2025/6/2(月)第10週「生きろ」
あらすじ
草吉が朝田家を出て行きました。朝田家を去って行く前の晩、草吉は乾パン作りを頑なに拒んだ理由を釜次に語っていました。釜次は草吉から聞かされた話を、のぶと羽多子に語って聞かせました。
草吉は日本人義勇兵として欧州大戦に参戦。草吉はそこで地獄を経験しました。塹壕で空腹に耐えかねた草吉は、命を落とした兵士のコートから乾パンを抜き出し飢えをしのぎました。その体験が、草吉が乾パンづくりを拒む理由でした。
草吉が話したことを釜次から聞かされたのぶは言葉を失いました。そしてのぶは、乾パン作りを無理に頼んでしまったため草吉を傷つけてしまったと悔やんでも悔やみきれない気持ちになりました。
そんなのぶに釜次は、草吉はのぶのせいで出て行ったのではないと言って聞かせました。そんな中、草吉が残していった乾パン作りのメモを見つけた羽多子は、娘たちの手を借りながら乾パン作り続けようと動き始めました。
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感想
ヤムおじさんの過去
ヤムおじさんの過去がついに語られました。
ヤムおじさんはおそらく40代半ば。
だとすると、 1894年に勃発した日清戦争のときはまだ赤ちゃんか生まれてないか。
1904年から1905年にかけて戦われた日露戦争のときは小学生ぐらい。
日本の二つの大きな戦争とは縁のない年代です。
なので、カマジイの中ではヤムおじさんと戦争が結びつきようもなく・・・
ところがヤムおじさんは、戦争の話題が出るといつも激しく反応する。
その理由が欧州大戦=第一次世界大戦でした。
第一次世界大戦が勃発したのは1914年。
当時のヤムおじさんは二十歳前後のはずです。
ヤムおじさん本人が「若気の至り」と言ってましたが、その若気の至りで美村屋をやめてカナダへ密航。
本当はパン職人として腕を上げるつもりだったのに、地獄を見る羽目に。
ヤムおじさん、美村屋をやめてしまったことを後悔し続けているのでしょう。
美村屋で過ごした日々はヤムおじさんにとって人生の絶頂期だったかと。
だからこそ、そんな幸福な日々を思い出したくない。
思い出したくないから、美村屋の写真の話をされるといつも逃げ回っていたのかもしれません。
ヤムおじさん、欧州大戦後に帰国したとき、美村屋に戻りたかったのかも。
でも不義理を働いた美村屋に戻るわけにはいかない。
一方で、パンを焼きたいという気持ちは募るばかり。
そこで、東京から遠く離れた地で、パンを焼けそうな場所を見つけるとそこでパンを焼いていたのでしょうか。
しかし心は満たされない。
行く先々で歓迎されるわけでもない。
思い出すのは美村屋で過ごした日々のことばかり。
自分の居場所を失ったヤムおじさん、居場所を探し求めて日本各地を転々としていたのでしょう。
ヤムおじさんは戻ってくるか?
そんな中、御免与に立ち寄ったヤムおじさん。
御免与にも居場所は見つからなかったようです。
カマジイからよそ者扱いされたり詐欺師呼ばわりされたりしてましたからね。
そこでヤムおじさんは、いつもどおり御免与を立ち去り、次の町を目指して旅立とうとするときにのぶちゃんに止められました。
「どの町でもそんなこと言われたことなかったからこそばゆくてさ」と語るヤムおじさん。
ヤムおじさんが、これほどまでに喜びを素直に語るのはこれが初めて。
ヤムおじさん、のぶちゃんに引き留められてすごく嬉しかったらしい。
でも、乾パンを作ったことで昔の心の古傷が痛み始めてしまったようです。
さて、朝田家を去ってしまったヤムおじさんですが、カマジイがのぶちゃんに告げた言葉を信じたい。
「まあ、あいつのことだ、風向きが変わったらフラッと戻ってくるじゃろ」
実は、ヤムおじさんの一番の理解者は、同じ頑固職人のカマジイだったような気がします。
カマジイが「フラッと戻ってくるじゃろ」と言うのだから、きっと戻ってくるのでしょう。
戦争が終わってからのことになるかとは思いますが。
戦争が終わった後、ヤムおじさんが御免与にフラッと戻ってきますように。
そして石頭の頑固ジジイと喧嘩しながらヤムおじさんもジジイになる日がやってきますように。
今週の主なトピック
第10週「生きろ」の主なトピックは次の4つです。
1:ヤムおじさんの過去
2:米英との戦争開始の影響
3:のぶちゃんの迷い深まる
4:嵩くんに赤紙が来る
【その1】ヤムおじさんの過去
今週、隠され続けてきたヤムおじさんの過去がついに明らかになります。
戦争の話題が出ると激しく反応するヤムおじさん。
