本放送:2011年10月5日(水)
再放送:2014年4月9日(水)
再々放送:2024年9月25日(水)
第1週 「あこがれ」
花言葉の花「ひまわり」
あらすじ
吉田屋に集金に出向いたものの金は明日払うと追い返されてしまった糸子は一計を案じました。店先で今日払ってもらえないとご飯抜きになるとひと芝居打ち、客の同情を買って集金に成功する糸子。
父・善作は喜ぶものの、糸子が男の子だったら商売を仕込んで岸和田一の呉服店にしたかったと残念そうに糸子に語ります。しかし、女でも同じことが出来るはずだと、父の言葉がどうしても納得できない糸子でした。
大正14年正月。糸子は妹たちとともに母・千代に連れられ、神戸にある千代の実家に年始の挨拶に行きました。千代は善作に代わって父の清三郎に、呉服店の支払いに当てるための借金を申し込んでいました。
一方で、家に飾ってある舶来の陶磁器のドレスの美しさに見とれる糸子。もっといいものがあると従兄弟の勇に誘われ足を踏み入れた近所の洋館で、糸子は外国人の舞踏会を覗き見。婦人たちが身にまとう美しいドレスに糸子は心を奪われてしまうのでした。
感想
料亭の吉田屋まで集金に行ったものの明日払ってやるからと追い返されてしまった糸子。追い返される時に「うちは子供の使いじゃあらへん」と言い放った覚悟は口先だけのものではなく本気の覚悟でした。
事前に吉田屋の親父は手強いから頭を使えと善作お父ちゃんから言われていた糸子。吉田屋までの道すがら、一度は追い返されるだろうことも想定していたのかも知れません。追い返されたときの次の一手はもしかすると事前に編み出されていたのかも。
それにしても、吉田屋の親父からまんまと支払いをせしめた糸子の策略の秀逸なところは、商売人と顧客の関係を深く理解していたところ。特に一見さんでなく得意客の贔屓で商売が成り立っているような高級料亭ではお客さんの声には逆らえない。
商売人と顧客の関係をここまで深く理解しているということは、善作お父ちゃんの言うとおり末は豪商ですね。でも、それを許さない時代だったのでしょう、あの当時は。善作お父ちゃんの寂しい気持ちも痛いほどよくわかります。
さて、物語の舞台は一転、千代お母ちゃんの神戸の実家。お金持ちの実家の家も調度品もおせち料理も、みんな美しくて見ているだけでも楽しめます。集金に行った吉田屋も高級料亭だけに美しい映像の編成が眼に嬉しいものでした。
眼に嬉しかったのは最後に出て来た洋館の舞踏会。婦人たちが奇麗に着飾ったドレスに心奪われる糸子、大工方に引き続いて憧れの対象が出て来ましたが、こちらはライフワークとなってゆくんでしょうか。
この場面、糸子が見とれていたドレスのいずれもが美しいものでしたが、それ以上にドレスに心奪われうっとり見とれている糸子の輝く表情が何よりも美しく、その美しさにはうっかり涙腺がゆるんでしまうほどでした。
初回の迫力ある岸和田だんじり祭りと言い、吉田屋や神戸の実家、そして今回の最後に登場した洋館の舞踏会などなど、色彩も動きも豊かな映像は是非とも映画館の大スクリーンで見てみたい。
本作『カーネーション』は、脚本の話術の巧みさやキャラクターの面白さに加えて、美しい映像によって眼で楽しむ要素も満載。主題歌の椎名林檎の透明感ある歌声は耳にも心地よく、贅を極めた作品だと思ったことでした。