2025/6/6(金)第10週「生きろ」
あらすじ
嵩が入隊するために御免与に帰省。丸刈りになった姿を見たのぶは、嵩が出征することを察しました。しかしのぶは「おめでとうございます」と型どおりの言葉しか嵩にかけることができませんでした。
そして迎えた嵩が出征する日。嵩が御免与の町の人々に送り出されているその時、嵩の名を呼ぶ女性の声が響き渡りました。登美子でした。登美子は「卑怯と呼ばれてもいいから生きて帰って来い」と悲痛な叫び声をあげました。
憲兵が厳しい口調で登美子を制止しようとする中、のぶまでもが「お母さんのために生きて戻って来い」と叫びました。憲兵は激怒。しかし嵩が機転をきかせたことで、のぶも登美子も憲兵に連行されず、その場は収まりました。
嵩は高知連隊に入隊。入隊早々に上官から平手打ちを喰らった嵩は、軍隊生活に対して不安しかありませんでした。数日後、嵩は小倉連隊に配置換え。小倉連隊で嵩はある上等兵と出会い、その人物の威厳に圧倒されるのでした。
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感想
登美子さんが初めて見せた母性愛
前回、嵩くんが登美子さんに言った言葉が回収されました。
以下の言葉です。
「一言ぐらい母親らしいことを言ってほしい」
前回、登美子さんは嵩くんの機嫌を損ねるほど言いたい放題でした。
そんな中で嵩くんに言われた一言が心に突き刺さったのか。
嵩くんが期待したであろう言葉を登美子さんはまさかの場面で口にしました。
それか、前回の登美子さんの気持ちは次のようなものだったのかもしれません。
嵩くんを心配するような言葉を口にしたら、自分の気持ちが崩れてしまうのを恐れて、心にもない毒舌を吐き続けた。
本当は今回の言葉を二人きりの時にかけてあげたかった。
できるなら後者であってほしいと思います。
もしかすると登美子さんは、東京では本当は言いたかった言葉を言えなかったことを深く後悔したに違いない。
このまま嵩くんが戦死してしまった悔やんでも悔やみきれない。
そこで居ても立ってもいられなくなり高知まで駆けつけたのかもしれません。
色々な解釈ができるかとは思いますが、登美子さんが初めて見せた母性愛。
今までが今までだっただけにその大きなギャップに泣かされた回でした。
今週の振り返り
今週は、ヤムおじさんがカマジイに過去を語るところからスタート。
若い頃に美村屋を去ったヤムおじさん。
地獄の経験で心が壊れてしまい、自分の大事な居場所を失ったヤムおじさんが、ようやく自分の居場所を見出したのが朝田パンでした。
しかし、その大事な居場所を、心が壊れたきっかけにになった乾パンよって再び失うことに。
切なすぎるエピソードから一週間の始まりでした。
そして健ちゃんの出征。
カレーパンマンの健ちゃんの最後の晩餐はカレーライスでした。
涙を玉ねぎのせいにしてましたが、涙の本当の理由は玉ねぎではないよね。
美術学校に落ちた直後を除いていつもほがらかだった健ちゃんだけに、健ちゃんの涙は見ていてつらかった。
嵩くんと健ちゃん、生きてまた会えますように。
健ちゃんの出征に続いて、次郎さんの不穏すぎる場面の数々。
これからの航海は、これまでのように無事に帰ってこれるとは限らないと、厳しい現実を真正面から口にする次郎さん。
戦争が始まって以来、現実から目を逸らし続けているようにしか見えないのぶちゃんとは対照的です。
現実を真正面から見据える次郎さん、当時なら言ってはいけないことを言いました。
米英という大国を相手にして日本が勝てるとは思えないと。
船乗りの次郎さんは米英がどれほど大国かをよく知っているんでしょう。
次郎さんのこの一言で思い出すのは昔お世話になった人の一言。
その方は終戦の数年後にニューヨークに行く機会を得ました。
そして生まれて初めて見るニューヨークの摩天楼を目にして、こんな国と戦争をして勝てるわけがないと痛感したとか。
戦時中、アメリカがそんな大国だと知らなかったときは戦勝を信じて疑わなかったそうなのですが。
話をドラマに戻します。
次郎さんの戦争に勝てない発言をのぶちゃんはムキになって否定。
次郎さんもそれ以上何も言わないという大人の対応を選びました。
しかし次郎さんの言葉がのぶちゃんの心の中にトゲのように刺さり続けたようです。
このトゲの刺さった傷が化膿して、のぶちゃんは教師を辞めてしまうのかな?
