本放送:2011年12月7日(月)
再放送:2014年6月9日(月)
再々放送:2024年11月25日(月)
第10週「秘密」
花言葉の花「ヒメウツギ」
あらすじ
昭和16年12月、米国との戦争がはじまったばかりのある日、澤田ら国防婦人会の女性たちがやって来て、この期に及んで着物を着るのかと糸子を一喝。モンペを着るように糸子に強制して帰って行きました。
洋装店には洋装店の意地があるとモンペを拒んでいた糸子ですが、モンペを試着してみるとその動きやすさにすっかり魅了されてしまいます。客の一人がモンペのお洒落の工夫を披露、糸子は戦争中のお洒落魂を見せてやろうと意気込みます。
そんなある日、勘助が再びお菓子屋に勤め出したと知った糸子は、勘助を元気づけようと踊り子のサエを呼び出し勘助に会わせます。しかしサエの顔を見た途端、勘助はパニック状態に陥ってしまうのでした。
その夜、雨の中を玉枝が糸子を訪ねて来ると「勘助に何をした」と怒鳴りはじめました。混乱した勘助は二階から飛び降りようとしたのです。激怒した玉枝は、糸子の図太さは今の勘助には毒だ、金輪際勘助に会うなと言い捨てて去って行くのでした。
感想
昭和16年12月8日、日米開戦のニュースを聞いた糸子は「大東亜戦争ちゅう戦争が始まった、終わるどころかまたはじまりよった、さっさと終わらんかい」と、腹立てる。どんな反戦の美辞麗句より説得力ある一言。
しかし、戦争する為政者の心理を子供の頃に将棋をしていた善作たち商店街のおっちゃんたちの姿に重ね合わせ「男が一旦勝負にのぼせ出したらちょっとやそっとじゃ収まらない」鋭い観察眼。
嫌がっていたモンペも着てみると動きやすくて悪くない。しかも近所のおばちゃんがモンペのお洒落のしかたを披露。モンペでお洒落を追求しようと実に柔軟な発想の糸子。困難な時代に迎合もせず反発もせず風がどっちから吹こうが上手に乗り切る。
そんなしたたかで図太い糸子ですが、他の誰にも無いそんな長所が今回は裏目に。ちょっと元気が出て来た勘助をもっと元気づけようと、かつて勘助が惚れてふられた踊り子のサエを呼び出して勘助と会わせる。
決して悪気はなかった、というか勘助が元気になってほしいという一心からやったことだけれど、勘助みたいなへたれの人間、弱い人間の心には疎かった。弱い人間が弱り切った心の状態がどんなものか、ちょっと想像力が足りなかった。
サエの顔を見るやパニック状態に陥り店を飛び出す勘助。必死に追いかけた糸子が河原で見た勘助は、異常と言えるような泣き方をしている勘助。『カーネーション』はじまって以来の見ていて苦しい場面でした。
しかも、その後に勘助は二階から飛び降りを図る。自らの命を絶とうとしたのか、パニック状態で自分が何をしているのかわからなくなったのか。雨の中をやって来た玉枝さん、息子を傷つけられた母の怒りはすごかった。
「世の中はみんながあんたみたいに強いわけじゃない、しかし生きて行かなければならないのでどうにかやっている、その気持ちがわかるか?」糸子の盲点をつかれてしまいました。