本放送:2019年1月12日(土)
再放送:2024年1月13日(土)
第15週「後悔してるんですか?」
あらすじ
美人画を描きはじめた忠彦が、朝から夕方まで女性モデルとアトリエでこもりきりになっているのが、克子は気になってしかたありません。忠彦の好きなようにしたらいいと強がりを言うものの、克子は動揺を隠しきれずにいました。
同じ頃、萬平は窮地に立たされていました。母店である梅田銀行からの資金援助が断たれ、池田信用組合の金庫の中の現金が底をつきはじめていました。しかも、他の銀行に資金援助を懇願しても、どこも引き受けてはくれないのです。
そんな中、織田島製作所の万能調理器の試作品がついに完成しました。あとは量産し、製品として売り出すだけです。しかし、そのためには多額の資金が必要です。その資金調達の見通しがどうしても立ちません。
小田島製作所の万能調理器をあきらめきれない萬平は、自宅を担保に入れてでも資金を調達しようと決意。そのことを福子と鈴に相談します。鈴は、自宅を担保に入れることに猛反対しました。しかし、福子は萬平の決意を受け入れるのでした。
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予習レビュー
今回の予習レビューはネタバレを含みます。これからの展開の詳しいところを知りたくない方は、このつづきを読まないことをオススメします。
織田島製作所の万能調理器の試作品が完成。
量産さえすれば、萬平さんの夢になってしまった万能調理器を世に出すことができます。世間の人たちの暮らしを楽しくすることができます。
しかし、量産するには資材の購入や、量産を支える行員の雇用など、大金が必要です。とてつもない額にのぼるはずです。
しかし、織田島製作所は、融資を受けられなくなっています。
融資が受けられなければ、万能調理器の量産はできません。量産できなければ販売はできません。世に出すことはできないのです。
もし万能調理器が開発途上だったら、萬平さんはあきらめていたかもしれません。
しかし、開発はすでに終わり、あとは量産するだけ。夢が叶う瞬間を目前にしたタイミングでの融資の打ち切り。
萬平さん、あきらめられるはずがありません。
そこで、自分が銀行からお金を借りようと決意。しかし、お金を、しかも大金を借りるには担保が必要です。
その担保に自宅を差し出す。それが、萬平さんが福ちゃんにした、ある頼み事です。
感想
萬平さんの「晩成」の物語
朝ドラヒロインの歴代の夫の中で、逮捕歴がもっとも多いという不名誉な記録を保持する萬平さん。
本当に運のない人だと思います。
戦前戦中の事業は、信じていたパートナーの裏切りに遭って台無しになり、戦後の事業も、一つは部下の軽率な行動がきっかけとなって継続できなくなり、もう一つの事業も、有名になりすぎたことで解散にまで追い込まれてしまいました。
そして、たどり着いた池田信用組合の理事長という立場。
理事長職を引き受けて8年。萬平さんの人生の中では、前例がないほど長期間つづいた仕事でした。
萬平さんも言ってました。
「8年間も続けてこられたのだから評価してくれたのでしょう」・・・「8年間も」と。
8年間も続けられるほど仕事は順調でした。萬平さんの言う通り、萬平さんの誠実な仕事ぶりは高く評価されてきたのだと思います。
そして、そんな仕事の中で、生きがいをふたたび見出すこともできました。
世の中が不況にならなければ、梅田銀行からの資金援助も継続し、その資金を使って池田信用組合は織田島製作所への融資を続けることができたのでしょう。
織田島製作所への融資を続けることができれば、ようやく試作品が完成した万能調理器は、晴れて世の中に流通し、萬平さんの夢も実現したはずです。
しかし、この期に及んで、またしても萬平さんの夢が断たれそうです。
本当に運のない人だと思います。
でも、萬平さんが脱税容疑で刑務所にいる頃。複数の占い師が、萬平さんは大器晩成型だと言い切りました。
その占い師の予言が、これから回収されるのでしょう。
次週も萬平さんの試練は続きそうです。しかし、限りなく50歳近くなった萬平さんの「晩成」の物語が、そろそろ始まるのではないでしょうか。
福ちゃんの苦渋の決断
塩づくりをはじめるときも。ダネイホンの開発をはじめるときも。福ちゃんは、萬平さんの下した決断を信じてきました。
萬平さんが決断を下すと同時に、萬平さんの決断を信じると福ちゃんは即決していました。
しかし、萬平さんが池田信用組合の理事長を引き受けると決断を下したとき。そのときばかりは、福ちゃんの様子はいつもとは異なった。そんな気がしています。
池田信用組合の理事長という仕事は、萬平さんが心からやりたい仕事なのか。本当にその職に就いてしまって大丈夫なのか。
萬平さんが池田信用組合の理事長を引き受けると宣言した頃。福ちゃんはずっと迷いに迷っていました。
