本放送:2011年12月18日(金)
再放送:2014年6月20日(金)
再々放送:2024年12月6日(金)
第11週「切なる願い」
花言葉の花「カスミソウ」
あらすじ
糸子は泰蔵が出征することを善作に告げました。そして迎えた出征の日、善作は泰蔵の見送りにリアカーでなく自分の足で行くと言い出します。善作の身体を案ずる千代は反対するものの、言い出したら聞かないからと糸子は善作を歩かせます。
ささやかな送別会を珈琲太鼓で開いているところに善作が到着。泰蔵には自分のおこしたボヤで火傷したことを正直に告げる善作でした。泰蔵が出発、力限りの声で万歳を叫び倒れた善作を介抱する糸子は、物陰で涙する奈津の姿を眼にします。
木之元に背負われ善作は家に戻ります。善作の容態悪化に泣きじゃくる千代を、泣くなと一喝する糸子。しかし、弱った身体で無理をしたことがたたり、衰弱した善作は疥癬に。木岡のリアカーで心斎橋の病院に連れて行かれる善作。
糸子は善作を絶対に治すと自分に誓いつつ、家事と商売にも全力で取り組みます。そんなある日、八重子がかつて百貨店の制服の参考にしたファッション誌を持ってやってきました。糸子は、写真を見ながら人々が洋服を来ていた頃を懐かしむのでした。
感想
泰蔵兄ちゃんの出征を善作お父ちゃんに伝える糸子。この場面、音声はなく映像だけでしたが、善作お父ちゃんの神妙な表情ですべてを察することが出来ました。勘助の時は、みんなで日の丸を振って元気に万歳。
それから4年。糸子のナレーションの言葉を借りれば「みんな戦争に行く意味がわかった」。日露の戦役に出た善作お父ちゃん、勝ち戦に出た人だけに勘助を明るく楽しく送り出しました。
でも状況が変わってしまいました。勝さんの時もそうでしたが、勝ち戦に出た善作お父ちゃんですら、かつて勘助を見送ったようには泰蔵兄ちゃんを送り出すことは出来ません。もう帰って来れるなんて軽口もたたけません。
勘助の頃とは異なる意味を持った出征、善作お父ちゃんはリアカーで見送りに行っては泰蔵兄ちゃんに申し訳ないと思ったんでしょうか。しかも、泰蔵兄ちゃんには火傷のことを正直に語り、掛け値を残しませんでした。
善作お父ちゃん、困った人だなと辟易させられる時期もありましたが、こういう時は至って真面目。隣近所の家の倅であっても、家族同然、勝さんと同様に真剣に送り出す善作お父ちゃん、あなたは立派です。
でも無理がたたって万歳を叫んだ直後に倒れてしまいました。家に担ぎ込まれた時、千代お母ちゃんが珍しく本気で怒ってましたね。その後は、ただただ泣きっぱなしでしたが。千代お母ちゃんの怒り、迫力がすごかった。
話しが前後しますが、物陰から泰蔵兄ちゃんをそっと見送る奈津の映像が切な過ぎです。今もまだ子供の頃から好きだった泰蔵兄ちゃんへの想いが断ち切れていなかったんですね、いつも突っ張っている奈津ですが。
父親が亡くなったタイミングと重なり祝福される機会のないまま結婚。しかし、その相手は奈津が働き者なのをいいことにまともに働こうとせず、ついには芸子と姿をくらます。実に不幸な結婚をした奈津。
もし、泰蔵兄ちゃんと一緒になれたらどれほどの人生が変わったかとそんな思いもあるでしょう。その泰蔵兄ちