志乃の深い親心知る伊能 / わろてんか 第85話

2018年1月13日(土)第15週「泣いたらあかん」

あらすじ

記憶を取り戻した志乃が東京に帰ると言い出しました。母と息子の関係にあるにもかかわらず深い心の溝がある志乃と伊能を和解させたい。そう心から願うてんと藤吉は、志乃と伊能を向き合わせるために志乃のお別れ会を開きました。

伊能もお別れ会にやって来たものの、伊能は志乃への頑なな態度を改めようとはしませんでした。ところが、伊能と志乃の複雑な気持ちをまだ理解できない隼也が、伊能の「栞」という名前の由来を志乃に尋ねます。

志乃が語る「栞」に込めた願いを聞かされた伊能は、志乃に告げました。活動写真が大好きだった志乃の姿を見て、活動写真を自分で作りたいと思った。今の自分があるのは志乃のおかげであるのだと。伊能と和解できた志乃は東京に帰ってゆきました。

その数日後、風太が大阪に戻って来ました。てんや藤吉、芸人たち、そして誰よりもトキは風太の無事の帰還を心から喜びました。程なくして東京の落語家たちが風鳥亭の高座にのぼり、北村笑店は東京進出への足場を固めるのでした。

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予習レビュー

いつもはクールな伊能さまは今回ばかりは視聴者を泣かせることになるかもしれません。

親と子の積年の確執が解決するエピソードは朝ドラ定番のネタです。(前作『ひよっこ』にはありませんでしたが)

