渡米の決意かためる伊能 / わろてんか 第140話

2018年3月19日(月)第25週「さらば北村笑店」

あらすじ

伊能が北村笑店を辞める決意を固めました。てんの発案による映画脚本が検閲保留となった事態を受け、伊能は自分がいる限り北村笑店は映画の制作ができなくなってしまうと考えたのです。

夜の北村笑店。伊能が辞表を出して北村笑店を立ち去ろうとしたその時、てんの机の上に置かれた辞表を風太が見つけました。風太は頭を下げて伊能の旅立ちを止めるものの、アメリカに渡ると決めた伊能の決意をくつがえすことはできませんでした。

北村笑店を立ち去ろうとする伊能。それを止めようと必死に懇願する風太。二人のやりとりの現場に、異変を察したてんがやって来ました。てんも伊能が北村笑店を辞めることを許しませんでした。

それでも決意を曲げない伊能に対して、てんは言いました。伊能がアメリカに渡って映画づくりを学ぶことは、将来の日本にとっても北村笑店にとっても有益なはずだと。そしててんは、伊能を北村笑店の社員としてアメリカに派遣すると宣言するのでした。

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予習レビュー

『わろてんか』は残り二週。「さらば北村笑店」などという、悲壮感たっぷりのサブタイトルを持った最終週の直前週がはじまりました。

悲壮感に満ち満ちたサブタイトルがあらわす通り、ドラマの展開も月曜日の放送回から波乱の展開の予感でいっぱいです。

これまでの『わろてんか』の典型的なストーリー展開は、月曜日はおだやかなエピソードの積み重ねの中に、その後のフラグが散りばめられる。

それが火曜日から少しづつ回収され、木曜日あたりから怒涛の展開に発展する。

そんな、これまで繰り返されてきたパターンとはまったく異なるスタートを切ることになりました。

週の冒頭から伊能さまによるまさかの辞表騒動。

もはやこれはフラグというレベルではありません。フラグ一切なしの、怒涛の展開からのスタート。

いきなりアクセルを踏み切るような加速の仕方をして、週の後半以降はいったいどんなことになってしまうのか。

とりわけ前作の『ひよっこ』が、ヒロインがお父ちゃんと再会して以降、まったりゆったりと展開し、最後の最後まで怒涛の展開とは無縁でした。

だから久しぶりのクライマックス直前の怒涛の展開が新鮮です。

というわけで、そろそろカウントダウンが始まる『わろてんか』。最後まで一回一回を大切に観てゆきたいと思います。

感想

てんちゃん、風太くん、そして伊能さま。

この三者がお互いをどれほど深く尊敬しそして大事に思い合っているのかが、伊能さまの辞表がきっかけになってあぶり出された見応えのある回でした。

月曜日からあまりにも濃厚すぎました。

風太くんの伊能さまへの思い

風太くんと伊能さまの関係が本格的にはじまったのは藤吉くんが亡くなった直後の頃からのことだったでしょうか。

藤吉くんが亡くなった直後、藤吉くんの遺した言葉によって、伊能さまはてんちゃんを支えるために北村笑店の役員に就任しました。

しかし、いつも理想を追い求めるスマートな仕事ぶりが特徴の伊能さまと、いざとなったら公衆の面前であっても取引先に土下座することも辞さない泥臭い仕事ぶりの風太くん。

仕事のタイプも違えば、人物のタイプもまったく違う。

よりによってウマが合わない二人が同じ会社の役員になってしまった頃、二人の男の姿は見ていて痛々しいほどでした。

特に風太くんは気の毒でした。

しかし風太くんは、時代の最先端を追い求めてばかりの伊能さまに反発しながらも、そんなな伊能さまの先見の明を高く評価していたことがわかった時は驚かされました。

風太くんが伊能さまの先見の明を高く評価していることがわかったきっかけ。

それは、下働きばかりさせることに対してついに反発しはじめた隼也くんから、時代遅れみたいなことを言われた風太くんが、伊能さまに隼也くんを託したときのことです。

風太くんは、自分にはない伊能さまの才能を実はとても信頼していることが、この時の場面で明らかになりました。

信頼していなければ大事な隼也くんを安易に預けたりなどはしませんからね。

