2025/6/25(水)第13週「サラバ 涙」
あらすじ
ある日、焼け野原と化した高知市内でのぶが佇んでいると、そこに嵩が姿を表しました。それはのぶと嵩の四年ぶりの再会でした。嵩は御免与の空き地のシーソーを見ながら、のぶにもう一度会いたいという千尋の言葉を思い出し、高知まで足を運んだのです。
釜次から次郎のことなどを聞かせてもらったという嵩に、のぶは打ち明け始めました。戦争が終わってすぐに教師をやめたこと。そして、小学校の子どもたちを戦争に駆り立ててしまった後悔の念を。
過去を深く後悔し、自分は生きていていいのかと言うのぶに対して嵩は言いました。死んでいい命なんて一つもない。自分は千尋の分まで生きる。のぶも生きてくれ。次郎の分も生きろ。大好きな子どもたちのためにも生きろと。
続けて嵩は言いました。正義は逆転するか信じてはいけない。しかし、もし逆転しない正義があるのならそれを見つけたい。何十年かかっても見つけたい。そう思ったら生きる希望がわいてきた。絶望なんかしていられないと。
第18週
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感想
戦後編に入って3回目。
今回も沈鬱な場面が続きましたが、そんな中でも嵩くんが未来を語り始めました。
嵩くんが前を向いたことで、前を向き始めたのぶちゃん。
今回で一区切り。
次回からは登場人物たちが明日に向かって動き始めるのかもしれません。
のぶちゃん
次郎さんを亡くした悲しみ。
教師として子どもたちに対して取り返しのつかないことをしてしまった後悔。
二つの感情によって、のぶちゃん消耗しきっているらしい。
ナオキくんからはハチキンのお姉ちゃんと言われましたが、かつてのハチキンの姿は見る影もありません。
まるで別人です。
そんなのぶちゃんが言いました。
「うちは立ち止まらんかった、立ち止まって考えることが怖かった」
愛国の鑑と言われていたころ、確かにのぶちゃんは立ち止まる様子を見せませんでした。
立ち止まるのは悪徳ぐらいに考えていたかもです。
しかし、戦時中に次郎さんを航海に送り出す場面あたりから、立ち止まることが悪徳から恐怖に変わったような気がします。
悪いことだから立ち止まらないのではなく、怖いから立ち止まれない。
あの頃にはのぶちゃんも生徒への指導に葛藤を抱え始めていたような気がします。
日本は必ず戦争に勝つと子どもたちに言う自分自身を、「口では勇ましいことを言う」と自虐してみたりと。
上に引用したセリフに続いてのぶちゃんが言った言葉。
「あの子らの自由な心を塗りつぶして、あの子らの大切な家族を死なせて、うち生きちょっとええがじゃろうか」
こののぶちゃんの言葉、戦争末期にはのぶちゃんはこんな気持ちになってたのかもです。
しかし、そんな気持ちは口が裂けても言葉に出せない時代でした。
そう考えたら、葛藤を素直に言葉に出せる分だけ、のぶちゃんは救われたのかもしれません。
必死に前を向こうとする嵩くんの言葉に背中を押されたらしいのぶちゃん。
今回のカットで夕陽を見つめるのぶちゃんの後ろ姿は『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラみたいでした。
追記:女学校時代のお友達、うさ子ちゃんは今頃どうしているのかな?
のぶちゃんと同様に苦悩しれいるのかも。
黒井先生は心の中の苦悩に加えて社会的にもつらい立場にあるかもです。
女学校時代の人々の今が心配です。
無事な姿をどこかで見せてくれると嬉しいです。
嵩くん
かつてはのぶちゃんから「たっすいがぁ」と言われ続けてきた嵩くんが、今回ばかりはのぶちゃんの心の支えになりました。
弟の千尋くんを誇りに思っていた嵩くん。
最後に会った時の千尋くんの言葉がいつまでも忘れられないらしい。
その言葉とはこれです。
「この戦争さえなかったらわしは愛する人のために生きたい」
嵩くんと千尋くんが最後に会ったころ。
嵩くんは当時の正義に対して半信半疑でした。
半疑ではなく「疑」が大半をしめていたかもしれません。
一方の千尋くんは真面目な性格ゆえに自分の感情を押し殺してでも当時の正義を正しいと思い込もうとしたのではないか。
そんな気がします。
そして千尋くんを死なせた正義を憎む嵩くんは言いました。
「だから正義なんか信じちゃいけないんだ、そんなもの簡単にひっくり返るんだから」
正義が逆転した瞬間を体験した嵩くんの言葉は重い。
でも嵩くんは前を向き始めました。
「もし逆転しない正義があるとしたら、僕はそれを見つけたい」
