本放送:2012年1月13日(金)
再放送:2014年7月11日(金)
再々放送:2024年12月27日(金)
第15週「愛する力」
花言葉の花「ベニバナ」
あらすじ
周防は朝早くからオハラ洋装店に通い、黙々と背広の仕立て作業をこなしています。寡黙ながら誠実な周防の人柄に惚れ込んだ千代は、周防が妻子持ちであることが残念でなりません。
そんなある日、糸子は木岡と木之元から借金で夜逃げしたまま姿をくらましたままの奈津がパンパンと呼ばれる女になっていると告げられます。奈津のことが気になる糸子は仕事も手につきません。
背広のボタンを買いたいと言い出す周防。糸子は周防を闇市に案内し、糸子の姿を探しました。するとパンパンの元締めらしき男の存在に気付いた糸子は、闇市から家に帰るらしいその男を尾行します。
尾行した先で糸子が眼にしたのは一目でパンパンとわかる奈津でした。糸子は奈津を怒鳴りつけるものの、取っ組み合いの末逃げられてしまいます。奈津を救いたい糸子は、安岡髪結い店の玉枝のもとに足を運ぶのでした。
感想
戦時中に食料泥棒をはたらいた奈津をかくまった男。奈津の顔を見るなり「べっぴんやないか」とその男は言いました。男の第一声に嫌な予感がしていたのですが、残念ながらその予感は的中。どうやらパンパンの元締めのようです。
戦時中には当然「パンパン」なんて言葉はないですが、同様の職業はあったはず。この男はその頃からそれを生業としてきたのでしょうか。そんな男に出会ってしまい身を持ち崩した奈津の哀れな姿。かつは立派なお屋敷に住んでいたのに。
そんな奈津の落ちぶれた姿を初めに目撃したのは木之元のおっちゃんと木岡のおっちゃん。目撃してすぐに糸子に知らせるなんて、さすが二人のおっちゃん、糸子のことをよくわかってます。
そして糸子はついに奈津を発見。平手打ちを食らわし「借金残して夜逃げして何やってる!」と殴り掛かる糸子。夜逃げ直後に歯がみして悔しがった糸子、あの時の悔しさと悲しさが一瞬にして蘇ってきたんでしょう。
しかし「あんたに関係ない」と激怒し逃げ去ってしまう奈津。「あんたに関係ない」なんて、いつも一人で生きてるつもりの奈津、相変わらずですね。一人で生きてるつもりになっているのが奈津の最大の弱点かもです。
さて、これ以上ないほどに落ちぶれた奈津を、それでも諦めずに救いたいと心の底から願う糸子。あれだけ仲が悪かったはずなのに、今回も顔を思いっきり鞄で殴られたのに、それでもこの愛情。一体糸子の心はどんな構造をしているのか。
糸子の水玉模様のワンピースに、なかなか立ち直れなかった心が救われたと語る周防。でも、奈津の落ちぶれた姿を見てしまった糸子は、水玉模様のワンピースくらいでは奈津を救えないと苦悩。
水玉ワンピースを着て「生まれ変わる」ことが出来たサエと、それでは救えそうもない奈津のコントラストは残酷なほど。
「うちは夢をつくりたかった。戦争で受けた傷を忘れて新しく生まれ変わる、そういう夢。服に託したうちの夢は女の人に届いたと思う。しかし、服は服。しれてます。どん底にいる人を助けたいと思ったら服でなく、自分の手しかない」
糸子の独白、糸子らしからぬ静かな語り口。その静かさが眼の前の問題の大きさ、深刻さを雄弁に物語っています。まったくすごい演出です。
「力を下さい、怖いけどがんばりますよって」と、奈津の救済を心に決めた糸子が足を運んだのは、安岡髪結い店。八重子さんの顔を見るなり「おばちゃんいてるけ?話しがあるんや」
そうえいば玉枝さんは奈津の唯一の理解者。奈津が唯一心をゆるしているのが玉枝さんでしたね。本当だったら糸子としては玉枝さんに会いたくないところなんでしょうが、糸子、緊急事態モードに入っています。