ところで、隼也くんを伊能さまに託す直前のこと。

隼也くんを伊能さまに託して大丈夫なのかを確かめるかのように、風太くんは伊能さまと飲みに誘いました。

あの時が風太くんの伊能さまへの評価が確定した瞬間だったのかもしれません。やっぱり伊能さまは信頼に足る人物だと。

そして実際にこの時以来、風太くんと伊能さまはどこかギクシャクしたところを残しながらも、それ以前に「ウマが合わない」状態とはほど遠い関係になりました。

さて、今回のドラマを見るまで、風太くんの伊能さまに対する評価の移り変りは上に述べたように認識していました。

しかし、風太くんは実はかなり早い段階から伊能さまを買っていたみたいです。

その昔、てんちゃんと伊能さまの縁談が出たとき、自分はそのことを喜んだと風太くんは言いました。

風太くん、実はその頃から伊能さまの人物を高く評価していたんです。

風太くんのてんちゃんへの思い

北村笑店を去ってゆこうとする伊能さまに、風太くんが食い下がりました。

「この通りです。てんを支えてください。藤吉もおらん、隼也もおらん。伊能さんまでアメリカに行ってしもうたら・・・」

風太くんのこの言葉に泣かされました。

藤吉くんが亡くなり、隼也くんも家を出て行ってしまい、大事な人が次々にいなくなってしまうてんちゃんの寂しさが、風太くんに耐えきれなかったのでしょう。

風太くんがてんちゃんのことを真剣に支えていることは深く承知していたつもりでした。しかし、その気持ちがここまで本気だったとは。

てんちゃんが大事な人をこれ以上失わないようにと伊能さまに食い下がる風太くんを見て次のように思いました。風太くんに言ってあげたくなりました。

てんちゃんにはまだ大事な人が一人残っているよ。それは風太くんだよって。

伊能さまのてんちゃんへの思い

北村笑店を辞めることを認めようとしないてんちゃんに対して、伊能さまが言いました。

「それは違う。助けられてきたのはいつだって僕の方だった」

この言葉を最初に聞かされた瞬間、伊能さまの言葉の意味が理解できませんでした。

もしかして、てんちゃんに対する社交辞令?とさえ思ったほどです。

しかし、その直後のてんちゃんの下した決断によって、伊能さまのこの言葉に嘘いつわりはないと心から信じることができました。

てんちゃんの下した決断とは、伊能さまのアメリカ行きを、北村笑店の業務命令扱いにしてしまったことです。

「伊能さまの夢、うちらも一緒に見させてもらいます。北村笑店は伊能さんにアメリカ行きをお願いします」

伊能さまの夢に反対するのは誰にでもできます。しかし、伊能さまの夢まで自分の中に取り込んでしまうとは。

てんちゃんのこの決断によって、伊能さまは自らの夢を追うことができ、てんちゃんもこれ以上大事な人を失わずに済む。

そして、この提案を断る理由が伊能さまにはまったくない。

この時のてんちゃん。半年間にわたって見続けてきたてんちゃんの姿の中で、最も輝いて見えました。

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コメント

  1. Kay より:

    アメリカと戦争中にアメリカに渡れるはずはないのですが。。。どうなっているのでしょう

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      伊能さまがアメリカに渡ったのは、アメリカとの戦争が始まる前ですよ。しかし日米関係は悪化していたので渡米は難しかったかとも思います。

  2. こひた より:

    「別れの時が近づいてきました」最後のナレーションです。

    それってもう会うことはないという意味にも捉えることができるんですが・・・
    凱旋帰国を切に願いたいです。

    余すところ2週間。
    しっかり見届けたいと思います。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      ドラマがわずか数回しか残されていないのに別れが続きますね。放送期間がたくさん残されているタイミングなら別れの場面も安心して見ていられるのですが・・・

  3. 通りすがりの猫 より:

