大阪に落語の常打ち小屋 /『ちりとてちん』106話

連続テレビ小説(朝ドラ)『ちりとてちん』
初回放送:2008年2月6日(水)放送
再々放送:2014年2月12日(水)放送
第19週 第106話 「地獄の沙汰もネタ次第」

『ちりとてちん』第19週 第106回
「地獄の沙汰もネタ次第」あらすじ

草若は弟子たちを前にして「大阪に落語の常打ち小屋を作りたい」と宣言しました。しかし、かつて常打ち小屋に奔走した末に草若がお金を騙し取られたことを知る兄弟子たちは草若の宣言に異を唱えました。

それでも、意志を曲げようとしない草若に糸子が言いました。何かやっていないと怖いから動き回っているのではないかと。図星を刺された草若は観念しました。そして自分の気持ちを正直に糸子に告げました。

翌日、草若は天狗芸能の鞍馬会長を訪問し頭を下げました。土地家屋を売ってお金を用立てするつもりなので常打ち小屋作りに協力してほしいと。鞍馬は喜代美と草若の師弟落語会を条件に考えてもいいと応えました。

早速、師弟落語会のことを草若は喜代美と草々に話しました。しかし師弟落語会で創作落語をやれと言われ喜代美は困惑を隠し切れません。その時、草若は二人の目の前で苦痛に顔を歪め倒れてしまうのでした。

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『ちりとてちん』第19週 第106回
「地獄の沙汰もネタ次第」感想

前回105話で、黒澤明監督作品『生きる』を引き合いに出し、これまで人を喜ばせる仕事をした経験がない市役所の役人が、余命幾ばくも無いことを知り、最後の命を人のための仕事に費やすことでこれまでの人生を清算しようとした。

それに対して、これまで人並み以上に人を喜ばせてきた師匠が、最後の命を使って何かをやり遂げようとするのは何故だろう、そんな疑問をエントリーしたのですが、師匠の最後の行動の動機は恐怖だったんですね。

入院して下さいと師匠に話しを切り出した糸子お母ちゃんが、続けて大上段から師匠の心に斬り込んでゆきました。「なんかやっていないと怖いから、次々動き回っているのでは?」これにはさすがの師匠も白旗「かないまへんな、奥さんには」

続いて師匠は自分の死への恐怖を赤裸裸に語り始めますが、聞いていて胸の痛むような言葉ばかり。「みっともない男だと思いますか?」と師匠は糸子に思わず尋ねてしまうほどに正直に語るので、胸の痛みもなおさらです。

「落語に出て来る地獄は楽しいところ、何故そんな楽しいところにしたのか、今なら良くわかる」

「地獄は楽しいところだ、そう思わなければ、「ちょっとこれ、耐えられまへんで」まともに向き合ったら、怖くて怖くて」

「陽気なお囃子に見送られて地獄までの道中笑って歩きたい、思い残すことがないようにしたい」

死ぬことへの恐怖から目をそらすための行動、糸子お母ちゃんの鋭い洞察力で師匠の行動の動機と一緒に、前述した『生きる』の主人公の行動の動機も今更ながら腑に落ちました。

『生きる』の主人公は自分が胃がんに冒されていると知ってから、突然老いらくの恋に走ったり、かと思うと何かに取り付かれたようにそれまで保留にしていた仕事に取りかかりはじめたり。この主人公も恐怖から目をそらしたかったのかも知れません。

さて、話しを『ちりとてちん』に戻しますが、創作落語を薦める師匠の意図がわからず困惑する喜代美に対して、師匠はお「前に落語を続けさせたい」と説明。やはりこれだったんですね。

自分の亡き後、落語を教える者がいなくなる以上、一人で落語を続けられる唯一の選択肢、それが創作落語ということだったようです。このことを告げた直後についに師匠は倒れてしまいますが、師匠の気持ちを喜代美は理解するのでしょうか。

また、草々と喜代美の夫婦にそろそろ出て行ってくれと唐突に言いだしたこと。この理由については視聴者にも全くわかりませんでしたが、常打ち小屋開設のために土地・家屋を売ってしまうとは。

これは常打ち小屋建設のためばかりでなく、自分の逝った後に自分のものは何ひとつ残さず奇麗さっぱりし、後世の落語のためのものだけ残してこの世を去っていきたいという気持ちもあるのかも知れません。

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