2017年10月25日(水)第4週「始末屋のごりょさん」
あらすじ
啄子が、てんと楓の商家の嫁としての力量を競わせることにしました。藤吉が誤って大量に仕入れしまった古米や外米をてんと楓に売らせ、どちらが先にすべてを売り切るかを競わせることにしたのです。
競争が始まってすぐに二人の差ははっきりしました。北村屋の商売を見続けてきたために大阪の商売の流儀をわきまえている楓が、てんに大きな差をつけたのです。しかし、てんは米そのものに手を加えることで挽回をはかりました。
古米をだんごにすれば美味しく食べられる。日本人の口には合わない外米はライスカレーにすれば難なく食べられることを道ゆく人たちに宣伝。てんは斬新な発想によって持て余していた古米と外米を売り切り楓に勝利しました。
てんの思いがけない商才にほだされた啄子は、北村屋に代々伝わる商売の家訓と始末の極意を語って聞かせます。ちょうどその頃、ある人物が大阪に姿を現しました。風太が配達のために京都からやってきたのです。
予習レビュー
啄子さんによるてんちゃんへの激烈なイケズを覚悟していた第4週。
思いがけずトキちゃんが北村屋に送り込まれることで、てんちゃんは心強い味方を得ることができたのが前回。
そして今回。
啄子さんがてんちゃんと楓ちゃんに果たしたお米を売り切る競争で、てんちゃんがまさかの勝利を収めました。
啄子さんも、まだまだてんちゃんを嫁として受け入れるわけではありませんが、その力量だけは認めざるを得ないようです。
啄子さんによるてんちゃんへのイケズの日々、『ごちそうさん』の和枝姉さんによるめ以子へのイケズよりは短期間で収束するかもしれません。
ところでお米の販売に当たり、てんちゃんは思いがけない商才を発揮しました。嫁として認めてもらうために商才を発揮するという今回のエピソードは創作かと思います。
しかしてんちゃんの実在モデルの吉本せいさんは、寄席経営を始めたばかりの頃に商才を発揮したという史実が資料に残されています。
『わろてんか』で、てんちゃんと藤吉くんの寄席経営が始まる頃に、その史実を参考にしたてんちゃんの商才を表すエピソードが描かれるものと思われます。
今回の「商才エピソード」は、その時のフラグなのかもしれません。
感想
てんちゃんの実在モデルの商才
古米を団子にするレシピ提案を行ったり、外米はライスカレーにすれば美味しく食べることができることを伝えたり。
今回描かれたてんちゃんの活躍場面、ど素人がこんなにうまいこと米を売れるわけがないと考える方が少なくないかもしれません。
今回の古米・外米エピソードはおそらく創作です。
しかし、てんちゃんが斬新な手法を次々と生み出し人々をあっと言わせるところは、吉本せいさんの史実に着想を得ているものと思われます。
史実では、吉本せいさんが小さな寄席を買収して寄席経営を始めたばかりの頃。
寄席の興行収入だけでは商売が成り立たないため、寄席に来た客たちにお菓子やラムネを売ることを思いついたとか。
寄席でお菓子やラムネを売ることを思いついたのが吉本せいさんかどうかは定かではありません。
しかし、ラムネがよりたくさん売れるようにとお菓子はのどが乾くようなしょっぱいものばかりを揃える。
さらに、寄席の客だけでなく寄席の前を通った人にもラムネを売ることを思いつく。
しかも、真夏の日にはラムネの瓶を氷で冷やすという当時としては斬新な売り方を試み、並びの店が常温のラムネを売る中で吉本せいさんの冷えたラムネは売れに売れたとか。
寄席そのものも少し前に流行った「おもてなし」の工夫を重ねたそうです。
寄席は靴を脱いで中に入ります。その預かった靴を客が帰るまでにピカピカに磨き上げて置いたりするなど、当時としてはあり得ないサービスを提供したのだとか。
これらの才覚を吉本せいさんがどこで身につけたのかはわかりませんが、普通の人よりも抜きん出た才能があったことは確かなようです。
おそらく『わろてんか』の中でも、寄席経営がはじまった頃には上に述べた吉本せいさんのエピソードが描かれるものと思いますが、今回はその時のフラグなのかもしれません。
始末の極意
啄子さんの始末の極意が実に深い。というわけでメモしておきます。