    戦争前夜のあの時代、アメリカの映画事情に通じていた日本人の間で、日本はアメリカと戦争しても勝てないと溜息をつかせたのはディズニー製作のアニメ大作「ファンタジア」だったそうです。カラーの空想動画とオーケストラ音楽がシンクロする世界をきっと伊能さまも堪能されたことでしょう。また、先にコメントされた方もおっしゃるように「風と共に去りぬ」のスカーレットに我らが“女太閤”おてんちゃんを重ねることになったのではないでしょうか。今日のいちばん素敵なシーンは、風太くんが「支度金や、小切手切ってや」とおときちゃんに言うところなのですが、風太くんの横でじっと見守るおときちゃんが全て合点承知とばかりに頷くところはヨカッタ!ほんと、この夫婦はこうもそろって、どこまでおてんちゃんが好きなんだー

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      1940年代前半のハリウッド映画には大作がたくさんありますが、戦争しながらあんな華やかな映画を作り続けていた国と戦うなんて、本当に無謀な戦いだったんですね。

  4. たいとうみほ より:

    「わろてんか」に直接の関係はないのですが
    リアルのこの時代とお笑い界の関係が意外な所から
    飛び込んできてぞっとしました。
    Eテレ「100分で名著」という番組で
    ”柳家小さん師匠が二二六事件の決起部隊の一員だった”とか
    (現在のドラマの3年前!)
    ”事件当日に部隊員の前で一席やってた”とか…
    当時の小さん師匠が吉本とかかわりがあるかは不明ですが
    こういう血なまぐさい事件にもあのドラマの世界が
    バッティングしかねない、本当に実際の史実は怖いんだと
    背筋が寒くなりました。
    その小さん師匠のエピソードをまかり間違えば
    東京にいたキースあたりがやってた可能性も、って事でしょうから。
    この番組は水曜日の朝5時半および午後0時に再放送があります。
    蛇足ながら伊能氏を演じる役者さんに関して報道された事が
    ファンの方の間で226事件と呼ばれているとか…

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      柳家小さん師匠の件、そこに関わっていたとは驚きです。『100分で名著』録画して観てみます。

  5. 夕顔 より:

    殆ど三人芝居にも見えましたが、中味の濃い~15分間でした。

    少し前まで私は栞さんのことを、「すでに人格の出来上がっちゃってる人」だと思っていた。
    だけど、本当は弱みを誰にも見せられなかっただけで、心の中はどんなに孤独だったんだろうと思う。

    そんな栞さんにとって、てんちゃんの笑顔が今までどれだけ彼の支えになっていたのか、、、
    てんちゃんへの溢れる思いを聞いたとき、改めて理解できました。

    主観的にはどう見えようと、結局はみんな助け合って生きているんですね。

    私もまた、今まで私を助けてくれた人達のことに思いを馳せてみた(*μ_μ)♪

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      伊能さまが時代に追い詰められたのは気の毒でした、そのことによって背負っていたものを降ろせたのかもしれませんね。

  6. たいとうみほ より:

    今日のおてん様のセリフでしびれたのが
    伊能氏に渡米を命じる場面で風太に対して
    「風太」ではなく「専務」と読んだ場面です。
    顔馴染みのメンバーしかいない場で敢えて。
    これは業務命令だ、社長のいう事を聞いてくれ、
    そういう形にしなければ伊能氏が絶対に納得しないから
    すべてをビジネスに絡め、事業拡大の手段との形を取る。
    同情でも憐憫でもないぞ、とある意味
    伊能氏の逃げ場を塞いだような啖呵でしたね。
    いろんな記事を見て驚きましたが
    この頃にあの名作「風と共に去りぬ」が
    カラーで作られているようで…
    もしかしたらあちらで伊能氏が見て
    衝撃を受けるかも、と想像しました。

    • 朝蔵(あさぞう) より:

      なるほど、てんちゃんが風太くんのことを、いつものように風太とは呼ばずに専務と読んだことで、これは業務命令であることを伊能さまにはっきりと伝える。さすが、するどい洞察です!

      てんちゃん意を汲んだ風太くんが、即座に支度金の小切手を切らせるところ。あの息の相方も絶妙でした。