萬平さんが決断を下す前はもちろんのこと、萬平さんが決断を下した後ですら、迷いが見え隠れしていたと記憶しています。
後々になって、萬平さんが悩むであろうことを福ちゃんはわかっていたのでしょう。
そして、萬平さんが織田島製作所の手伝いに没頭する姿を見て、福ちゃんは自分の正しさに気がついたのだと思います。
やっぱり萬平さんは迷うことになったと。
そして、自分の正しさに気がつくのと同時に、あのとき、理事長就任を反対しきらなかったことを後悔する気持ちもあるかもしれません。
だから、萬平さんが、自分の道を見つけたことは嬉しい。
しかし、その道を進むにはあまりにもリスクが大きすぎる。融資を引き出すために、家を担保に入れるというのは、あまりにも危険すぎる。
そのギャップの中での、福ちゃんの苦渋の決断。萬平さんの決めたことを受け入れるという苦渋の決断。
「私もおんなじこと思ってましたから」
「8年前、本当の萬平さんに戻ってくださいと言ったのは私ですから」
これまでで最も重い福ちゃんの決断の言葉でした。
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またまた続きです。(度々申し訳ありません…)
この回をリアルタイム(地上波本放送)で視聴していた時には、見ながら「(私は)大反対です!」TVの前で思わず私も鈴さんと同じ反応をしていました。そもそも萬平さんの‘相談’にしても「家族から何を言われても、どうせ最初から相手の話を聞き入れるつもりなんて無いのでしょう?…そんなの相談じゃないしあり得ない!」って、頭に血が上っていました。実際に劇中の萬平さんの口調もやはり‘会話’ではなくて‘演説’になっていましたし(以前もそのような場面があったように記憶しています)。
こちらで朝蔵さんが書かれた感想を拝読して、ようやく冷静になる事が出来ました(ありがとうございます)。つまり…妻の立場から見ると、それだけ萬平さんの相談事のような「男のロマン」(言い方が適切か否かは???ですが、ここではあえてこう記します)が非常に重くのしかかって来る事は往々にしてあるのですよね…。(;^_^A
続きです。
昭和32年時点で自宅に固定電話が引かれている立花家…『べっぴんさん』の坂東家を思い出しました。坂東家はかなり(否、戦前から?)裕福な設定でしたね。もっとも立花家の場合は間もなく、今の邸宅を手放さざるを得ない展開が待ち受けている訳ですが。
それにしても、特定の企業に入れ込んでしまう萬平さん…組織の長としてはアカンですね。萬平さん・そしてもう一人の義弟忠彦さんと比べると常識人である真一さん、そして秘書さん含めた周囲の他の職員達にもかなりの負荷がかかっていたのでは??と見ながらつい想像を働かせてしまっています。(^^;)
(余談ながら…以前読んだ「真一さん」役の大谷亮平さんのインタビューにあったのですが、大谷さんは「鈴さん」=松坂慶子さんから「ちゃんとしている人はあなたしかいませんからお願いしますよ」とぼそっと言われたとか(^^;)
今週の放送分を見ながら…「板挟み」という言葉が頭に浮かんで来ました。
中でも最も板挟みに遭っている(&悩まされている)のが真一さんであるような気がします。義弟である理事長=萬平さんの‘暴走’を止める事が出来ない⇒ついに義妹である福ちゃんにその役割を依頼しなければいけなくなる事態に。真一さんが最も気の毒だな~と、見ながらずっと個人的には感ぜずにいられませんでした。
そして真一さんから依頼を受けた福ちゃん自身も板挟み状態(ようやく手にした今の安定した&穏やかな生活を手放したくないという気持ちと、一方で夫=萬平さんに好きな事をして欲しいという気持ちの間で)。
香田家でも、忠彦さん・克子さん・そしてタカちゃんもそれぞれ板挟み状態。「板挟み」を感じていない(意識していない)のは、萬平さん・神部くん…かな?
‘理事長夫人の母’鈴さんは…一体どちらなのでしょうか。(^^;)
次週予告映像にチラリと登場した真一さん…来週の「差し押さえ」場面は真一さん=大谷亮平さんの見せ場の一つでもあるかと思われます。真一さんが一体全体どのような気持ちで身内の家に上がり込むのか…??
ところで、今日のラストの引きの画面の色が「白」でした。(個人的には「黒引き」「白引き」と呼んでいます…以前こちらで何方かがコメントされていて「なるほど!」と感じました。以来気をつけて見ています)
来週の展開を考えると明らかに「黒」でしかない筈なのに、今日の「白」…ひょっとしたら、もう間もなくラーメン開発のエピソードが始まりますよ、と視聴者にアピールするための「白引き」だったのかな?と、個人的には勝手に想像しています。(^^;)
これまでの感想の中で最高です。安藤サクラの名演技を的確に、詳細に解説する名文です。まんぷくを視聴している多くの人にこの文を読んでほしい。