本放送:2019年1月17日(木)
再放送:2024年1月18日(木)
第16週「あとは登るだけです」
あらすじ
池田信用組合がつぶれるかもしれない。そんな噂が池田の町中にひろがり、信用組合がつぶれる前に預金を引き出そうと取り付け騒ぎが発生しました。しかし、騒動はこれだけでは終わりませんでした。
池田信用組合の取り付け騒ぎの2日後、萬平が出勤した直後。真一が立花家に訪ねてきました。信用組合の母店の梅田銀行に命じられた真一たち一行は、萬平が融資の担保に差し入れた家と家財一式を差し押さえに来たのです。
差し押さえがあることを萬平は事前に知らされていました。しかし、そのことを家族に告げることを止められていたのです。一方、最悪の事態を覚悟していた福子でしたが、すべてを失ったことへの落胆を隠すことはできません。
そんな中、福子を心配する敏子が訪ねてきました。敏子は、福子が無理をしていることを察していました。家族の前ではつとめて明るく振る舞っていた福子でしたが、敏子の前で、はじめて不安な気持ちを吐露し、涙を流すのでした。
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予習レビュー
戦時中。萬平さんが根菜裁断機をつくっていた頃は、萬平さんの工場に憲兵たちが乗り込んできました。
終戦間も無く。塩づくりをしていた頃には進駐軍が乗り込んできました。
そして、塩づくりをやめた後にはじめたダネイホンが軌道に乗った頃、今度は、国税局の役人たちが乗り込んできました。
何者かに乗り込まれるたびに事業の継続ができなくなった萬平さん。
四度目となる同様の危機がやってきました。しかも、今回は身内であるはずの真一さんが、部下たちを連れて乗り込んできました。
真一さん、つらい立場です。自分の上司にして、身内でもある萬平さんの家に強引に上がりこんで差し押さえをしなければならないのですから。
本来ならそんなことなどしたくない。でも立場上、断るわけにはゆかない。
憲兵、進駐軍、国税局たちの次は、身内に乗り込まれた萬平さん。
再び試練が訪れますが、史実通りに物語が運ぶのなら、萬平さんがライフワークの即席麺に出会うのはもう少しです。
感想
『まんぷく』には、これまでつらい場面が数多くありました。しかし、今回ほどつらい場面は、もしかするとこれがはじめてかもしれません。
そして、つらい場面だからこそ、役者さんたちの名演が輝く回ともなりました。
これまで「何者かに踏み込まれた場面」の中で最も過酷
これまで萬平さんは、憲兵に踏み込まれ、進駐軍に踏み込まれ、そして国税局に踏み込まれる経験をしてきました。
何者かに踏み込まれすべてを失う、これまで描かれた三つの場面。萬平さんの三つの試練は、いずれも過酷極まるものでした。
でも、誤解を恐れずに言えば、観ている者としては気持ちは楽でした。
これまで、萬平さんの工場や家屋に踏み込み、すべてを持ち去ったのは、萬平さんの敵だったからです。
萬平さんの敵。そして、福ちゃんの敵。ドラマの主人公の敵なので、安心して敵に対して腹を立てることができました。
でも今回のドラマの中で踏み込んできたのは、敵ではありません。
踏み込んできたのは身内です。しかも、萬平さんが仕事の上でもっとも信頼しているはずの腹心の部下です。
真一さんの気持ちは痛いほどわかります。
また、立場としては梅田銀行の強面銀行マン・矢野さんも、過去の踏み込んできた三者とは異なり、理不尽な行動をしているわけではありません。
矢野さんは矢野さんで、職務に忠実なだけです。
だから怒りの向先がない。腹を立てる相手がいない。敵がどこにもいない今回の「何者かに踏み込まれた場面」。苦しすぎました。
真一さんの苦悩
鈴さんが真一さんのことを「悪魔の手先」と言い放っていましたが、鈴さんの目から見れば真一さんは間違いなく「悪魔の手先」です。
また、今回のドラマの中では「悪魔の手先」的なポジションに立っていました。
しかし「悪魔の手先」の真一さんは、決して悪意があって「悪魔の手先」の仕事をしているわけではありません。
真一さんだって、立花家の差し押さえなどやりたくない。でもやらざるを得ない。
亡き妻の家族にして、たちばな塩業以来、ずっと一緒に働いてきた仕事の同志の土地も家も家財道具も、すべて差し押さえなければならない立場に立たされた真一さん。
その苦悩する表情に泣かされました。そして名演でした。