始末:無駄な出費をせず、使うべき時に思い切り使うこと。
才覚:勝機を見極め、誰もやらないことをやること。
算用:損して得取れ。
始末とケチは違う。これがほんまの始末の極意。
始末とケチが違うというセリフで思い出すのは『ごちそうさん』の和枝姉さんがヒロイン・め以子に放った痛烈な一言です。市場で捨てられかかった食材を工夫して料理しため以子に対して、
「あんさんのはただのドケチだす」
啄子さんの言うとおり、和枝姉さんもここぞという時には料理に手間とお金をかけていたような気がします。
生まれも育ちも東京のめ以子には、和枝姉さんが語る始末の極意を理解するまでに随分と時間がかかっていましたが・・・
ところで話が前後してしまいますが、始末の極意をてんちゃんに教えてしまったと悔しがる啄子さん。そもそも、店頭で米を売る場面で商売の極意を教えてしまってますよ(笑)
楓ちゃん
古米・外米を売りさばく競争に敗れた楓ちゃん。焦りを感じたのでしょうか。
「惚れた腫れたのオナゴは船場には向かない」
これまで、いつも余裕の表情を浮かべていた楓ちゃんの悲痛な叫びが痛々しい。
この勝負で、仮にヒロインが負けていたら藤吉くんやトキちゃんがフォローしてくれていたのでしょう。
しかしここまで激しく敗れてもフォローしてくれる人が誰もいない楓ちゃんがちょっとばかり気の毒でした。
コメント
てんちゃんが楓ちゃんとの‘競争’に勝ったこの回を見ながら…痛快ではあったものの、率直に申し上げて何故か唐突感が拭い切れませんでした。
せめて京都編のうちに少しだけでもてんちゃんの何か‘萌芽’を感じさせてくれるようなエピソードが挿入されていればもう少し滑らかな展開になったように感じます。京都時代のてんちゃんは天然の、ホンワカしたお嬢様…という印象が強かったので。
「楓ちゃんがちょっとばかり気の毒」…私も朝蔵さんと同じ気持ちを抱きましたが、本日(10/30=第25話)の放送分を見ながら…楓ちゃん、早々と北村屋を後にしてむしろ良かったのでは?と思っちゃいました…(^m^;)
‘萌芽’・・・確かにそうですね。『あさが来た』でチビあさちゃんがパチパチはんに夢中になったみたいに(笑)
こんばんは。
いやぁ、啄子さん、器の大きいお人ですね。それにフェアです。
もちろん、油断もあったのでしょうが、てんちゃんを追い出したければ、勝負の序盤に何も教えないことを選べたはず。
でも、これで後々の良い人材を得ることができるのですからね。後で、良かったと思うことでしょう。
実力を曇りない目で見極めることができるのは本当にさすがです。
今まで何となくテンちゃんに肩入れ出来ずドラマを楽しめていなかった私ですが、今回の米屋さんの出来事は「テンちゃん頑張れ〜。」と応援出来ました(◦ˉ ˘ ˉ◦)京都の話より大阪編のほうが好きだな~。ここにリリコちゃんがどう関わって来るのか楽しみです。
大阪編に、さらに芸人さんたちが加わったら賑やかになりそうですね。
啄子「これがホンマの『始末の極意』」 同じ題の落語が関西にありますね。関東では「しわいや」という題で演じられてますが。落語の方は啄子さんや「ごちそうさん」の和枝姉さんの言う「ただのドケチ」です。更に落語の方は相手にかなり命懸けの事をやらせて「始末の極意」(というより『ドケチの極意』?)を伝授(?)してます。ご興味ありましたら三代目・桂米朝師や三代目・桂文我師の「始末の極意」のCD が市販されてますので一度お聴きになるのもご一興でしょう。インターネットで聴けるかな?
『始末の極意』そのまま落語のタイトルなんですね。啄子さんのセリフが実はネタだったとは・・・
啄子さんを大好きな京香さんが演じているので毎回楽しみにしています。凛とした綺麗な姑さんが京香さんにぴったり!いけずな啄子さん毎回楽しみにしてます!
啄子さんの凛としたたたずまいと微妙な滑稽さのバランスが絶妙ですね。
啄子さんがおてんちゃんの才覚に感心して、早々と彼女のことを認めてくれそうですね。一方で藤吉さんが自信喪失に陥りそうで、そちらの方が心配になってきました。
啄子さんは意外なほどすんなりとてんちゃんの才覚を認めましたね。和枝姉さんなら、これくら「普通」の一言で鼻にもかけていなかったかもです(笑)