そして、ついに嵩くんにも赤紙が。
その直後に登美子さんと再会。
言いたい放題の登美子さんに対して嵩くんが一言こぼしました。
「もっと母親らしいことを言ってほしかった」と。
その嵩くんの願いが今回、まさかの形で回収されました。
予習レビューと史実のリアルエピソード
嵩くんに赤紙が来る
今週、ついに嵩くんにも赤紙が届きます。
赤紙が届くのは大森の下宿ではなく御免与の柳井家です。
御免与の柳井家から、赤紙が届いたのですぐに戻れと電報が届き、嵩くんは自分に赤紙が届いたことを知るわけです。
そして御免与に戻る前日、嵩くんは座間先生に報告。
報告を受けた座間先生は、今日は俺に付き合えと言って嵩くんを食事に誘います。
座間先生、相変わらず生徒思いで優しい。
ところでその日、嵩くんは登美子さんと会う約束をしていました。
嵩くんは登美子さんと美村屋で再会して以来、連絡を取り合っていたらしい。
ちなみに登美子さんはすでに再婚、軍人さんと結婚したのだとか。
さて、座間先生は登美子さんも誘って食事へ。
食事の席で登美子さんは、相変わらず息子の気持ちなど考えずに言いたい放題。
嵩は軍隊には向いていないだの、なんだのと。
怒った嵩くん、座間先生にこんなことを言います。
息子を傷つける天才だと。
そんな母親らしさ皆無の登美子さんですが、嵩くんの出征直前でこんな場面を描くのは理由があるようです。
この後、登美子さんは初めて母親らしい姿を見せるのです。
おそらくその場面は視聴者の号泣を誘うかもです。
嵩くんの出征の日
嵩くんが御免与に戻ります。
そのころ、朝田パンの看板はすでになく、ヤムおじさんもいなくなっています。
すっかり様子が変わった御免与で、嵩くんはのぶちゃんと再会。
坊主頭になっている嵩くんを見たのぶちゃんは嵩くんが出征することを察するものの、のぶちゃんはご武運をお祈りしますと型どおりに挨拶しかしません。
のぶちゃん、迷いに迷っているので型どおりの挨拶しかできないのでしょう。
そして迎えた嵩くんの出征の日。
愛国婦人会の民江さんに促され、千代子さんが泣く泣く「お国のために立派に」と言いかけたその瞬間、叫び声が・・・
「嵩、死んじゃだめよ」
なんとそれは登美子さんの声です。
登美子さんが初めて母親らしい姿を見せる場面がこれです。
民江さんが制止するのを振り切ってでも嵩くんに歩み寄ろうとする登美子さん。
憲兵が非国民として連行すると言い出しても態度を変えない登美子さん。
登美子さんの図太い神経と母性愛が結びついた瞬間です。
すると、迷いに迷っていたのぶちゃん、登美子さんの姿を見て吹っ切れたらしい。
「お母さんのために必ずもんて来い!」
のぶちゃんが久しぶりにのぶちゃんらしさを発揮します。
憲兵はもちろん激怒しますが、嵩くんがその場をうまいこと丸く収めて最悪の事態は回避できるようです。
嵩くんが入隊
嵩くんが入隊し、軍隊での生活が始まります。
入隊して早々、上官から強烈な平手打ちを喰らう嵩くん。
これから始まるであろう厳しい訓練を想像して暗澹たる気持ちに。
視聴者もきっと同じような気持ちにさせられるのでしょう。
程なくして嵩くんは小倉連帯に配置換え。
そこで妻夫木聡さんが演じる上官の八木信之介と出会います。
八木さんは姿勢を正せと嵩くんに一喝。
「戦場では気のたるんでいる奴が一番はじめに死ぬ、気を引き締めろ!」
と、嵩くんは怒鳴られるのだそうです。
またしても強烈な平手打ちを喰らうのかと覚悟する嵩くんは、目を閉じて直立不動。
ところが平手打ちはなく、目を開けると八木は去った後。
決して部下たちを殴らない八木さんは、戦後に嵩くんと再会。
のぶちゃんと嵩くんの人生に影響を与えることになるのだそうで、物語後半に入ってから重要なキャラとなるようです。
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のぶちゃん、やっと本心を言えましたね。
豪ちゃんの出征で愛国に目覚めて愛国の鑑とまで言われるようになり、豪ちゃんの戦死と家族の悲しみを見て今までの考え方に疑問を感じても立場上それを表に出すことが出来なかった。
戦争がどんどん身近になってきて、疑念が膨れ上がって、その不安をやっと蘭子ちゃんに話すことができ、今日ようやく嵩くんに向かって本心を言うことが出来ました。
本音と建前の板挟みだったのぶちゃん。
でも教師として、これからどうしていくのでしょう。
たぶん昨日喫茶店で登美子さんが言いたかったのは、そういうことだったのだと思います。
言葉足らずで言い方が悪くてちっとも伝わらなかったけれど、昨日言いたかったのはそういうことだったんだと思います。
伝わらなかったから、伝えなくてはならないと思って、御免与町に嵩くんに会いにやって来たのだと思います。
嵩くんの咄嗟の執り成しで事なきを得ましたが、三人の気持ちは通じ合ったと思います。