2025/6/16(月)第12週「逆転しない正義」
あらすじ
絵の才能を見込まれた嵩は、粕谷軍曹の命令により宣撫班に入ることになりました。嵩がさっそく宣撫班室に足を運ぶと、そこは物々しい雰囲気に包まれていました。その日の朝、市場で見せた紙芝居の内容に反発した地元民が騒ぎを起こしたのです。
そんな中で嵩の任務は地元民の反感をかわない紙芝居を作ることでした。そこで嵩は騒動が起きた現場を見学。地元民から怒号を浴びせられた嵩は、正義の戦争を宣伝する紙芝居を作らねばならないことが憂鬱でした。
そんなある日、嵩はリンという現地の少年と出会いました。リンは岩男になついていました。入隊直前に結婚し父親になっていた岩男も、リンを息子のように可愛がっていました。岩男とリンの関係を嵩は微笑ましく感じました。
一方、宣撫班に加わった健太郎とともに、嵩は紙芝居づくりに没頭。岩男とリンの仲の良い関係をヒントにしてストーリーを作った嵩は、ようやく紙芝居を完成。しかし完成した紙芝居は厳しい審査を受ける必要がありました。
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感想
半年に及ぶ本作のストーリーの中で、おそらく最もヘビーな描写が続くであろう戦場を描く第12週が始まりました。
前週の最後に放送された予告映像でも、血まみれの負傷兵など朝ドラらしからぬ映像であふれていた第12週。
その初日は、ブログ主が想像していたよりは穏やかなものでした。
宣撫班
前週の最後は、駐屯地に着いたばかりの嵩くんが軍曹から「この絵を描いたのはお前か?」と問われる場面。
「この絵」とは、嵩くんが小倉を発つ前夜に描いた八木さんの横顔です。
前週の最後、軍曹の厳しい口調はこれから嵩くんを吊し上げるかのようなでした。
しかし、実際は吊し上げではなく嵩くんの才能を見込んだ上での質問でした。
軍曹が嵩くんに出した宣撫班入りの命令。
これも八木さんのはからいなのでしょう。
前週、八木さんや嵩くんの舞台が駐屯地に到着して早々、八木さんは軍曹の部屋を訪問。
あのとき八木さんは、嵩くんの絵の才能を軍曹に売り込んだものと思われます。
八木さんのことなので、小倉で絵をもらったその時にはすでに、嵩くんを宣撫班の任務に推薦しようと考えていたのでしょう。
宣撫班ならひ弱な嵩くんでもつとまりそうなので。
どこまでも嵩くんを支える八木さん。
素敵すぎます。
ところで、小倉を発つ前夜に嵩くんが八木さんの横顔を描き、その絵を八木さんにお礼にと贈るエピソードは事前に告知されていました。
しかし、あの絵が宣撫班入りにつながることは事前の告知は一切なし。
なので、この展開は感動しました。
健ちゃん
嵩くんが機転をきかせたことで健ちゃんまでもが宣撫班に入ることが決定。
宣撫班で紙芝居づくりを命じられた嵩くんをうらやましがっていた健ちゃん、よかったね。
そして始まった嵩くんと健ちゃんの紙芝居づくりの作業。
二人が紙芝居づくりの作業に没頭する姿は、まるで美術学校時代が再現されたよう。
これから始まる過酷な戦場場面の前の束の間の癒しの時間となりました。
しかし、嵩くんと健ちゃんの親友どうしが一番似合うのは平和で華やかな銀座の街角です。
物語後半になって、二人が再び東京で合流するかどうか定かではありませんが、出来ることなら健ちゃんには東京で仕事をする嵩くんの支えになってほしい。
でも、メイコちゃんと結婚して御免与の人になってしまうことも考えられますね。
岩男くん
岩男くんがすっかり大人になりました。
パン食い競争の頃も、蘭子ちゃんにプロポーズした頃も、岩男くんはまだ子供っぽさが抜けきれていませんでした。
しかし岩男くん本人が語ったところによれば結婚し、子供も生まれているとのこと。
子供の顔はまだ見ていないようですが。
それでも結婚して夫となり、子供が生まれて父となり、岩男くんは大人になったようです。
そういえば前週の最後、駐屯地の場面で岩男くんが再登場した際、嵩くんが自分よりも上の階級になったことを、岩男くんは実に素直に受けれている様子を見せていました。
「たっすいがの嵩」が自分よりも上の階級になったことに対してひがんでいる様子はまるでない。
そして今回見せたリン少年を可愛がる姿も実に自然体。
蘭子ちゃんにフラれるまではどちらかと言えば残念キャラだった岩男くんですが、今では「俺たちの岩男」の呼び名にふさわしい爽やかな大人になりました。
今週、岩男くんのファンが一気に増えるような予感でいっぱいです。
今週の主なトピック
第12週「逆転しない正義」の主なトピックは次の4つです。
1:宣撫班の嵩くん
2:戦況悪化
3:岩男くんの最期
4:昭和20年夏
【その1】宣撫班の嵩くん
今週、嵩くんは部隊の宣撫班(せんぶはん)に入ります。
