梅吉が香川に帰ると宣言 / ブギウギ 第48回

2023/12/6(水)第10週「大空の弟」

あらすじ

戦争で弟を亡くしたスズ子が落ち込んでいるのではないかと羽鳥は心配でした。羽鳥と久しぶりに会ったスズ子は、六郎への想いを羽鳥に打ち明けました。スズ子の気持ちを聞かされた羽鳥は、自宅での食事にスズ子を誘いました。

一方、梅吉が故郷の香川に帰って幼馴染みが経営している繊維工場を手伝うと言い出しました。スズ子は梅吉に考え直すように言いました。しかし梅吉はスズ子の言葉に耳を貸そうとはしませんでした。

そして迎えた羽鳥の自宅で食事をする日。スズ子が羽鳥の自宅に足を運ぶと、茨田りつ子も羽鳥家に招かれていました。食事を終えると羽鳥は、スズ子と茨田りつ子の合同コンサートを提案しました。

スズ子と茨田りつ子は羽鳥の提案に乗るものの、六郎の死から立ち直れないスズ子は歌を歌えなくなっていました。そんなスズ子のために、羽鳥は六郎を想うスズ子の気持ちを『大空の弟』という歌にしました。

感想

今回のスズ子ちゃんには共感できない

故郷に帰ると言い出す梅吉さん。

それに反対するスズ子ちゃん。

梅吉さんが上京してからのスズ子ちゃんと梅吉さんの対立は、スズ子ちゃんに共感することばかりでした。

ツヤさんを亡くした梅吉さんのつらい気持ちにも同情はします。

しかし、梅吉さんはもう子供ではない。

いつまでも駄々っ子のようになって、ただでさえ忙しい娘に迷惑をかけるのはどうかと思いました。

ダメな父親に振り回され、スズ子ちゃんが本当に気の毒でした。

しかし今回ばかりはスズ子ちゃんに共感できない。

今回のスズ子ちゃんと梅吉さんの対立は、梅吉さんには共感できますが、スズ子ちゃんには共感できません。

今回の梅吉さんはこれまでの梅吉さんと決定的に異なる点があります。

それは梅吉さんがシラフだという点です。

梅吉さんは酔った勢いに任せて故郷に帰ると言い出したわけではありません。

おでん屋が酒を出せなくなったことで、シラフにいるときの時間が多くなった梅吉さんは自分を振り返ったのでしょう。

しかし、スズ子ちゃんは梅吉さんの変化に気がついてはいないらしい。

楽団の仕事がなくて大変な状況なので、梅吉さんの変化に気づく余裕などないのかもしれませんが。

今回の梅吉さんには共感できる

故郷に帰りたいという梅吉さんに対してスズ子ちゃんは言い放ちました。

お父ちゃんには故郷という逃げ場所があるけれど、自分には逃げ場所がどこにもないと。

でも、よくよく考えてみると梅吉さんは故郷に逃げるなどと言っていない。

梅吉さんが次のように言ったはず。

スズ子には歌があるが、自分は東京にいても何もない。

この梅吉さんの言葉、抽象度をあげた表現にすると次のような言葉になるかと。

スズ子は歌を通してスズ子の存在を求めてくる人がいるが、自分は東京にいたところで誰も自分を必要とはしてくれない。

スズ子ちゃんは自分がお父ちゃんの面倒を見ているのだから、お父ちゃんはそれで十分なのだろうと思ったのでしょう。

しかし梅吉さんからしてみたら、誰にも必要とされない、誰にも頼られない。

これはかなり苦しい状況です。

小夜さんが娘のようになついたことで梅吉さんは心から喜んでいましたが、それは束の間の間でも頼られる存在になれたことが嬉しかったのではないか。

誰にも必要とされないのは孤独です。

梅吉さんはその孤独を自覚して、その解決策を故郷に帰ることに見出したのでしょう。

梅吉さんは故郷に逃げるのではなく、故郷に帰らなければ完全なダメ人間になるのだと悟ったのだと思います。

そのことがまだわからないスズ子ちゃん。

スズ子ちゃんが梅吉さんがわかる日はいつくるのかな？

羽鳥先生

楽劇団が解散してから出番が少なくなってしまった羽鳥先生が久しぶりに姿を見せてくれました。

そして、スズ子ちゃんと茨田りつ子が苦しんでいることを察しての合同コンサートの企画の提案。

羽鳥先生、どこまで優しいんだろう。

しかし、そんな羽鳥先生の表情は今日も暗い。

かつてチズさんから「妙に明るいおじさん」とまで言われたころの羽鳥先生が、今となっては別のキャラクターのようです。

本作の第一回では『東京ブギウギ』を指揮する「妙に明るいおじさん」の姿が登場しました。

あの姿を冒頭に見せてもらえていたのは今となっては救いでした。

いつかあの場面にたどりつくことがわかっているので。

羽鳥先生が「妙に明るいおじさん」の姿を１日も早く取り戻しますように。

予習レビューと史実のリアルエピソード

今週、梅吉さんが故郷に帰る決断を下します。

幼馴染みが家業の繊維工場を手伝ってほしいと梅吉さんに連絡してくるようです。

梅吉さんは東京にいても、自分には何もない。

大阪の家もなくなってしまった。

自分の居場所になりそうなところは故郷だけ。

そんな考えの末に梅吉さんは生まれ故郷の香川へ。

ドラマの中の梅吉さんは日本と米英開戦の直後のタイミングで故郷へ帰りますが、史実の音吉さんが故郷に戻るのはもっと後になってからのことです。

笠置シヅ子さんと音吉さんは三軒茶屋で暮らしていました。

ドラマの中ではスズ子ちゃんの部屋の窓から帝国劇場が見えるという設定ですが、三軒茶屋から帝国劇場は見えません。

その三軒茶屋の住まいは昭和20年（1945年）5月25日の空襲で消失。

その日、笠置シヅ子さんは京都で公演中だったので無事でした。

音吉さんも無事でした。

しかし三軒茶屋を焼け出されたあと、音吉さんは生まれ故郷の香川県引田に戻りました。

音吉さんは戦後、大スターになり多忙を極める笠置シヅ子さんを香川県引田に招き、ふるさと公演を実現しました。