だから「またか」と思う方もおられるかも知れません。

しかし、自分ごとになってしまい恐縮ですが、積年の確執が未解決なまま親を亡くしてしまったブログ主としては、親子の和解は叶わなぬ夢。

それもあって、このネタが繰り返し描かれようとも決して飽きることなどありません。

しかし朝ドラの中で描かれる親子の確執で最も多いのは父と息子の心の溝です。

『ちりとてちん』『ごちそうさん』『マッサン』などなど、息子の母親への深い愛情があるからこその父との確執。これが最多パターンです。

ところが今週の『わろてんか』で描かれるのは、組み合わせとしては極めてめずらしい母親と息子の確執です。

しかも、心の溝だけでなく母と子の関係もかなりややこしい。

変化球の親と子の確執と和解の物語。今回は涙腺決壊の備えが必要かも知れませんね。

追伸:『わろてんか』前編ではちょっとばかり残念な役どころだったキースが、今回は実にいい仕事してます。

渡米を果たし、さらに東京で鍛え上げられたキース。この頃には前編のときよりも大きな男になっているのでしょうか。

感想

「返済には二十年かかります」

もう『わろてんか』観るのやめます。

そんなコメントを当ブログに残して『わろてんか』の物語から脱落してしまった方が何人もいますが、その方々もったいないことをしましたね。

そう思わずにはいられない素晴らしい回でした。

親子の確執と和解。これまでの朝ドラで繰り返しとりあげられたテーマです。ブログ主も『ごちそうさん』以来、何度も観てきました。このテーマを。

しかし親子が和解する前後の言葉と行動の数々は、僕が知る限りの和解ドラマの中でも出色の出来ばえだったと思います。

伊能さまと志乃さんは和解はしたけれど、長年にわたる確執のためにそう簡単にはお互いに笑顔を見せることができない。恥ずかしいのでしょう。

だから伊能さまは笑顔ひとつ見せず、ぶっきらぼうに小切手を志乃さんに差し出し、志乃さんもまた一歩間違えたらケンカになりかねない強い口調で小切手を拒む。

その志乃さんに対して「もらうのではなく借りてください」。これと同じ言葉、同じ状況はたしか『あさが来た』にもあったはず。

しかし伊能さまが続けて言いました。

「返済には二十年かかります」

この言葉がたまりません。本当に素晴らしい。よくこんな素敵な言葉を見つけてきてくれたものだと思います。脚本家に感謝です。

余談ですが、この言葉を受けたキーちゃんの「長生きしてくれということ」という解説はなかったほうが良かったかな。そんな気がします。

伊能さまのこの一言だけで伊能さまの母親に対する気持ちは十分に伝わってきました。

一方、本当の息子にはかなわないとこぼす寂しげなキーちゃんに対して、志乃さんが別れ際に言った「キーちゃんもずっと私の息子だよ」。

この言葉も優しくて良かった。

「このご恩は一生忘れません」という言葉を残して去って行った志乃さん。もう一回、ドラマの中で登場させてほしいものです。

伊能さまはもちろん、キーちゃんと再会させてあげてほしいものです。

第15週「泣いたらあかん」の最後の回。伊能さまが夢見てきた「人の心を豊かにする活動写真」のような回でした。

繰り返しになりくどいようですが、物語から脱落した方々、本当にもったいないことをしたと思います。

志乃さんの矛盾した二つの行動

今週のドラマの中で描かれた志乃さんの矛盾した二つの行動と、その理由について考えて見ました。

矛盾した二つの行動。

それは、東京で大地震が発生した直後に命がけで最愛の息子のへその緒を収めた箱を、倒壊しかけた家の中に取りに行ったこと。

その一方で、大阪ではその箱を燃やそうとしたことです。

志乃さんはへその緒を収めた箱を火の中に投じ、それが燃えずに済んだのはキーちゃんが機転を利かして火の中から拾い上げたからでした。

さて、志乃さんは何故こんな矛盾した行動をとったのでしょうか。以下、僕の推理です。推理というか憶測です。

志乃さんが最愛の一人息子=伊能さまと別れた直後、志乃さんにとってたった一つの心の支えはへその緒を収めた箱だったかと思います。

志乃さんにとっては息子の遺品。形見みたいな価値を持っていたはずです。

そして、へその緒を収めた箱を心の支えにしながら、息子との架空の思い出を作ってその脳内だけの思い出の中で生きてきたのが大地震までの志乃さんでした。

キーちゃんが志乃さんから聞かされていた「息子は海外で成功している」という話も、志乃さんが創作した脳内だけの思い出のような気がします。

脳内でつくりあげた思い出の中に生きていた志乃さん。その間も、ある意味で記憶喪失みたいなものだったのかもしれません。

脳内の思い出によって、志乃さんはつらすぎる息子との別れの記憶を消し去っていたわけですから。

ところが、大阪にやってきた志乃さんの目の前にその息子が現れた。

震災のショックで一時期失った記憶だけでなく、脳内の架空の思い出によって忘れることができていたつらい過去の記憶までもよみがえってしまった。

そしてその瞬間、楽しい脳内思い出のシンボルだったへその緒を収めた箱は、つらく苦しい思い出のシンボルになってしまった。

だから、命がけで取りに戻ったにもかかわらず、つらく苦しい思い出のシンボルになってしまったへその緒を収めた箱を焼き払い、再びつらい過去をなかったことにしようとした。

・・・以上、志乃さんの矛盾した行動のその奥にある志乃さんの気持ちへの憶測でした。

第15週「泣いたらあかん」感想

関東大震災のショックからはじまった今週は、その後の伊能さまのまさかの過去によってそれまでのショックを忘れてしまうほどの展開となりました。

伊能さまと志乃さんは実の親子に違いない。そんなことを薄々感じさせつつ、志乃さんの息子への愛情。一方の伊能さまの母親への愛憎に引き裂かれた複雑な気持ち。

母と子の気持ちをあらわす描写を積み重ねながら、実の親子だと判明する場面までの話の運び方。そして最後にすべて回収されるまでのストーリーテリング。

本当にみごとでした。

そして、それにからめてキーちゃんの心の動きの描写。アサリの葛藤。そんな二人のコンビ再結成の瞬間は、僕にとっては思い出に残る名場面となりました。

年末年始のつなぎ・箸休めの二週を経ての、年明けの本格的な物語の再開週。見応えたっぷりの一週間でした。

というわけで今週も当ブログにお付き合いいただきありがとうございました。今週は寒暖の激しい一週間となりましたが、お身体に気をつけて良い週末をお過ごしください。

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コメント

  1. ひるたま より:

    番組公式サイト経由で、葵わかなさんによる「週末のヒロイン」(NHK大阪放送局による番組ブログ)が毎週掲載されています。今週分の中で、花束をお持ちでいらっしゃる「志乃さん」=銀粉蝶さんのお写真が確認出来ました。…という事は、残念ながら(?)撮影終了された可能性大でしょうか。
    俳優さん側の都合(お仕事のスケジュール等)を考慮すると、このような方式での物語展開の方がやり易いのかもしれませんが…視聴者側にとっては寂し過ぎる部分も多いのが本音ですね。

    なお個人的には「団真&お夕」夫妻=北村有起哉さんと中村ゆりさんの再登場も切に願っているのですが(こちらは花束を受け取った写真が未だ確認出来ない事もあり、まだ希望を繋いでいます…)、現実問題として北村さんは大河ドラマ『西郷どん』に、そして中村さんはBSプレミアムドラマ『平成細雪』にそれぞれキャスティングされていらっしゃる事もあって、両立は難しいのでしょうか…?

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      銀粉蝶さん、おしまいですか!残念です。心に残る名演でした。チャキチャキの江戸っ子言葉も、江戸っ子の祖父を持つ僕には心地よいものでした。

  2. ひろみn より:

    キースのセリフ
    「おかあちゃん長生きせんといかんな」と笑って言えたらよかったのにね。
    「長生きしろと言う事や」よりは良かったかも?
    私はこの回は最初から涙涙
    娘に「お母さん泣くの早過ぎ!」と言われました(笑

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      「おかあちゃん長生きせんといかんな」

      このセリフだと、キーちゃんが親子の和解を祝福しているようでとってもいいですね!

