NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『エール』
2020年5月25日 〜 5月29日放送
あらすじ
鉄男の上京
昭和7年(1932年)1月。鉄男が裕一に会うために東京にやって来ました。鉄男と一緒に曲を作りたいと考えた裕一が東京に呼び出したのです。鉄男は記者の仕事を優先するつもりだが、いつかきっと裕一と一緒に曲を作ろうと約束し福島に帰りました。
その頃、音が通う音楽学校では記念公演の二次審査が行われていました。審査員には音が尊敬する双浦環も加わりました。演目は『椿姫』。音は二次審査を通過するものの、環から厳しい言葉を投げかけらました。音の歌声から何も伝わって来ないと言われたのです。
落ち込む音に久志がアドバイスしました。男女の機敏を理解してみよと。その言葉にヒントを得た音は、一週間だけカフェーで働くことを決意。女給として働きながら、カフェーに集まる男と女の姿を観察する日々が始まりました。
カフェーで働く希穂子
音がカフェーの客と小さなトラブルを起こしました。それがきっかけとなって、音は女給の希穂子と親しくなりました。そんな中、鉄男がカフェーにやって来ました。音が働いている様子を見て来て欲しいと、鉄男は裕一から頼まれていたのです。
鉄男の顔を見た希穂子の顔色はみるみるうちに変わりました。福島の料亭で中居として働いていた希穂子は鉄男と知り合い交際していました。しかし、鉄男に新聞社の社長令嬢との縁談が持ち込まれたことを知り、希穂子は鉄男の前から姿を消していたのです。
一方で鉄男は『福島行進曲』を作詞していました。その歌詞に感激した裕一が作曲し廿日市に持ち込むと、世間で流行している地方小唄でヒット曲を狙っていた廿日市は即座にレコード化を決定。ついに裕一は作曲家としてデビューを飾ることになりました。
音が『椿』の主役の座を射止める
『福島行進曲』のレコード化を祝う会がバンブーで開かれることになりました。音は、その会に希穂子を呼びました。音は理解していました。鉄男を避け続ける希穂子が、心の中では今も鉄男のことが好きなことを。
希穂子が駆けつけてくれたことに感激した鉄男は希穂子にプロポーズしました。しかし希穂子は、結婚が決まっていることを理由に鉄男のプロポーズを断りました。音には希穂子の言葉が嘘であることがわかっていました。そして嘘を言う気持ちも理解しました。
ほどなくして、記念公演の最終選考が行われました。音は『椿姫』の悲恋を、希穂子の悲恋に重ね合わせながら心を込めて歌い上げました。音の歌声は環の心を動かしました。そして誰もが最有力と信じていた千鶴子をくだし、音が『椿』の主役の座を射止めるのでした。
予習レビュー
鉄男くんと希穂子ちゃんの悲恋
あまりにも切なすぎる悲恋が描かれる一週間です。
上京した鉄男くんが、カフェーで働きはじめた音ちゃんの様子を観察するためにカフェーに足を運ぶと、そこで希穂子ちゃんという名の女給さんと遭遇。
実は鉄男くんと希穂子ちゃんは恋人どうしでした。
希穂子ちゃんが福島の料亭で中居をしていたときに客としてやってきた鉄男くんと知り合い、二人は恋に落ちていたのです。
しかし、仕事ができる鉄男くんは勤めている新聞社の社長のお気に入りでした。そして、社長は自分の娘の婿に、鉄男くんを迎えたいと考えていました。
そしてなんと、この社長は鉄男くんの前から希穂子ちゃんを「排除」するためにとんでもないことをします。
希穂子ちゃんに包み金を渡した上に、鉄男くんの結婚は決まっているみたいなことを言って福島から追い出してしまうのです。
朝ドラらしからぬエグい展開にびっくりです。
希穂子ちゃんは、大好きな鉄男くんの幸せを思って自ら身を引いてしまいました。そして、行き着いたところが東京のカフェーであったようです。
希穂子ちゃんはまだ鉄男くんが好きです。
でもその気持ちを口に出してしまったら鉄男くんの幸せを奪ってしまう。そのように考えたらしい希穂子ちゃんは、自分には決まった人がいると嘘をついて、再び鉄男くんの前から去ってしまう。そんな悲恋が今週の一週間を通して描かれます。
そして、この悲恋に男女の機敏を学んだ音ちゃんは『椿姫』の主役の座を射止めます。
