2023/12/5(火)第10週「大空の弟」
あらすじ
六郎が戦死した知らせが梅吉のもとに届きました。その日、下宿に戻ったスズ子もその知らせを読み、六郎が戦死したことを知りました。しかしスズ子も梅吉も、あまりにも突然の知らせを受け入れることができませんでした。
翌朝、スズ子と梅吉の二人をチズは気づかい何か食べ力をつけるようにすすめました。一方の小夜は、スズ子がしばらく休むことになりそうだと団員たちに伝えました。しかしスズ子は、その日も楽団の事務所にやってきました。
スズ子はその日も働くつもりでした。しかし、それが楽団員たちを心配させてしまうことを察し、その日は仕事を休むことにしました。楽団員たちの前では気丈に振る舞っていたスズ子でしたが、小夜の前では取り乱してしまいました。
それから数日経った昭和16年(1941年)12月8日。その日の朝、スズ子は久しぶりに事務所に出勤しました。その日、日本が米英と戦闘状態になったことがラジオで報じられ、日本の勝利を誰もが疑いませんでした。
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感想
無理して明るく振る舞うスズ子ちゃん
六郎くんの戦死を事務所から帰ってきたスズ子ちゃんも知ることになりました。
スズ子ちゃんが六郎くんの戦死を知ったのが夕方でした。
そして次の場面は翌朝。
戦死を知ったその日の夜から翌朝にかけての描写は省略されましたが、チズさんがスズ子ちゃんにかけた言葉から察することができました。
スズ子ちゃんも梅吉さんも眠れない夜を過ごしたに違いない。
そして、二人が眠れない夜を過ごしていることをチズさんが察するほどの空気が下宿を包んでいたものと思われます。
六郎くんの戦死を知った翌朝、スズ子ちゃんはチズさんの前で気丈に振る舞っていました。
その日もいつもと同じように事務所に足を運びましたが、楽団員の前でスズ子ちゃんは明るく振る舞っていました。
でも、つとめて明るく振る舞うところあたりから無理していることが見えてきました。
そして楽団員たちはスズ子ちゃんがかなり無理していることを見抜きました。
チズさんの優しさも心に沁みましたが、楽団員の男性たちもみんな優しい。
その日は仕事を休むことにしたスズ子ちゃんは、事務所を出ると歌いながらステップを踏もうとするものの、足が思うように動かない。
そしてついに感情を爆発させました。
スズ子ちゃん、やっぱり無理をしてたようです。
小夜ちゃんの存在
無理して明るく振る舞っていたスズ子ちゃんが感情を爆発させたのはチズさんの前でもなく楽団員たちの前でもなく、小夜ちゃんの前でした。
その場に小夜ちゃんがいてくれてよかった。
何かとお騒がせな小夜ちゃんがいてくれてよかったと初めて思えた瞬間でした。
小夜ちゃんが頼もしく見える瞬間でもありました。
以下ちょっとだけネタバレです。
次週、東京では仕事を得られなくなったスズ子ちゃんは地方巡業を開始します。
地方巡業の旅先でも、小夜ちゃんはスズ子ちゃんを支える役割をしっかりとつとめる模様。
そして次週からスズ子ちゃんの運命の恋のストーリーも始まります。
その恋バナの始まりでも、スズ子ちゃんが間違った方向に進まないようにと、小夜ちゃんがスズ子ちゃんのブレーキをかけようとします。
前のめりになりすぎた小夜ちゃんは余計なこともしでかすようですが、ドラマの中での小夜ちゃんの存在意義がようやく見えてきました。
「臨時ニュース」
そしてついに「臨時ニュース」の日を迎えました。
ところで、これまでの朝ドラの中でのこの日の場面といえば、登場人物たちがその「臨時ニュース」を深刻な表情で受け止める描写が少なくありませんでした。
しかし今回の「臨時ニュース」の場面は違いました。
チズさん夫妻も、楽団員の面々も、街中でニュースを知った人も、みな景気が良くなること、戦争に勝つことを信じて疑っていないらしい。
特に景気が良くなると信じたのは十年前の記憶のせいでしょうか。
「臨時ニュース」の十年前、満州事変の勃発によって「満州事変景気」が生じました。
それ以前でも第一次世界大戦の「大正バブル」もあります。
今回の「臨時ニュース」への人々の反応は、最初は意外に見えました。
しかし、もしかしてこれが当時のリアルなのかもしれないなとも思いました。
実際、その日がどんな様子だったのかという話をブログ主は聞いたことがないので、上記のことは憶測に過ぎないことをご理解ください。
追記:「臨時ニュース」が意味するところが理解できないであろう小さな男の子が大人たちと一緒にバンザイする場面。
チビ六郎くんの姿と重なりました。
スズ子ちゃんもきっと六郎くんの幼少期を思い出していたのでしょう。
予習レビューと史実のリアルエピソード
今週、六郎くんの戦死の知らせがスズ子ちゃんと梅吉さんのもとに届きます。
ドラマの中で六郎くんの戦死の知らせが届くのは昭和16年(1941年)12月、日本と米英の開戦の直前のタイミングのようです。
一方の実在の笠置シヅ子さんの弟・八郎さんはどうだったのか?
