2018年5月24日(木)第8週「助けたい!」
あらすじ
秋風が新連載の企画を出版社にキャンセルしました。そのことを聞かされた菱本は、キャンセルの理由を秋風に問いただしました。最近になって不審な言動が目立つようになってきた秋風の体調を、菱本は案じていたのです。
一方、喫茶おもかげで、鈴愛は正人と遭遇。正人が鈴愛にかけたさりげない一言がきっかけとなり、鈴愛は正人に対して好意を抱きはじめました。そんな中、秋風が「旅に出る」というメモを残したまま、オフィス・ティンカーベルから姿を消してしまいました。
秋風が突然いなくなり、菱本が不安を募らせているそのころ、秋風は鈴愛の岐阜の実家・楡野家にいました。驚きながらも思いがけない来客をもてなす楡野家の人々の前で、秋風は涙を流していました。
同じ頃、アルバイト料を受け取りに、律がオフィス・ティンカーベルにやって来ました。秋風への不安を、菱本は律に語りました。秋風は5年前にガンを患っていました。その時は治療でガンは治ったものの、菱本はガンの再発を恐れていたのです。
予習レビュー
今回は、二つの大きなエピソードが動きはじめます。
一つ目は、秋風先生の異変です。
ドラマの中では、秋風先生が新連載を断るところから秋風先生の異変が描かれはじめるみたいですが、それ以前から菱本さんは秋風先生の異変を察知していたようです。
以下、ちょっとネタバレです。
秋風先生は数年前に大病を患っているのだそうです。裕子ちゃんとボクテがそれを知っているかは定かではありませんが、少なくとも菱本さんはよく知っています。
だから菱本さんは、その病気の再発を疑うものの、秋風先生は決して口を開かない。でも、何も語ろうとしないところが、よけいに怪しいですね。
そんな中、秋風先生がついに姿をくらまします。メモだけを残して。
姿を消した秋風先生は岐阜にいました。まさかの楡野家です。鈴愛ちゃんの実家です。秋風先生はそこで涙を流し、ダブルの「まさか」です。
ところで秋風先生が名古屋でトークショーを開催したときのこと。鈴愛ちゃんが秋風先生とはじめて対面したときのことです。
トークショーの舞台の上の秋風先生を見守りながら菱本さんがさりげなく言いました。
「秋風は生きているうちに自分の読者と直接会っておきたかった」
このときの意味ありげない菱本さんの言葉が、そろそろ回収されるかもしれません。
動きはじめるエピソードのもう一つは鈴愛ちゃんの恋です。相手は律くんではなく、正人くんです。
この恋バナ。あと数週間したら大いに泣かされることになるかもしれません。
感想
ドラマが大きく動きはじめる予感がいっぱいの回でした。秋風先生のドラマ。秋風先生と菱本さん、二人の関係のドラマ。そして何より、鈴愛ちゃんのドラマ。
心がざわつきます。
秋風先生のドラマ
ガンの再発を心配する菱本さんの追求に対して、いつもクールな秋風先生がめずらしく感情をあらわにして、菱本さんの推測を頭ごなしに否定する。
「再発、何を根拠に!?寝言は寝てから言ってくれ!」
秋風先生が、今の自分の身体の健康状態に対してどれほど不安を抱えているのか、これ以上は望めないほどにわかりやすいリアクションでした。
口では寝言とは言いながら、寝言どころではないんですね。寝言であってほしいと思っているのかもしれません。
いつになく焦りを見せる秋風先生の姿、泣く場面ではないはずなのに、あまりの痛々しさに涙腺をやられました。
実は自分も似たような経験をしたことがあるので、余計に心に迫ってくるのかも。
それはともかく、誰の目にもわかるくらい押しつぶされそうな不安をあらわにした秋風先生は、それでも菱本さんの前では、菱本さんが心酔する「秋風先生像」を演じきりました。
しかし、桃源郷では、「秋風先生像」を演じきることはできませんでした。
というか、心のどこかで秋風先生は、誰もが期待する「秋風先生像」のヨロイを脱ぎたい気持ちがあったのかもしれませんね。
そして、秋風先生が安心してヨロイを脱げる場所といったら一つしかありません。桃源郷です。桃源郷=楡野家です。鈴愛ちゃんの実家です。
数回前、秋風先生が鈴愛ちゃんに謝罪するために楡野家までやってきた時のこと。
秋風先生は、梟町や、心やさしい家族が揃う楡野家のことを「桃源郷」と表現しました。あの言葉は社交辞令ではなく、心からの言葉。
秋風先生の言い回しを借りるなら「真実の言葉」であったようです。
泣ける場所を見つけることができて、秋風先生は幸福でした。(鈴愛ちゃんに借りがひとつできましたね)
秋風先生と菱本さん、二人の関係のドラマ
秋風先生と菱本さん、二人の関係がますます気になってきました。
いつだったか、マーくんが自分は鈴愛ちゃんの彼氏だと冗談を言ったときのこと。その冗談に菱本さんは、当事者である鈴愛ちゃん以上に動揺してましたっけ。