そして、誕生までに何十年もかかる『アンパンマン』のフラグのようなセリフが嵩くんの口から出てきました。
「何年かかっても何十年かかってもみんなを喜ばせたいんだ」
今の嵩くんの中には、まだアンパンマンは存在しませんが、アンパンマンの種が心に撒かれたのかもしれません。
「そう思ったら生きる希望がわいた」
嵩くんが口にした「希望」という言葉。
普段、安易な使い方をしてきましたが、これほど人の心を奮い立たせる言葉なのかと、嵩くんのセリフを聞いて初めて理解できました。
予習レビューと史実のリアルエピソード
嵩くんの復員と千尋くんの戦死
今週、嵩くんが復員。
御免与の柳井家に帰ってきます。
嵩くん、戦争を生き延びることができました。
しかし、柳井家に帰って早々に悲しい知らせが・・・
柳井家に帰ってきた嵩くんは千代子と再会し、千代子さんから悲報を告げられます。
千尋くんが戦死したことを。
でも、嵩くんは驚きません。
嵩くん、そんな予感がしていたのだそうです。
千尋くんと小倉で三年ぶりに再会したとき、もしかするとあの時点で「予感」があったのかもしれません。
千尋くん、死を覚悟しているような表情をしていたので。
しかし「予感」はしたものの、心から愛していた弟を失った嵩くんの悲しみの深さは筆舌に尽くしがたいほどかと。
千尋くんの戦死の事実を知らされる場面や、悲しみに沈む嵩くんの描写などなど。
次郎さんも亡くなり、今週はつらすぎる場面が続きそうです。
ぶちゃんの近況を知るのぶちゃん
復員し柳井家に帰ってきた翌日、嵩くんは朝田家を訪問します。
そして、カマジイにのぶちゃんの近況を聞かせてもらいます。
嵩くんが朝田家を訪問したタイミングは、次郎さんが亡くなった後です。
なので嵩くんは、次郎さんを亡くなったこと、教師を辞めたこと、そんな中でものぶちゃんは気丈に振る舞っていることカマジイから聞かせてもらいます。
でも嵩くんは、まだのぶちゃんには会えません。
嵩くんが朝田家を訪問したタイミングでは、のぶちゃんは高知市内で自活するために新しい仕事を探しているころです。
なので朝田家にはのぶちゃんは不在。
嵩くんは今週中にはのぶちゃんと再会を果たすことができますが、再会するのは御免与ではなく高知市内です。
そして二人の再会場面は今週中に描かれます。
戦時中は価値観の違いからすれ違いを繰り返した末に、ついに音信不通になってしまったのぶちゃんと嵩くん。
今週は、少なくとも価値観の違いは解消されています。
再会後、のぶちゃんと嵩くんの新しい関係の描写が始まるのでしょう。
生きていた健ちゃん
今週は次郎さんの死、そして千尋くんの死、つらすぎるトピックが続出しますが、そんな中で明るいトピックがひとつだけあります。
健ちゃんの再登場です。
健ちゃん、生き延びることができたようです。
ある日、柳井家に思いがけない人物が訪ねてきます。
それが健ちゃんです。
健ちゃんは復員後、故郷の福岡に帰るものの実家は全焼。
家族は無事だったようですが。
ところで、そんな状況下でどうして健ちゃんはわざわざ御免与までやって来たのか。
その理由はただひとつ。
嵩くんに会いたかった、寂しかった、ただそれだけ。
健ちゃん、相変わらず可愛い。
そして、どうやら御免与に滞在するつもりらしい健ちゃんは、嵩くんに一緒に仕事を探そうよと提案。
嵩くんと健ちゃんの共同生活が再び始まるみたいです。
ところで、健ちゃんが御免与に再びやって来ることでブログ主は気になることがあります。
それはメイコちゃんとの関係です。
今週、御免与にやってきた健ちゃんがメイコちゃんと再会するのかどうかは不明。
しかし、もし健ちゃんと再会できたらメイコちゃんはどれほど喜ぶことか。
そして、メイコちゃんも今はもう子供ではありません。
健ちゃんのメイコちゃんを見る目が変わることを期待せずにはいられません。
第18週
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のぶちゃん再生の回だった気がします。
一足先に深い喪失感から立ち直っていた嵩くんが、絶望の淵に沈んでいるのぶちゃんを引き上げた。
そんな回だった気がします。
絶望の隣は、希望。
嵩くんはその希望に気付けたのですね。
願わくはのぶちゃんも一日も早く、絶望の隣にいる希望に気付けますように。
「死んでいい命なんて一つもない。」この言葉あまりに重い。「まやかしの正義」「やっていい戦争なんて一つもない(だいたいこんな言葉だった。違ったてたらごめんなさい、) どっかの誰かに聞かせやりたい。「逆転しない正義」を探す、やがて彼のライフワークに。なおき君無事で良かった。