2025/6/19(木)第12週「逆転しない正義」
あらすじ
岩男が村に住む少年・リンに銃撃されました。しかし岩男はリンに撃たれたことを認めず、最後までリンをかばい通しました。そして岩男は「リンはよくやった」とリンへの伝言を嵩に託すと息を引き取りました。
岩男が銃撃されたことを受け、八木は嵩に言いました。リンは両親のかたきをうつために岩男を銃撃したのだと。さらに八木は、岩男のかたきをうちたいかと嵩に問い、やり場のない怒りを爆発させました。
その後も補給路は再開せず、駐屯地の食糧難は限界に達する中で、嵩は栄養失調から倒れてしまいました。そして嵩は清の夢を見ました。夢の中で清は言いました。皆が喜ぶものを何十年かかっても諦めずに作り続けよと。
嵩が目を覚ますと、目の前に健太郎がいました。嵩が倒れた直後に補給路は再開。食糧もようやく届きました。健太郎は粥を与えながら嵩を励ましました。健太郎に差し出された粥を嵩は黙々と食べ続けました。
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感想
主題歌とオープニン映像はなし。
クレジットは最後。
今回が前半の最後の回のようです。
そして、前半の最後はあまりにもつらい回でした。
八木さん
いつもはクールな八木さんが感情を爆発させる。
いつもが冷静を通り越して冷酷にさえ見えるので、八木さんの慟哭は恐ろしかった。
占領地の良民は同胞などというのは建前に過ぎない。
決して現実から目を逸らさない八木さんだけに、建前の背後で起こっている無益な復讐の繰り返しが耐えきれなかったのでしょうか。
物語後半へのフラグ
夢の中に出てきた清さんが物語後半を暗示しました。
「お前は父さんの分も生きて、みんなが喜べるものを作るんだ」
「何十年かかってもいい、諦めずに作り続けるんだ」
後半に描かれるであろう、嵩くんが生涯をかけた挑戦のフラグが立ちました。
今回の嵩くんには、まだその実感はないようです。
生きているのがやっとの状況なのだから、戦後のことなんて考えるゆとりもないのでしょう。
でも、次週以降で清さんの言葉が嵩くんの中でよみがえってくるのかもしれません。
健ちゃん
嵩くんが目を覚ますとそこにいたのは健ちゃん。
嵩くんを見守る健ちゃんの眼差しが暖かい。
そして健ちゃんの口から聞き覚えのある言葉が出ました。
「食べり」
健ちゃんの口からこの言葉出ることで、初めてこの言葉の優しさを理解できたような気がします。
岩男くんとリン少年
リン少年の両親をあやめたのは岩男くんでした。
そのリン少年が岩男くんになつく。
そして復讐する。
復讐するが「岩男さんは僕の優しい先生でした」と後悔し涙を流す。
この複雑すぎるエピソードは、やなせたかしさんの絵本『チリンのすず』がモチーフにされているとのことです。
『チリンのすず』の概要が分かれば、岩男くんとリン少年の関係への理解も深まるかと。
そこで以下に『チリンのすず』のあらすじを記しました。
チリンの鈴:岩男くんとリン少年のストーリーのモチーフ
岩男くんとリン少年のエピソードは、やなせたかしさんの絵本『チリンのすず』をモチーフにしていること。
そして『チリンのすず』という絵本の存在。
それらをブログ主は初めて知りました。
まだご存じない方のために、『チリンのすず』のあらすじを以下に記します。
首に付けられた金色の鈴の音色から「チリン」と名付けられた子羊が、『チリンのすず』の主人公。
ドラマの中のリン少年は、子羊のチリンがモチーフのようです。
ある日の夜、オオカミの「ウォー」が牧場を襲撃します。
「ウォー」が岩男くんのモチーフなのでしょう。
語感が似ていますので。
ウォーの襲撃に遭い、チリンの母はチリンをお腹の下にかばったまま落命。
今回、リン少年が同じ状況にあったことを八木さんが語りました。
チリンは復讐を誓うものの子羊がオオカミに叶うわけもない。
そこでチリンはウォーにあえて弟子入りを志願。
やがてチリンは羊でもなく狼でもない恐ろしい姿の獣に成長。
チリンは復讐心を忘れ、ウォーを父のように思うようになる。
今回、リン少年が「岩男さんは僕の優しい先生でした」と言ったのがこれに該当。
ある日の夜、ウォーはチリンに対してチリンの生まれ故郷の牧場を襲撃することを提案し、過去を忘れたチリンは快諾。
