのさくらちゃんの言葉。
    失恋のほろ苦さを抱えつつ、心の底から人を気遣い、その人たちの幸せを喜ぶことができた自分が嬉しかったのでしょうね。
    さらに、今まで例えようのない苦しいもやもやの中、自分自身の思いをきちんとした言葉ではっきりと伝えたことがなかった自分。初めて「運命から逃げずに考えてください!」と言葉にした。それも、思いを寄せていた人に。結果、その思い人が言葉を受け止め、一歩踏み出した現実。
    (できる。自分も他の人のために一生懸命になることができる。)との自信にもつながったのかも、と。そして、その姿は、他ならぬ母親であるすみれちゃんの姿そのもので。
    ちょっと目頭が熱くなりました。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > できる。

      母親が立派すぎて自分では意識してないながらも自信がなかったのかも知れませんね。もんすけさんが書き込まれた「できる。」というコメントを読んでそんなふうに思いました。

  2. サエモン より:

    久々感想さくらちゃんが急に
    精神的に大人な対応になってきましたね
    元々がこんな感じだったけど
    むりやり反抗してた感じかな?

    夏休みの間は親子が一緒のシーンが
    多いから実年齢近いからか
    親子より姉弟や姉妹に見えてしまう

    2人だけや親子だけなら気にならないけど
    良子ちゃん一家は見た目が親子三代から親父と娘と息子に変わった感じに

    今日はすずさんの話やるかなと思いましたがやりませんでしたね

    五月ちゃんと二郎君はよかったね

    すみれちゃんとさくらちゃんもう仲直りしてるんじゃと感じてしまった

    ボールをストライクと言うのなんかよかった
    すみれちゃん 五月ちゃん 喜代さんが
    編み物するシーンがなんかほっこりしたが
    この光景をもうすぐみれなくなる寂しさも感じましたね

    あさいち松下さんだったようなので見たかったな

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 五月ちゃんと二郎君

      この二人、実にキレイにおさまるべきところにおさまりましたね。五月ちゃんの笑顔に泣かされました。

  3. ひるたま より:

    すみれちゃん・良子ちゃん・君ちゃんが、それぞれの子供達が生まれた頃の子育ての苦労を五月に語っていた時、それぞれの子供達-特にあの龍ちゃんまでも-が神妙な顔立ちで話に聞き入っていた場面が印象的でした。
    もっとも、その翌日の朝礼では相変わらず「いつもの龍ちゃん」全開でしたけど(^^;。…何だかんだで実は龍ちゃんが一番真っすぐに育っているのではないでしょうか。(^^)

    来週には、龍ちゃんそして健ちゃんの「見せ場」も用意されているようですね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 実は龍ちゃんが一番真っすぐ

      そして龍ちゃんは一番朝ドラらしいキャラでもありますね。この明るさ、他にはいません。

  4. ぷん より:

    五月ちゃんが二郎くんと抱き合った後、「大丈夫か?」という声が聞こえた気がしたのですが・・・
    健ちゃんでしょうか?

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 大丈夫か?

      僕も聞こえました。紀夫さんが言ったのかなと思ってました。

  5. えびすこ より:

    「ヨーソロー」が日本語であると知り驚き。この記事を見て初めて知りました。
    さて、どういう結末になるのか。さくらの夫(実際にはファミリアを引き継いだ人)になる人が最終盤で登場するか?

    ところで真田丸の時に一部から疑問視されたことに「当人と全く接点・面識がない著名な人・場面を極力出さない」があります。「人物の面識」は同世代の(同業の)人であっても対面経験がないと省略ということですね。
    反対の事例で「同世代・同郷だけど生前の接点・面識がほとんどないが、古くからの知り合いと言う設定」になることが以前ありました。
    人によっては「年と出身地が同じだからと言って旧友になるのはどうか」と考える人もいますね。

    べっぴんさんで言えば主人公が「カーネーション」の小原糸子のモデルの小篠綾子とは実際はほぼ面識がない、だから言及しないということなので適応されているのかも?

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > 接点・面識がほとんどないが

      『あさが来た』のあさちゃんと五代さまも、史実では一回か二回くらいしか会ったことがないみたいですね。

  6. よるは去った より:

    以前の「マッサン」の主人公のモデルの竹鶴政孝さんがグラスを持って「ノージング」している姿はラベルのデザインで用いられてますが、今日のドラマですみれちゃんが五月ちゃんの生まれてくる子のために懸命に刺繍している表情のアップも「キアリス」かこのドラマの商標にしたくなる図柄だなと思いながら見てました。小学生だったすみれちゃんが縫った刺繍を、はなお母様が「すみれが一生懸命作ってくれたんでしょう・・・・嬉しい。」の場面を想い出しました。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      コメントありがとうございます。

      > ドラマの商標にしたくなる図柄

      亡き母親と過ごした宝物のような時間の思い出。心を込めることが大切だと説いた麻田さんの教え。すみれちゃんが刺繍をする姿には様々なものが詰まっていますからね。本作を象徴する図柄かと思います。

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