岐阜の猿に先を越されたとかなんとか言いながら。
あのときの焦り方、取り乱し方はすごかった。そして、あの時の菱本さんのリアクションではっきりとわかりました。
秋風先生と菱本さんは、あくまでも巨匠漫画家と、その巨匠を尊敬する秘書の関係。それ以上でもそれ以下でもないと。
菱本さんには、秋風先生は恋愛の対象ではないようです。おそれおおくてそんな気持ちに慣れないのかもしれません。
または、恋愛などという感情を超えた存在なのかもしれませんね。
秋風先生の目の前で口にした次の言葉が胸に刺さりました。
「5分でいいから自分より長く生きてくださいね。先生のいない世界で生きる勇気はありませんので」
先生のいない世界で生きる勇気はない。ここまで言い切るなんて・・・
でも、ドラマの後半では、「先生のいなくなる世界」が描かれるのかもしれません。その時の菱本さんが今から心配です。
鈴愛ちゃんのドラマ
鈴愛ちゃんの恋が、ひそかに、そして可愛らしくはじまりました。
今回は、鈴愛ちゃんのまばたきに可愛らしい効果音を入れる演出がとってもチャーミング。
菜生ちゃんがセンベツにくれた、あのカエルのワンピースがすべてのはじまりとなりました。あの時の、まさかのデザインのワンピースがこんな形で回収されるとは。
マーくんにときめきを感じはじめる鈴愛ちゃん、かわいかった。この可愛らしさ、ういういしさ『ひよっこ』のみね子ちゃんと島谷くんの恋を思い出さずにはいられません。
しかし、みね子ちゃんと島谷くんの恋の末路はあまりにも切なかった。
一方の、鈴愛ちゃんとマーくんの恋は・・・
これ以上は、やめておきます。
コメント
大学卒の漫画家さん、いっぱいいますよ。
漫画家卒業大学、みたいな検索をかけると解ると思います。
東大、京大はもとより、芸大含めた美術系大学出身者、中退者も大勢います。
大卒漫画家としてもっとも有名なところでは手塚治虫氏でしょうか、医学博士です。
美術系中退ですが水木しげる氏は小さいころ、天才画家と言われていたとか。有名になってからの背景はアシスタントが描いたものでしょうが、どういう背景にするかのセンスがそもそも凄い。
一般的にはあまり知られていない作者だと思いますが、芸大出身の一ノ関圭氏の画力は本当に素晴らしいものです。
そもそも、小説家も画家も彫刻家も漫画家も、その表現行為の方向性の違いでしかないと思います。
美術系大学出身の漫画家達も、画力が劣るので画家を諦めたわけではない、漫画という手段がもっとも自身にあっていたからなのでしょう。
そして、秋風が律に言ったように、大学に行っていた時間とは、いろいろ思い考える時間であり大切な回り道の時間であり、そうした有意な無駄が作品に投影されるのではないでしょうか。
とりとめのない話で失礼しました。
漫画が市民権を得た今の方が、明らかに画力が不足気味な漫画家が目立ちますね。しかも、それでも売れてしまうという・・・
当時美大出身の、もっと言えば大卒の漫画家ってどのくらいいたんだろうと
ふと疑問に思いました。
その美学が名門であればあるほど
力を入れるのは日本画とか油絵とか
新興大学で目立ちたい人は前衛芸術か、映画か
出始めたばかりのCGか。
秋風先生がそういったもので目がぜず、
うまく描けるのが漫画だけだったとしたら
大学でコンプレックスに苛まれ中退しても無理ないのかな。
家族親族に画伯クラスのひとがいたら余計。
今でこそクールジャパンの立役者でも平成初めには
ただのサブカルチャー呼ばわりの世界ですし。
今のうち勝手な想像をすると菱本さんは美大の同級生で
院展に通らなくたってあなたの漫画は傑作だとか言って
デビューから叱咤激励、尻を叩いてここまで来たのかなあ。
蛇足ながら現代の美術の世界では
巨匠の回顧展の次に夏休みが来て
アニメ店や漫画展をやってたりします。
> ただのサブカルチャー
秋風先生は1990年で年齢はおそらく40代後半。ということは、秋風先生が20代だったのは1960年代。『ひよっこ』の残念な漫画家の二人と同世代。あの二人を思い浮かべると、当時の漫画の社会的地位がよくわかります。大学でコンプレックスを抱いた末の転身という洞察、鋭いですね。
鈴愛ちゃんのまばたき、可愛かったですね。あの効果音も良かったですねー。秋川先生の涙は意外でしたけど、それよりもつくし食堂の外で開店を待っている姿は、子供が恐がるのも無理はないですね。
> まばたき、可愛かったですね
コバやんとのデート直前の、当時の言葉を使うなら「ぶりっこ」はすべってましたが、あれから成長しましたね(笑)
喫茶店から鼻歌まじりに秋風ハウスに帰ってくるすずめちゃんの楽しそうな様子!ずっと続いて欲しいなー。
人面魚のテレカを自慢げに見せる鈴愛ちゃんの表情。こんな表情もずっと続いて欲しいです。