宣撫班(せんぶはん)とは、占領地域で住民の協力を得るために組織した小部隊で、その中での嵩くんの仕事は絵の才能を活かして紙芝居を作ること。
そして紙芝居の目的は、地元民に対して軍隊は敵対的な行動をとらないと宣伝することです。
しかし、地元民の人たちはすでに軍隊に対して疑いの目を向けている。
そんな現実を知った嵩くんが、地元民の現実と軍隊の建前の間で苦悩しながら紙芝居を続けることになるようです。
ただし、今週の後半では戦況が悪化。
のんびり紙芝居づくりをしている余裕はなくなってしまいます。
【その2】戦況悪化
嵩くんたちの部隊が中国の駐屯地にやって来てから数ヶ月が経過した昭和20年(1945年)春。
嵩くんは紙芝居づくりの没頭できるような状況でなくなります。
敵軍の駐屯地への攻撃が始まるのです。
そして、嵩くんたちの部隊は大きな問題を抱えることに。
補給路が絶たれ食糧不足に陥ります。
そして食糧不足の中で康太くんの小学校時代の性格が回収されます。
康太くんは小学生時代、嵩くんの弁当を奪い取る食い意地のはった子として描かれました。
食い意地がはった子が大人になって食糧不足という危機に陥る。
そして康太くんが暴走を始めます。
小学校時代の弁当を奪い取るエピソードがこんなところで回収されるとは予想もできませんでした。
【その3】岩男くんの最期
今週、岩男くんが戦場で最期を迎えます。
岩男くんは嵩くんと同じ駐屯地で野戦任務に当たっています。
そして現地で暮らす男の子が岩男くんになつきます。
岩男くんは入隊直前に結婚しており、子供も生まれてすでにお父さんです。
だから岩男くんも自分になついてきた男の子を息子のように可愛がります。
そんな岩男くんが戦場で最期を迎えるのですが、なんと岩男くんは上記の男の子に撃たれて命を落とすのです。
どうしてそんな不条理なことが起きるのか。
詳細は本欄では伏せておきます。
【その4】昭和20年夏
今週、終戦の年の夏、そして終戦の日が描かれます。
そのころのエピソードで最も気になるのは次郎さんのエピソードです。
なんと次郎さん、病気で入院しています。
しかも当時は死の病だった肺結核。
終戦を目前にして悲しいフラグが立ってしまうようです。
また、のぶちゃんが暮らしている高知市が空襲に見舞われる場面も。
そのようなエピソードを経て、今週ようやく戦争が終わります。
あんぱん|感想あらすじネタバレトップページ
同じ部隊に健ちゃんがいて、よかった。
あの時代、あの状況で、決して口にしてはいけないことも、健ちゃんになら言うことができるから。
親友って、良いですね。
千尋さんのモデルとなった方が勤務されていた船は、駆逐艦「呉竹」です。1922年就役というから1944年当時には、艦歴22年の老艦です。艦の大きさも武装も日本海軍のエース駆逐艦「雪風」の半分以下(前者が排水量820トンに対し後者が2050トン、前者が12.7CM砲3門、53CM魚雷8門、後者が12.7CM砲6門、61CM魚雷8門)なので艦隊決戦には向かなくなっていたのですが、輸送船団の護衛任務には十分こなせたので、南太平洋で多数の駆逐艦を失っていた日本海軍にとって貴重な戦力だったわけです。千尋さんは音波探知機で水中の潜水艦を探索するという重要な役割を負っていました。果たして千尋さんにはどのような運命が?
関係ないけど「仮面の忍者赤影」の補足です。高度成長期の初期にカラーテレビが発売されますが、まだ高価で一般家庭のテレビは白黒でした。大手家電メーカーの三洋電機はカラーテレビの普及を目論んで、「隠密剣士」がヒットして当時まだ人気のあったTV時代劇を時代劇で初のカラーの番組として制作する事に。依頼を受けた関西テレビは、時代劇に強い東映に制作を依頼します。「大忍術映画ワタリ」と忍者映画と怪獣映画をコラボさせた「怪竜大決戦」をヒットさせて勢いに乗る東映は「ワタリ」のTV番組化を計画しますが、映画版の「ワタリ」でストーリーを改変されて激怒した原作者の白土三平氏がTV化を拒否、時間的に余裕の無かった東映は急遽、当時人気のあった忍者漫画「伊賀の影丸」の作者横山光輝氏に原作を依頼。それを広告代理店を退社してフリーの脚本家になっていた伊上勝氏がシナリオ化、プロデューサーの平山亨氏のもとで、番組がスタートします。この伊上、平山氏のコンビは後に「仮面ライダー」シリーズや「戦隊ヒーロー」シリーズを数多く手がけます。なお、主人公達を色分けしてキャラクター作りする「戦隊ヒーロー」の手法はこの時からはじまっています。(「めちゃイケ」の色取り団はこれのパロデイ。)
岩男さんは終戦後帰還し映画「大日本帝国」のラストシーンみたいな展開を見たいが・・・どうにもリン少年が「北斗の拳」でサウザーを襲撃したターバンのガキにしか見えないんよね