本放送:2012年1月14日(土)
再放送:2014年7月12日(土)
再々放送:2024年12月28日(土)
第15週「愛する力」
花言葉の花「ベニバナ」
あらすじ
奈津を救おうと糸子が久しぶりに訪ねた玉枝は二人の息子を失ってからすっかり衰弱し寝込んでいました。糸子はパンパンになった奈津を救えるのは玉枝しかいない、助けてほしいと涙ながらに懇願しますが、玉枝から断られてしまいます。
それから数日後、仕事中の糸子に玉枝から電話が来ました。今から奈津の元を訪ねるから迎えに来て欲しいと言うのです。玉枝は孫の太郎に背負われ糸子の案内で奈津の住む家に向かいました。
奈津は玉枝の顔を見ると素直に家の中に招き入れました。玉枝が泰蔵と勘助の戦死を告げるや火がついたように泣き出す奈津。家族をすべて失いたった一人で生きて来た奈津の艱難辛苦を労る玉枝の言葉に奈津は涙が止まりません。
玉枝を見送るため家から出て来た奈津の目が、糸子には穏やかさを取り戻しているように見えました。それから数日後、背広の仕立てを終え周防がオハラ洋装店を去る日が来ました。糸子は去って行く周防の後ろ姿に深々と頭を下げるのでした。
感想
玉枝さんが久しぶりに登場。うす暗い部屋で昼間から布団に伏せている玉枝おばちゃん、すっかり衰弱しきっているようです。かつては糸子に猛烈な怒りを抱いていた玉枝おばちゃんですが「糸ちゃんか」の第一声でわだかまりがほぼ消えたように思いました。ひと安心です。
そんな玉枝おばちゃんにのっけから「助けてほしいんや」と糸子。奈津はおばちゃんにしか救えない。奈津は昔からおばちゃんにだけには弱いとこ見せる。信じてやおばちゃん、おばちゃんだけが奈津を救えると、涙ながら懇願。
しかし「うちはこの通りボロボロのクチャクチャや」と拒否。人のことを考えられる余力をほとんど失うほど弱り切っているらしい玉枝おばちゃん、断るのも無理はありません。糸子もそれを承知しているのでしょう、「帰って」の一言に素直に退室。
でも、玉枝おばちゃんはやっぱり玉枝おばちゃんだった。大切なものを失ったのは自分だけでないと改めて気付いたのか、それとも自分と同様にたった一人の境遇の奈津を想うといてもたってもいられなくなったのか。
太郎に背負ってもらえなければ外に出られないほどの衰弱ぶりですが、それを押して奈津のもとに向かう玉枝おばちゃん、奈津はすんなり受け入れたみたいです。糸子の読みは当たりました。さすがの洞察力です。
そして奈津の心を開くのに、玉枝おばちゃんは多くの言葉を必要としませんでした。というより玉枝おばちゃんがそこにいるだけで、天涯孤独となった奈津には十分だったのかも知れません。
泣くだけ泣いて憑き物がとれたようになる奈津。外に出て来て糸子と顔を会わせた奈津は一言も言葉を口にしませんでしたが、あんなに静かな眼差しは幼少期を含めてはじめて奈津が見せるものかもしれません。子供の頃からギラギラしてましたからね。
糸子のほうも奈津に何も言いませんでした。糸子と奈津が対面すれば激しい言葉の応酬とガンの飛ばし合いがつきものでしたが、静かに見つめ合うだけで言葉を交わさない。二人の関係は明らかに変化しました。