ヴェルディ『椿姫』
音ちゃんが主役の座を射止める『椿姫』のお話は次のとおりです。
物語の舞台はパリ。パリ郊外に住む青年貴族アルフレードは、パトロンの庇護のもとで社交界の華として暮らす高級娼婦ヴィオレッタに恋をします。
ヴィオレッタも、純朴な性格のアルフレードに恋をし、自分の生き様を見直す中で本物の愛とは何かを理解します。
しかし、アルフレードの父・ジェルモンは、息子と高級娼婦との恋を認めようとはしませんでした。
ジェルモンはヴィオレッタに迫ります。アフルレードの幸せを願うのであれば、アルフレードから身を引いて欲しいと。
アフルレードを心から愛していたヴィオレッタは、他に好きな人ができたと嘘の手紙を書きアルフレードを怒らせることで、二人は別れました。
そして月日が流れ・・・
ヴィオレッタは結核を患い余命はわずかしかありませんでした。
そこへ、アルフレードが姿をあらわし、ヴィオレッタを愛する気持ちを伝えます。父のジェルモンもヴィオレッタに許しを請いました。
しかし、ヴィオレッタは息絶えてしまうのでした。
以上が『椿姫』のあらすじですが、願わくば鉄男くんと希穂子ちゃんの悲恋が『椿姫』のような救いのない回収のされ方にならぬよう願うばかりです。
なお、このページを投稿した2020年3月下旬現在。鉄男くんと希穂子ちゃんの悲恋の行方はまだわかっていません。
「椿姫」というタイトルですが、デュマの原作は直訳すると日本語で「椿の花の貴婦人」。これが由来で、日本では小説もヴェルディのオペラもタイトルは「椿姫」です。
ところがヴェルディは、オペラに椿の花とは全く無関係のタイトルをつけました。オペラの原題の「ラ・トラヴィアータ」は「道を誤った女」という意味だそうです。
ローマ在住の作家、塩野七生さんは、知人にヴィオレッタと同業の女性がいるそうで、その方を見ていると
「道を誤るの意味とは、道徳とか倫理に反するの意味ではなく、客に惚れるという、玄人の女として道を踏み外してしまったという意味じゃないか」
と思えてきたそうです。
この話を読んでから、落語の「たちきり線香」を聞くと「おいおい子糸ちゃん、そんなんじゃ芸者はやっていけないよ」とか「おかあさん(置き屋の女将)、少しは小糸ちゃんを叱らないと」とか心の中でヘンなツッコミを入れるようになってしまい、困っています。
「椿姫」の内容が、結核で亡くなる以外は、鉄男ー希穂子、さらに裕一ー音の恋愛の過程とそっくりですね。
音ちゃんがカフェで働くの?俺が行った時にはすごい剣幕だった癖にとか言って喧嘩にならないといいのですが…
あまり当てにならない予想ですが…。
私は最終的に鉄男くんは吟ちゃんと結婚するんじゃないかと思っています。
吟ちゃんは軍人の鏑木さんと交際していますが、今後戦争という波に翻弄される展開は避けられそうにありません。
鏑木さんは優しく人格者という設定。
吟ちゃんを想い「戦死して一生私を失った傷を背負わせたくない。あなたを未亡人にしたくない。」と別れを切り出すのではないでしょうか。
何かのきっかけで鉄男くんと吟ちゃんが出会い、やがて悲愛に見舞われた者通し、お互い今後の人生を悔いなく歩みたいと鉄男君と吟ちゃんが結婚するというシナリオです。
ひよっこでの愛子さんと省吾シェフのパターンですね。
お嫁さんになりたいという吟ちゃんのキャラ設定もそのシナリオの為ではないかと予想します。
最後に3/30のあさイチで鉄男くん役の中村蒼さんと吟ちゃん役の松井玲奈さんがゲストで出ていました。
キャラクター上、一見するとお互い関わらなそうな2人がゲストだったのが妙に引っ掛かりました。伏線だと思っています。
もしこの予想が当たったら自分で自分を褒めたいと思います(笑)
音は、子供の時「かぐや姫」で主役を、大人になってから「椿姫」でも主役の座を射止めましたね。(残念ながら妊娠のため辞退)つまりナンバーワンでないと気がすまないのではないでしょうか?
一方、裕一は作曲コンクール2位で満足しています。音なら1位でないと気がすまないのではないでしょうか?
うひゃぁ!そんなことが起こるんですか・・・こんなご時世だからかどうかわかりませんが、なんか朝ドラも結構攻めてきましたねぇ。