実はヤムおじさんは日清日露の両戦争時には兵役にとられない年齢設定になっています。
なのにどうして戦争の話題に激しく反応するのか。
実はヤムおじさんは第一世界大戦(当時は欧州大戦)に日本人義勇兵として参戦していました。
パンの修行のためにカナダに密航したヤムおじさん、自分の意思とは関係なく入隊を余儀なくされてしまったようです。
そして戦場では飢餓を経験。
命を落とした兵士のコートから乾パンを取り出しそれで飢えをしのいだ経験が、乾パンづくりをヤムおじさんが拒んだ理由として語られます。
【その2】米英との戦争開始の影響
今週、昭和16年(1941年)12月8日を迎えます。
米英との開戦の日です。
そして、戦況の悪化による影響が描かれます。
小麦が配給制となり朝田パンは営業ができなくなり休業。
健ちゃんが召集され入隊。
旅行と貿易のための次郎さんの船も改修され兵隊と軍需物資を運搬する船になり、航海は危険な仕事に。
そして今週、嵩くんも召集され入隊します。
【その3】のぶちゃんの迷い深まる
豪ちゃんの葬儀の際に蘭子ちゃんから「嘘っぱち」と言われ、自分が教師としてやっていることに迷いが生じ始めたのぶちゃん。
その迷いが今週に入ってますます深くなります。
のぶちゃんの迷いがはっきりわかるように描かれる場面があります。
教え子の女の子のお兄さんが出征。
お兄ちゃんは無事に帰ってくるだろうかと不安に押しつぶされそうなその女の子に、のぶちゃんは大丈夫だと言い切る。
しかしその日、のぶちゃんは蘭子ちゃんに打ち明けます。
口では勇ましいことを言ってはいるが、実は不安でならないのだと。
次郎さんが、兵隊と軍需物資の運搬という危険な航海に出ることものぶちゃんの迷いを深めることになるのかもしれません。
のぶちゃんの迷いがますます深まっていくようです。
【その4】嵩くんに赤紙が来る
今週、ついに嵩くんも召集されます。
そして嵩くんの入隊前後に注目すべきエピソードが二つあります。
まずは入隊前。
御免与で出征する日を迎えた嵩くん。
そこへなんと登美子さんがやって来ます。
これまで、母親らしい姿をほとんど見せることがなかった登美子さんが、母性愛を炸裂させるまさかの姿を、嵩くんの出征場面で見せるようです。
この場面が描かれる回は号泣回になるかもです。
そして入隊後。
妻夫木聡さんが演じる、上官の八木信之介という人物との出会いが描かれます。
この八木という人物、物語後半では、嵩くんだけでなくのぶちゃんにも影響を与えるとアナウンスされています。
詳細は不明ですが物語の後半に入ってから、とても重要なキャラとなるようです。
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『ナルニア国物語』作者のC・S・ルイスの伝記?に
「今日では二次大戦の悲惨さばかり語られるが
一次大戦も、それに劣らぬ悲惨さであった」
という意味の彼の言葉が引用されていました。オックスフォード大の学生であった
ルイスも、同窓の学生達も志願して従軍し、友人達の多くは復員しなかった、
との由。重い言葉です。
一次大戦では前線で毒ガス兵器が大規模に使われて、それは要するに
お手軽なヒロシマorナガサキでしたので、ヤムさんが体験していたら
「地獄の一丁目」だったでしょう。「お手軽」は不謹慎かもしれませんが
当時の様子を読むと、そんな感じで毒ガスを使っています。
う~ん、どうしても「あしたのジョー」金竜飛編を思い出すなあ、そして飲まなかった食わなかったことでジョーとの奇妙な友情に殉じた力石はホンモノの漢だわ
ワイの世代は梶原一騎作品からいろんなことをいっぱい学んでいる!
ヤムさんの戦争体験って、年代的にシベリア出兵あたりかと思っていたのですが、第一次世界大戦のヨーロッパ戦線だったのですね、この戦いの様子は、映画だと、ドイツ側から描いた「西部戦線異状なし」(戦前のアメリカ映画とネットフリックスのドイツ製作版あり)、イギリスの同盟軍だったフランス側から描いたスタンリー・キューブリック監督の「突撃」、イギリス側から描いた物にはステイーブン・スピルバーグ監督の「戦火の馬」、ベネディクト・カンバーバッチ主演「1917年命をかけた伝令」などがあり、それらの作品で知る事ができます。実際の状況はまた書きます。
草吉「ビスケットしかなかった・・・・乾パンしかなかった・・・・。」
死臭も漂っているに違いない塹壕の中、砲火の音に脅かされながら、死んだ仲間のポケットから乾パンを取り、それで飢えを凌いで・・・・。
今回はヤムさんと一緒に泣きました。