  3. こひた より:

    ハァー久々に濃厚な1週間でしたね。なんか心地いい疲労感に襲われました。
    ようやくひとつのドラマが完結して気を抜いた途端、次週予告でまたまた大事件ですやん。
    こりゃまたえらいこっちゃやでェー

    朝蔵さんのおっしゃる通りリタイアした方々に是非もう一度見てもらいたいですね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      前年の団吾・団真の物語あたりから目を離せませんね。これから怒涛の展開つづきで結末まで突っ走ることになるのでしょうか。毎週「心地いい疲労感」の週末を迎えられるかもですね。

  4. ポール より:

    伊能さんが「お母さん」と志乃さんを呼ばなかったなぁ、と朝からちょっとモヤモヤが残っていたのですが、ブログ主さまのおっしゃる通り、長年の確執のため簡単に笑えあえないというのがリアルなんでしょうね。

    関西育ちの私は、銀粉蝶さんの江戸っ子ことばがドラマの良いアクセントになっていたので、もう少し聞いていたいと思うところです。再登場を期待します。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      伊能さまが「お母さん」と呼んで完全な和解を果たす。そんな場面で銀粉蝶さんにもう一回登場してもらいたいものですね。

  5. あみ より:

    親子の確執、『ひよっこ』にも由香ちゃんの件があったと思います。
    さて、私も親子の確執があまり好きではない一人ですが、今回のエピソードは例外的に本当によかったです。最近続いていた、単に親が忙しすぎて子どもは愛情が足りないと感じ拗ねる、という安直なものではなかったので心から泣けました。また、志乃さんのへその緒にまつわる行動についての朝蔵さんの見解が素晴らしくてまた泣けてきました。有難うございます。
    しかし少し前にこちらのブログで、てんちゃんと隼也君でまた揉める、しかもかなりこじれるとの情報をキャッチしていたことを思い出し、正直うんざりしています(笑) しかも組み合わせも同じ母と息子。栞さんと志乃さんのストーリーを超えられるようなものではないと思われるのですが、どうなるのでしょうか。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      てんちゃんと隼也くんの親子問題は避けて通れなさそうですが、今週みたいにあっと驚くような描き方をしてほしいものですね。

  6. よるは去った より:

    キース「俺たち『マンザイ』やるんや!」この頃はまだ「万歳」だったんですね。キース・アサリのコンビもそのスタイルでやっているようですが。横山エンタツ、花菱アチャコ両師が洋服姿で「しゃべくり漫才」を始めるのは昭和に入ってからのようですからね。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      次週は大阪演芸会のトレンドの変化が物語のヨコ糸として描かれるようです。『マンザイ』の台頭など、演芸氏を学べる機会になるかもですね。

  7. 1013 より:

    この内容でタイトルが「泣いたらあかん」(笑)
    はい、無理でした、乾燥してた鼻も潤いました(笑)
    キースいい男になってきましたね。
    ところでうちの兄、幼い頃親にキーちゃんと呼ばれていたのですが、キースの本名ってまさか「きよし」だったりして(笑)

  8. たいとうみほ より:

    へその緒、というのは赤ちゃんとお母さんが
    互いの体とつないで一体だった
    文字通り「絆」なのでしょう。
    父親との間にも赤の他人にもない
    生みの母のみが与えられるもの、今の言葉ならDNAの共有です。
    志乃さんは泣く泣く栞氏を実父に渡しても
    産んだのは自分だ
    せめてこの最後の、繋がりの証だけは確かだと思ったのかと。
    しかし、大阪に来て思い知った。
    栞氏は既に他の世界の人になってしまった。
    社長室で記者に出くわし「おかあさんですか」とも言われ
    新聞にも実母についての憶測記事を書かれ
    こんな生母がいたら間違いなく息子の足を引っ張ってしまう。
    その絶望と、今度こそ他人になろうとの決意から
    繋がりの物証、同じ身体で共有したへその緒を
    この世から消し去ろうとした…
    と、私は考えていました。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      男性には逆立ちしても理解できない母性にとっての「へその緒」の価値。その視点からの深い洞察を深く頷きながら拝読させていただきました。

  9. 天満康博 より:

    おはようございます。泣けました。予想してたとはいえ、険しい表情をしてた志乃さんが徐々に悲しげなそれになり、最後には号泣、伊能さんも涙目になってました。引き込まれてしまいました!来週は藤吉さんが病に倒れる等益々目が離せませんね!これからも宜しくお願いしますm(__)m

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      素晴らしい回でしたね。和解そのものも良かったですが、そこに使われた言葉の数々。僕の心の宝物となりました。