本放送:2011年11月14日(土)
再放送:2014年5月17日(土)
再々放送:2024年11月2日(土)
第6週「乙女の真心」
花言葉の花「コスモス」
あらすじ
せっかくの上客を怒らせた上に仕事を断ってしまった糸子は、紳士服店の大将から長時間にわたって叱られました。そんな糸子を心配して、テーラー職人の川本は糸子を氷屋に誘います。糸子は意外にも落ち込まず自分の悪い癖が出たと素直に反省。
ある日の夕方、雷雨の中を再びサエが紳士服店にやって来ました。サエは打ち明け始めました。イブニングドレスのことを教えてくれた男が自分を指名しなくなった。イブニングドレスを着て変わった自分をもう一度その男に指名してもらいたいと。
サエの真剣な想いを意気に感じた糸子は一流のイブニングドレスをつくるとサエに約束。その日からサエは人が変わったように、生地選びから仮縫いまで真剣に辛抱強く糸子につきあい、ついにイブニングドレスは完成します。
イブニングドレスが完成した日、サエに請われ糸子はダンスホールに足を運びました。そこへサエの意中の男が登場、その男は歌舞伎役者の春太郎でした。「なんであいつやねん、あかんわ」・・・ちょうどその頃、奈津の父が息を引き取りました。
感想
テーラー職人の川本、彼は職人というより商人の資質がありそうですね。しかも、糸子よりも。少なくとも岸和田ではトップダンサーのサエがイブニングドレスを着用するようになればそれにつられて他の踊り子たちもイブニングドレスになびくはず。
サエの仕事にそんな将来性があることを見抜いていた川本。大将もそのへんはぬかりなく見抜いていたみたいですが、糸子が意外にもそこまで考えが及ばず、せいぜいサエが追加注文をくれるだろうくらいにしか考えてませんでした。
大事な幼馴染みの勘助をだまくらかした女に着せるドレスなんかつくりたくない。そんなネガティブな感情に心が支配されたせいで、今回に限って商機を見逃さない鋭い嗅覚が鈍ってしまったのかも知れません。
意外といえば千代お母ちゃん。試作品のイブニングドレスを着て踊り始めたのは衝撃的な出来事でした。でも考えてみれば神戸の実家の近くでは舞踏会が開かれるような洋館がある上、実家もお金持ちの貿易商なのだから決して不自然ではない。
それにしても千代お母ちゃんがあんな生き生きした表情、生き生きした動きを見せるのは35話目にして初めてですね。ほとんどずっと善作お父ちゃんが怖くてビクビクしてるだけでしたから。人生が狂ってしまってちょっと気の毒に思いました。
さて、川本のひとことで俄然やる気を取り戻した糸子でしたが、サエを眼の前にして糸子のやる気はあえなく撃沈。でも、商人としてのやる気が撃沈しただけで、職人としてのやる気まで撃沈したわけではありません。
というか糸子の職人としての矜持に惚れました。サエの中途半端な心根を叩きまくる糸子の岸和田ことばも耳に心地よい。「うちは本気でつくるんや、本気で着てもらわな嫌や、あんたになんかつくらへん、さっさと着替えて帰って!」
前回でいつの間にか大人になっていた自分を振り返り、今回は大人全開の糸子でした。
東京や心斎橋と比べたら小さな商圏ながらもトップの踊り子になれるだけのことはあり、糸子の職人としての矜持がサエの心を揺さぶったようです。あれだけ罵られたにも関わらず再び紳士服店に姿を現したサエ。
そんなサエには意中の人が。大成した人物で、サエの踊りは他の女のそれとは違うと言ってくれたとか。修行を積めばもっといいところまでいけるとまで言ってくれたのに、何の行動も起こさず適当に男の相手を続けていたことを悔いるサエ。
漫然と男の相手さえしていればそこそこの日銭を稼げる。勘助みたいな世間知らずの子供を騙せば日銭を稼げる。そんな心根が見透かされたのか、意中の男は自分を指名してくれなくなった。しかし悔やんでばかりいないで行動を開始したサエ。
そんなサエのリベンジにほだされた糸子。「ようわかった、あんたみたいな阿呆ほどうちはやる気出る、ほんまの本気でドレスつくっちゃる、一流のドレスつくっちゃる、うちのドレスに釣り合うだけの踊り子になり」
また自分を変えて意中の男の前に再び出たいと思うものの、そう簡単に変われないと一歩を踏み出し切れないサエの背中を押す糸子。「変わるわ、人は着るもので変わる」と断言した糸子の言葉はサエには何よりの励ましになったはず。
糸子、前回に引き続き「男前」です。ガシッと握手する糸子とサエ。でも握り合う手と手を暗闇に隠し落雷の閃光で一瞬だか浮かび上がらせる演出が小粋でした。真っ正面から握手を見せられたらちょっと暑苦しかったかも。
糸子と駒子の関係が女子会なら、糸子とサエの関係は男子体育会系。男子体育会系の乗りで意気投合した二人の合作とも言えるイブニングドレスはついに完成。初披露で意中の男もやって来る日のサエ、糸子に来てほしいと弱気になるとこが可愛い。
そして意中の人がついに登場。映画『インディジョーンズ』シリーズの二作目で、上海に出没するインディみたいな登場のしかたで颯爽と姿を現したサエの意中のその人は・・・なんと女たらしの歌舞伎役者・春太郎だった。
あまりにも意表をついた、想像すら出来なかったオチに腰を抜かすところでした。脱力した糸子の「なんであいつやねん、あかんわ」の台詞がしばらく耳について離れそうもありません。