ところが、襲撃した際にチリンの中で母の記憶がよみがえり、チリンはついにウォーへの復讐を果たす。
チリンの鋭い角に胸を突かれたウォーが最期に言う。
この日を覚悟していた、自分を倒したのがチリンであったことが嬉しいと。
これが岩男くんの最期の言葉「リンはよくやった」です。
子供向けの絵本とは思えないような残酷でリアルなストーリー。
『アンパンマン』の原作者としか認識していなかったやなせたかしさんに対して、俄然興味が出てきました。
予習レビューと史実のリアルエピソード
今週、岩男くんが最期を迎えます。
その話の前に、まずは岩男くんの近況から。
岩男くんの近況
前週の最後に嵩くんの所属する部隊が出動。
物語の部隊が中国福建省の奥地、嵩くんの駐屯地に移り、岩男くんが再登場しました。
蘭子ちゃんにプロポーズするものの、あえなくフラれてしまったあの岩男くんです。
ここでちょっとだけ岩男くんの近況のおさらい。
岩男くんは四国師団所属の工兵連隊に配属。
嵩くんがやって来る一年前に分遣され、この地にきました。
そして、野戦任務に当たっているという設定です。
なお、小学校のときもパン食い競争のときも、いつも嵩くんに対して上から目線だった岩男くん。
軍隊では幹部候補生試験に合格している嵩くんの方が階級が上で、しかも階級は絶対です。
なので、岩男くんは嵩くんに頭が上がらない。
ここまでが、前週のうちに明らかになっています。
今週、岩男くんについて新たな情報が追加されます。
岩男くんは入隊前に結婚しました。
結婚は入隊の直前のタイミングだったらしく、すでに男の子も生まれているものの、入隊後に生まれたのでまだ顔は見ていません。
岩男くんにはすでに子供がいる。
岩男くんはすでに父親になっている。
この二つの背景が効いて来ます。
リン少年
駐屯地に一年以上滞在している岩男くんに、リンという名の現地の少年がなついています。
男の子が生まれた岩男くんにとって、リン少年は自分の息子のように可愛い。
リン少年も岩男くんに父親のようになつくのでしょうか。
ところで今週は岩男くんが最期を迎えるのですが、なんと岩男くんはこのリン少年に撃たれて命を落とすのです。
朝ドラとは思えないほどの悲劇です。
どうしてそんな悲劇が起こってしまったのか。
実は、リン少年の父親は日本兵に射殺されてしまいました。
リン少年の父親はゲリラだったんです。
リン少年の父親が命を落とす際、リン少年の母親も彼をかばって撃たれてしまいました。
リン少年だけは無事でした。
しかし、その時、リン少年の家に乗り込んできた日本兵の一人が岩男くんだったらしい。
なので、リン少年は両親の復讐のために岩男くんに近づいた。
しかしリン少年は岩男くんを好きになってしまった。
リン少年が岩男くんになついたのは、本当に岩男くんのことが好きだったようです。
岩男くんの最期
岩男くんは息を引き取る直前まで、リン少年をかばい続けます。
自分を撃ったのはあの子ではないと。
そして最後の言葉は「リンはようやった」です。
これはブログ主の推測ですが、父親になった岩男くんはリン少年の父親を奪ってしまったことに苦しみ続けていた。
なので、自分が命を落とすことで、罪のつぐないができたような気持ちになったのかもしれません。
岩男くんの最期の気持ちは、実際にその場面の岩男くんを見ないことには正しく推測できません。
ただ一つ言えることは、岩男くんは「俺たちの岩男」という呼び名にふさわしい最期を迎えるようです。
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やなせたかし原作アニメ「チリンの鈴」
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2025062516449
が有ります。配信期限は 7/2(Wed) 0:47 AM
番組ページ↓を読むと絵本のストレートなアニメ化みたい
https://www.nhk.jp/p/ts/6XWXKW69J8/
> ■あらすじ
> オオカミにやさしいお母さんを殺された子ひつじのチリンは、オオカミに負けない強いひつじになるため、母のかたき・オオカミのウォーのもとできびしい修行を始めます。
> 強さとは、そして、本当の幸せとは何なのでしょうか…
大五郎はあの時に何を考えていたのか?
