虎に翼

桂馬が最高裁長官に就任 / 虎に翼 第117回

2024/9/10(火)第24週「女三人あれば身代が潰れる?」

あらすじ

昭和44年(1969年)1月。桂馬が第5代最高裁判所長官に就任。寅子、久藤、多岐川は「笹竹」で桂場を祝福しました。同じ頃、娘が父親を絞殺する事件が発生。その案件が轟とよねの事務所に持ち込まれていました。

一方、世間では戦後生まれの学生たちによる学生運動が過激さを増し、東京大学では安田講堂事件が発生。そんな中、香淑の娘・薫が事件に巻き込まれて逮捕され、司法試験に合格していた香淑は薫の弁護に当たることを希望していました。

薫の件でよねと轟に呼び出された寅子は、美位子を紹介されました。美位子は尊属殺人で起訴されていました。美位子は父親との間にできた子供を生まされた上に、恋人との婚約に逆上した父親を絞殺してしまったのです。

よねは美位子の案件について、尊属殺人の重罰規定は違憲であると訴えるつもりでいました。轟も最高裁まで行くことを覚悟していました。同じ頃、与党幹事長の秘書を通じて、桂場に対してある圧力がかけられていました。

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感想

朋一くんの悲劇のフラグ

航一さんが最近の朋一くんについて、汐見さんに次のように語りました。

「最近は理想に燃えていて視野が狭くなる」
「正論を述べることと上に噛み付くことを混同」

航一さんと汐見さんのさりげない日常の会話の中で語られた朋一くんの近況。

そんな航一さんの懸念を証明するかのように、朋一くんは安田講堂事件の当事者たちへの共感を示すような発言もしました。

これは、これから朋一くんの身の上に起こることのフラグです。

とりわけ「最近は理想に燃えていて視野が狭くなる」朋一くんの状況は、朋一くんを窮地においやることに。

朋一くんを窮地においやるのはまさかの桂場さんです。

そして、桂場さんが朋一くんを窮地においやるきっかけも今回の中で描かれました。

与党幹事長の秘書に転身した反町さんが、汐見さんを経由して桂場さんに対して圧力をかけてきました。

この圧力がめぐりにめぐって朋一くんを追い詰めることに。

反町さんの登場も間接的な朋一くんの悲劇のフラグです。

これ以上のことは伏せておきますが、間も無く始まる朋一くんの悲劇のフラグが今回いくつも立ちました。

芹ヶ岳美位子

今回の冒頭の照明の消えた薄暗い部屋の場面、あれはどうやら美位子さんが事件を起こした直後らしい。

その案件がよねちゃんと轟くんの事務所に持ち込まれました。

そして保釈された美位子さんはよねちゃんと轟くんの事務所で働きながら居候することに。

この事案で、尊属殺の重罰規定が違憲だと訴えるつもりのよねちゃん。

かつて穂高教授が反対した判決を覆すことを目指すため、最高裁まで行くだろうと覚悟を決める轟くん。

原爆裁判に次いで、二人の長く険しい旅が始まりました。

ところで原爆裁判の折、この時の原告こそがよねちゃんにしか救えない人ではないかとブログ主は考え、ブログにもそう記しました。

しかし、よねちゃんにしか救えない人は美位子さんなのかもしれません。

よねちゃんがここまで熱くなるのは自分が幼少期に経験したことと重なるのでしょう。

また、間も無くよねちゃんの口から語られるとは思いますが、かつてよねちゃんは身売りされた姉を取り戻すため、これまで誰にも語らなかった経験もしています。

美位子さんの案件は最終週まで描かれ続けます。

よねちゃんのクライマックスがいよいよ始まりました。

家庭裁判所

安田講堂事件で逮捕された者のうち未成年者たちと向き合うトラちゃんとライアンさん。

トラちゃんとライアンさんは信じていました。

こうした少年と向き合えば向き合うほど更生させることができると。

そんな理想の大本は多岐川さんです。

多岐川さんが目指した「愛の裁判所」という理想を、追求しようとするトラちゃんとライアンさんですが・・・

その理想を阻むフラグが今回立ちました。

与党幹事長の秘書に転身した反町さんが、汐見さんを経由して桂場さんに対して圧力をかけてきた件がそれです。

与党幹事長の地元の名士の息子も安田講堂事件で逮捕されたらしい。

しかし名士の息子は未成年ではないので、家裁に送致されることはない。

そのことに不満を持った名士が、安田講堂事件で逮捕された未成年者たちも、自分の息子と同じ扱いをされるようにしてしまえ。

それが「圧力」の背景なのかな?

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予習レビューと史実のリアルエピソード

今週、多岐川さんが入院します。

そして、お見舞いに来たトラちゃんに対して病床の多岐川さんが懸念を示します。

少年犯罪の厳罰化が世間から求められていることが気がかりだと。

多岐川さんの入院、そして多岐川さんの懸念。

これらは史実をモチーフにしたエピソードです。

では、史実では何があったのか。

以下にまとめてみました。

多岐川さんの入院エピソードのモチーフ

タッキーこと多岐川幸四郎の実在モデルは宇田川潤四郎氏。

「家庭裁判所の父」と呼ばれた人物です。

昭和45年(1970年)6月、宇田川氏は「少年法改正問題について」という上申書を最高裁判所へ提出。

この上申書の末尾には以下のような記述がありました。

「なにゆえに、さほどまでに問題の多い改正を急ぐ必要があるのか。われわれは、その真意を理解することができない」

宇田川氏が懸念を示していたのは、少年法の対象年齢が18歳未満に引き下げられること。

18歳、19歳は青年の扱いになり、成人と同じ刑事訴訟手続きの対象になることに対してでした。

ところで当時、宇田川氏には体調の異変が生じていました。

発熱と下血を繰り返すほどの異変でしたが、宇田川氏は多忙を理由に病院には行こうとせず、登庁し続けていました。

しかし、ついに診察を受けると直腸ガンであることが判明。

二度に及ぶ手術を受けながらも、その後も登庁を続けていたと記録に残されてます。

上述の上申書を提出した翌月の昭和45年(1970年)7月。

そのころ、宇田川氏は入院していました。

そして、入院中の宇田川氏をリアルトラちゃんが見舞いに訪問しています。

病床の宇田川氏はリアルトラちゃんに対して次のように訴えました。

少年法改正と家庭裁判所が心配で死んでも死にきれない、と。

家庭裁判所の将来をリアルトラちゃんに託した宇田川氏は、その約10日後の昭和45年(1970年)8月4日に死去。

享年63歳。

多岐川さんの入院エピソード

多岐川さんが入院し、少年犯罪の厳罰化への懸念をトラちゃんに訴えるドラマの中のエピソードは以上の史実がモチーフになっています。

熱い男のドラマからの退場、寂しくなります。

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POSTED COMMENT

  1. 還暦のたつお より:

    笹竹で桂場さんの就任祝い、だけど本人相変わらず渋い顔。学生運動はピークに。薫さん逮捕。訳ありの美位子さん。美位子さんの受難。現代でもありそうな。家裁は安田講堂の逮捕者で溢れ、でもしっかりと対応、だが政治家からの圧力が。

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