弟の八郎さんは昭和16年(1941年)12月6日、現在のベトナムで戦死しました。
日本と米英の開戦が昭和16年(1941年)12月8日なので、まさに開戦直前のタイミングです。
さて、今週の後半、ドラマの中で羽鳥先生がスズ子ちゃんの弟の思い出をもとに作曲します。
曲の名前は『大空の弟』。
この曲は2019年になって楽譜が発見されました。
そして楽譜が発見された際、朝日新聞が次のように報道しました。
「ブギの女王」で知られる歌手笠置シヅ子(1914~85)が、戦時中に戦地で亡くなった愛弟・亀井八郎への思いを込めて歌った「大空の弟」の楽譜が見つかった。
引用:朝日新聞デジタル
この報道でも八郎さんが戦死したことが記されています。
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確か、「カムカムエヴリバディ」では、安子ちゃんがラジオでの英語のレッスンのあとに「開戦した」という臨時ニュースが流れていましたね
早速、羽鳥さんの訪問。スズ子さんがボロボロになっているのを気付いていたか。戦勝に沸く喫茶店の客たち、よもや4年後に東京が焼け野原になろうとは誰も思っていないだろうな。「ホンマの娘やないからな。」それ言っちゃ駄目。梅吉さん居場所がないからなあ。香川に帰るのも致し方ないかなあ。合同コンサート、羽鳥先生の深謀遠慮。だけどスズ子さんは六郎君の事をひこずって歌えない。小夜ちゃんの思いやりある言葉。でも梅吉さんの決心は堅い。歌えないスズ子さんしかし羽鳥先生には秘策が。「大空の弟」六郎君の歌。スズ子さん果たしてこの曲で立ち直れるか?
日米開戦時、僕の母は27歳の娘でした。母の話だと当時の日本人と母は「なんでさっさと米英を叩かないんだ!?」とイライラしていたとか。そして日米開戦の臨時ニュースを聴いた時は本当に嬉しかったとのことでした。なので『ブギウギ』の開戦当日の描写は極めてリアルだと思います。
最近のテレさビドラマでいつも不自然に感じるのは、ラジオのスイッチを入れると、すぐ音声が聴こえてくること。『ブギウギ』だけではなく、どのドラマでも戦前を描いているドラマではそう。しかし、1970年代まではラジオはトランジスタではなく、真空管が一般的。なので、ラジオのスイッチを入れると、真空管が暖まって、音が聞こえ始めるまで,1分以上待たされたものです。
あと、『ブギウギ』で親指を立てた OK サインのシーンがありますが、米国でも以前は OK は👌だったはず (U+1F44C; OK HAND SIGN)。日本で👍 (U+1F44D; THUMBS UP SIGN) が OK の意味で使われ始めたのはたぶん1990年代に入ってからじゃなかったかなぁ? 親指を上げて OK の意味で使っているものの一番古い僕の記憶ではトム・クルーズ主演の『トップガン』(1986) だったかも?
六郎戦死の報を聞いた後に、あの明るいテーマソング。
これは後に、愛する男を失った直後に明るい東京ブギウギを依頼したことに
つながるのか。
帰宅後のただならぬ気配。やはり、あまりに辛い知らせ。紙きれ一枚で引っ張られ、紙切れ一枚となって帰って来る。大家さんの心遣い、でも喉を通らないだろう。スズ子さん明らかに空元気。ショックで歌えない、踊れない。スズ子さんを抱きしめる小夜ちゃん、晩年の二人を思わせる。大家さんの心配も当然。運命の12月8日。小夜ちゃんは薄々負けると思っていた?スズ子さんはヤケになっている?