何かそんなこと思い出したわ、母のカタキであり父のカタキである列堂、実は自身の祖父、祖父にカタキ討ちした大五郎
真っ白に燃え尽きたジョー、昇天するラオウとならび列堂の「わが孫よ」は個人的にマンガ三大名ラストシーン
中国戦線について補足、日中戦争当初は、中国では国民政府、中国共産党、地方の軍閥が対立して半ば内戦状態になっていたので、日本が満州から中国本土へする侵攻する隙があった訳で、主な相手の国民政府軍が腐敗、弱体化していた事もあり日本軍は連勝しますが(時折、国民政府軍の精鋭とぶつかると苦戦して相当の損害受ける事もあった。)、途中から国共合作で、国民政府軍と共産党指揮下の八路軍が手を組んで日本軍に対抗したり、日本陸軍の士官学校を卒業していた国民政府の蔣介石総統は日本軍の戦術を熟知していた事もあり、戦況が不利になると、早めに部隊を次々と奥地に撤退させて、敵を自軍の有利な状況に引きずり込みました。日本軍は戦線が伸び切り補給ままならなくなならくなってきます。やがて米軍の航空部隊が参戦してくると、その基地と奥地に逃げた国民政府軍を叩くために大軍を使って一号作戦、大陸打通作戦を実行しますが、戦闘自体は勝利しますが、占領できたのが日本軍が進行した細い道とその沿線にある基地、駐屯地のいわば中国大陸の小さい点と細い線が確保できただけでした。敵はその細い道の道路や橋を破壊したり、地雷を敷設したりまた待ち伏せ攻撃も簡単にできたので、駐屯地に補給部隊が容易に行けない状況なってしまいました。それがあのドラマの状況でした。(国民政府軍も米軍式の訓練と武器の供給を受けてかなり手強い相手になっていました。)
羊と狼なら種族の違いが明々白々で、ともに暮らすのも難しいとわかるけれど、中国人と日本人なら、言葉こそ違え、見た目は似ているし、同胞という美名も使えてしまいますよね。でも、侵略であり、そこには羊と狼以上の溝があったのですね。
八木さんは「卑怯者は忘れることができる」と言いました。これって覚えているべきというバイアスがかかっているけれど、実際にチリンが忘れてウォーといっしょに生きたのは、ファンタジーだからこそだし、傍目には愚かそのものだったけど
でも本当は、リンくんもチリンも忘れる卑怯者、愚か者になれた方が良かった?
岩男もウォーも殺されることでしか購えないのですね。
岩男は我が子に会えなかったけど、子から母を奪った身として当然のことと死んでいったのかなと思うと本当に悲しすぎる。
自分の最後の食事を分け与えた老婆と対照的で、いろいろ考えさせられました。
リンの持っていたモーゼル96Cはお父さんの形見だったのですね。卑怯者では無かった岩男さんはあえてリンの復讐を受け入れた。倒れた嵩さん、彼の上舞うタンポポの胞子がなにやら象徴的。今わの際の親子の再会。「惨めでくだらない戦争」ネトウヨが騒ぎそうな台詞が出て来た。嵩さん九死に一生を得た。何とか救援隊の補給が間に合った。
やまださんのご指摘通りになっていまいました。悲しい。まさか少年がドイツ製のモーゼル96Cという大型軍用拳銃を持っていたとは。(もともと中国国民政府は、三国同盟以前のドイツから軍事援助を受けていたので、ドイツ製の武器を沢山持っていたのですが、なかでも連射が効き、拳銃にしては射程距離の長くいざとなれば小銃の替わりにも使えたモーゼル96Cは、国民政府軍にも、八路軍にも重宝されました。好評なので、中国製のコピー製品も量産されていました。
やなせたかしさん原作の絵本「チリンの鈴」ですね。母親を食い殺した狼に復讐に行く子羊の話。結局その狼に弟子入りして親子みたいな関係になるんだけど、狼が羊を食べてる姿を見て本来の目的を思い出してそれを果たす。しかし狼は満足して死にいくという