稀代の天才落語家・団吾 / わろてんか 第55話

2017年12月4日(月)第10週「笑いの神様」

あらすじ

大正5年(1916年)。新たに買収した二軒目の寄席の経営も順調な中、事業をさらに大きくしようと意気込む藤吉は、さらに売り上げを増やすために何が出来るのかを日夜考え続けていました。

そんな中、寺ギンの使いで風鳥亭に風太が集金にやってきました。その風太から、天才落語家として知られる月の井団吾がどれほど人気を博しているのかを聞かされた藤吉は、あることを思いつきます。

月の井団吾を口説いて風鳥亭の専属にしてみてはどうだろうか。団吾の名があれば、これ以上は望めないほどの風鳥亭の客寄せの看板となるはずだ。藤吉はそう考えるものの、団吾と専属契約を結ぶためには莫大な額の手付金が必要でした。

一方、藤吉の思いつきは亀井や芸人たちの耳にも入りました。団吾にだけ多額の給金が払われることを知った芸人たちに不満がくすぶり始める中、高座を見てますます団吾に夢中になった藤吉は、ついに団吾と専属契約を結ぶことを心に決めるのでした。

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予習レビュー

今回、その名がはじめて登場する天才落語家・月の井団吾の実在モデルは実際に上方落語を代表する天才落語家と言われた桂春団治と思われます。

今回のドラマの中で、月の井団吾を風鳥亭の専属落語家にしたい藤吉くんが、てんちゃんに手付金の資金調達を頼み込む場面が描かれます。

ドラマの中でどれくらいの金額を準備することを藤吉くんが求められることになるのはよくわかりませんが、史実ではとんでもない金額でした。

史実の中で、専属落語家になってもらう条件として桂春団治に対して提示した額は、月給が700円。それに加えて前貸金が20,000円。

当時のサラリーマンの平均給与が40円と言われていますので、当時の金額を単純に一万倍にした金額を現在の貨幣価値と換算するとその額のすごさがわかります。

一万倍するとサラリーマンの平均給与が40万円なのに対して、桂春団治に提示された月給は700万円。前渡金は2億円です。

ちなみにドラマの中では藤吉くんが二軒目の寄席を買収した直後のタイミングですが、史実の中では、天才落語家氏を引き抜いた頃はすでに四軒の寄席を手中に納めていました。

実際は風鳥亭をはるかに上回る急成長を遂げたようです。

話をドラマに戻します。

月の井団吾を演じるのは波岡一喜さん。『ちりとてちん』でも人気落語家・尊健を演じ小草若と対立。『ごちそうさん』では涙もろいチンピラ・香月を演じました。

戦災孤児として保護された男の子が復員した兄と再会する場面。その再会を見て、いきなり声をあげて泣き出す波岡一喜さん演じる香月くんのチャーミングさが忘れられません。

史実の天才落語家は破天荒な生き様が伝えられていますが、ドラマの中の天才落語家はどんな姿を披露してくれるのか。

楽しみなキャラが増えました。

感想

今週のフラグ

毎週、月曜日の回にはその一週間のフラグがところどころに仕込まれている本作『わろてんか』。今回もまた、フラグがいくつか見つかりました。

風鳥亭にやってきた風太くんが、最近は芸人の顔を見ただけで売れるかどうかわかるようになってきたと目利き自慢。

この風太くんの自慢は、彼がこれから芸の世界でいっぱしの人物になってゆくことのフラグに違いありません。

しかも、同じく芸人の目利きを自認する藤吉くんの目を開かせるほどの目利きぶり。後半ではかなりの大物として登場するのではないでしょうか。

登場した頃には、男前ながらもちょっと残念な役回りでしたが、年明けの放送ではビッグになった男前の風太くんの姿を堪能できるかもしれません。

そして、てんちゃんと藤吉くんの夫婦関係。前週、深い亀裂が生じた二人の関係ですが、かろうじて関係は修復されました。

しかし、風鳥亭をもっと大きくしたいと目の色を変える藤吉くんに対して、てんちゃんは半分呆れて半分はヒヤヒヤ。

そんな中で、藤吉くんが再び地雷を踏みました。踏んだ地雷もフラグの一つかと思います。

ところで前週の夫婦の危機では、芸人さんたちが二人を仲直りしようと心を砕いていましたが、今週は藤吉くんと芸人さんたちとの関係も危険です。

天才落語家には金を使い自分たちにはケチると不満を言い始めた芸人さんたち。これもまた今週の波乱のフラグかと思います。

そして最大のフラグは今回の最後に出てきた借金取りに追われる男の姿。人力車が爆走する姿が今週の展開を物語っているかのようでした。

時代背景について

欧州大戦の好景気の中で大阪は東洋のマンチェスターと呼ばれるようになるほど工場が急増。工場が増えたことで人口が東京を超えたと、今回の冒頭で解説がありました。

史実ではこの時代の流れが吉本興業の追い風となったようです。以下、ドラマの中の名称を使いながら時代背景をまとめてみます。