苦渋に満ちた表情を浮かべながら粛々と差し押さえの作業を行う真一さんの姿を見た福ちゃんが、こちらの方が申し訳ないような気がすると言いました。
福ちゃんのその言葉がリアルに実感できるほどの、真一さんの苦悩の名演。
半年間の『まんぷく』の中で、忘れられない表情になるような気がします。
「トシちゃん、ほんまは怖いの」
真一さんの苦悩の表情も忘れられない名演でしたが、ずっと気丈に振る舞い続けた福ちゃんが、トシちゃんの前でついに泣き崩れるその姿も忘れられない名演でした。
今回の最後。トシちゃんの優しさが胸にしみました。
女学校時代から福ちゃんのことをよく知っているトシちゃんは、福ちゃんが明るく振る舞いながらも、実は不安におしつぶされそうだったことを察していました。
ここまで福ちゃんのことを深く理解してくれているキャラ、本作『まんぷく』の中では他にいないかも。
そのトシちゃんの優しさが、福ちゃんの心にもしみ渡りました。
「トシちゃん、ほんまは怖いの」
「どこまで萬平さんを支えてゆけるか、子供たちを守ってゆけるか、不安でたまらないの」
家族の前では歯を食いしばって明るく振舞っていた福ちゃんでしたが、やっぱり不安でいっぱいでした。
でも、そも不安な気持ちを萬平さんだけには知られたくない。
「萬平さんには言わんといてね」
不安におしつぶされそうになってもなお、萬平さんのことを思う福ちゃんに二度泣かされました。
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本当はこわいの…。と泣き崩れる福ちゃん。気丈に振る舞っているぶん、その心細さが強調される様でした。若い頃から様々な困難に直面し、乗り越えて来た人の心理状態がそれ…。何もかも失っても時間はいつも通りに流れ、物事は動いていく。福ちゃんはそれを肌で感じているはず。泣き崩れ留まってはいられないです、追い詰められていたら。生活はあるし、やらなければならない事は押し寄せて来るし、何より福ちゃんという人は誰かに依りすがるより自分から動く人として描かれていたように感じていました。目の前の片付けなければならない事をこなしていたら嘆いている暇がないのが、現実です。優しい敏ちゃんに苦しさを見抜かれても、その時には感情が出てこない方が、現実的ではないでしょうか。そんな状態を時に当事者でもなく身近に暮らしてもない人は「冷たい」と断罪する人もあるので、15分のTVドラマで分かりやすく共感できる表現はこうなってしまうのかもしれません。落ち着いて穏やかになった時に、溢れでてくる訳のわからない感情というのが、涙になるように思いました。
「咲姉ちゃん、今夜だけでも真一さんの枕元に行って寄り添ってあげて~!」と、視聴者の1人としては切に思います。
「家族みんなで一緒にごはんを食べましょう…ごちそうは作れないかもしれないけど」電話口で福ちゃんが話す場面が個人的には印象に残りました。
福ちゃんの背後にいるのは真一さん。2人を見ながら…帰宅すれば家族が待っていてくれる萬平さんに対し、現時点での真一さんは帰宅しても誰も待つ人がいない。この点がさらに真一さんの辛さ&悲しさを増幅させていたように、見ながら私は感じました。
思えば、以前世良さんと坂下食品に殴り込んだ後「僕にケンカは向いてない…」あの時は見ながら爆笑していただけでしたが、あの殴り込みの場面は今考えると真一さんの穏和な性格が仇になってしまう今回の件の伏線だったのでは?という気がしています。
おそらく真一さん、萬平さんに度々忠告はしていたものの性格故にきつく言えず、「あの時もっと強く言えていれば…」という後悔の念に駆られているのでは?
この先真一さんがどのようにストーリーに絡むのかは???ですが…せめて最後には真一さんにも幸せな結末が用意されていて欲しいと切に願わずにいられません。
中年男性が夢やロマンを語って何が悪いんだ!とばかり喜多村さん&萬平さんを応援したくなりました
喜多村さんの作成した事業計画書もしくは稟議書は きっと物作りに対する萬平さんに感銘を受けた熱意溢れるものだったと思います
が敢えなく没案件おまけに左遷人事というオタメ付き
池井戸作品みたく萬平さんのこれからの発明事業により成功して銀行の方から融資を頼んでくるようになってほしいですね
その時には 先見の明があったと喜多村さんを褒めてあげてくださいね