本放送:2011年10月18日(火)
再放送:2014年4月21日(火)
再々放送:2024年10月8日(火)
第3週「熱い思い」
花言葉の花「カンナ」
あらすじ
糸子が桝谷パッチ店ではじめて働いた日の夜、仕事はたいしたことないと糸子はつとめて明るく振る舞っていました。しかし、ミシンを使えるまでの十年という時間の長さに圧倒される糸子。母と祖母は糸子のつらさを察するのでした。
糸子が心配でならない母と祖母は弁当や菓子を持たせて糸子を送り出します。しかし、糸子は朝から晩まで怒られっぱなし、桝谷パッチ店で働き始めたことでミシンがますます遠のいて行くような焦燥感にかられていました。
そんなある日、奈津が桝谷パッチ店の糸子を訪ねて来ました。想いを寄せている泰蔵の結婚の噂を聞いた奈津は、その噂を糸子に確かめに来たのでした。泰蔵に結婚をやめるように言えと詰め寄る奈津に、糸子は呆れながらも頼みをきっぱりと断りました。
ある朝、糸子は風邪をひいてしまいました。熱を出しているにも関わらず桝谷パッチ店に出勤する糸子でしたが「いない方がマシ」と追い帰されてしまいました。その言葉が胸に刺さった糸子は帰り道「あんな店やめてやる」と大泣きし始めるのでした。
感想
奈津が桝谷パッチ店にやって来た場面は糸子には実に二つの意味で残酷でした。
一つは、自分一人ミシンから遠ざけられた上で、離れたところからミシンを操作する奈津を、職人たちからちやほやされている奈津の姿を見ているだけの状況に置かれてしまったこと。
そしてもう一つは、その奈津の姿を見ながらかつて自分も奈津と同じ経験をしたもののそれが完全なぬか喜びだと嫌というほどに見せつけられたこと。
ミシンにはじめて触れて、筋がいいとまで持ち上げられて、舞い上がってしまった糸子でしたが、眼の前で奈津を相手に同じ場面が繰り返されている。
自分は特別ではなかった。むしろ、奈津のほうが高級料亭の女将という将来が約束されている分だけ、珍しがられている。
勢いで女学校を辞めてしまったことをどれほど悔やんでいるのか、筆舌に尽くしがたいものがあったかと思います。
その点、能力や資質という点でもしかすると娘より見劣りがする善作お父ちゃんですが、子供が働くなんておこがましい、勉強をしに行くと思えと「百回」も繰り返していたのは、さすが年の功。
繰り返し口にした「勉強」というのは、別の言い方をすれば「苦労」とか「辛酸」とかを覚悟しろということだったのかも知れない。
そんな気がしました。
あれほど元気いっぱいだった糸子が初めて見せる暗い表情に、さすがのお母ちゃんやおばあちゃんも前例がないほどの気遣い。
お弁当を持たせたり、金平糖を持たせたり。
部屋で懊悩する糸子を影から見守るお母ちゃん、おばあちゃんも素敵でしたが、その背後で気が気でない善作お父ちゃんの優しさにぐっと来ました。