大阪に紡績工場が次々と出来たことで、その工場に仕事を求めて地方から人々が集まり人口が急増。それによって「風鳥亭」に集まる客の顔ぶれが変わってきます。

今回、亀井さんが言ったのはこのことです。

ところで昔から上方落語に馴染みのある大阪人と違って、地方から集まってきた工場の労働者たちには「文鳥師匠」ひきいる「伝統派」の上方落語はやや難解でした。

一方で、笑いならなんでもありの「寺ギン」ひきいる「オチャラケ派」の芸は、工場の労働者たちにもわかりやすいものが多いため人気が急上昇。

「伝統派」ではなく「オチャラケ派」と組んでいた「風鳥亭」は、このことが追い風となって業績は右肩上がり。

そんな中「伝統派」は内部で派閥争いを繰り返し衰退。いよいよ「オチャラケ派」の勢いが増す中で「寺ギン」が死去。

「寺ギン」亡き後、「オチャラケ派」を傘下に収めた「風鳥亭」は、ますます衰退する「伝統派」をも傘下に納めてついに大阪一の寄席になる・・・

というのが、今回の時代背景と、その先で起こったことです。

ところで今回、風鳥亭にやって来て油を売る風太くんがさりげなく言いました。ポスト寺ギンは自分だ!みたいなことを。

このポスト寺ギン発言。史実同様に寺ギンのオッチャンが亡くなってしまうことのフラグなのでしょうか。

追記:ドラマの中で、大阪の人口が東京を超え、大阪はついに日本一の都市になったと藤吉くんが言ってましたが、今回の時代背景は大正5年(1916年)秋。

しかしWikipediaによれば、大阪市が東京府東京市の人口を超えたのは大正14年(1925年)。

大正12年に発生した関東大震災によって、壊滅的な打撃を受けた東京から大阪への移住者によって人口が増えたとの由。

『ごちそうさん』の中でも、Wikipediaと同様の説明があったと記憶しています。

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コメント

  1. あみ より:

    波岡一喜さんなんですね!それは本当に楽しみです。ドラマ『火花』でそれこそ破天荒な芸人を見事に演じ、毎回画面に釘付けにされました。忘れられないドラマです。今回もきっとはまると思います。教えてくださりありがとうございます。
    次のお話をまだ見てないのでこちらへのコメントで失礼しますm(._.)m

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      12月5日、波岡一喜さんが初めて出てきましたが、とっても素敵な初登場場面でしたよ。

  2. こひた より:

    せいさん夫婦は子宝に恵まれたと聞きますが、てんちゃん夫婦はどうなんでしょうかねぇ。
    今でもこれだけ大変なんだから、きっと一人っ子?

    たくさんの子供達に囲まれて幸せな笑顔のてんちゃんも見てみたいけどなあ。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      NHKのサイトでは成長した隼也くんを「てんと藤吉の一人息子」と解説していますので、少なくとも男の子は一人みたいですね。

  3. ひるたま より:

    本日初登場の噺家「月の井団吾」師匠…画面に見えたのは口元まででしたが。(^^;)
    既にこちらでも触れられている通り、団吾のモデルは初代桂春団治…彼はいわゆる「破滅型の天才芸人」として有名だったとの事。
    当然初代春団治を全く存じ上げない私がすぐに思い浮かんだ「破滅型の天才芸人」は…故・横山やすしさんです。
    1944年生まれのやすしさんが仮に存命だったならば現在73歳…現役で活動を続けていた可能性も十分にあったかも分かりませんね。おそらく今のお若い方達(30代以下)は全盛期の「漫才師:横山やすし」を知らないかと思われますが。

    明日以降展開されると思しき月の井団吾師匠のエピソードが気になりますね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      横山やすし、懐かしい!何歳で亡くなったんだろうと調べてみたところなんと51歳。こんなに若かったとは驚きです。

  4. よるは去った より:

    藤吉郎「欧州大戦の好景気・・・・・・。」亀井「道理でお客さんの顔ぶれ変わったと思いましたわ・・・・・・。」江戸時代にも歴史に残る大火で大工さんへの需要が一気に増えて、その影響で寄席の客層もお職人さんがメインになったという現象があったそうですが、あの時代もあんなことがあったんですなあ。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      数年後の関東大震災で大阪の人口が急増したという話は『ごちそうさん』で紹介されてましたね。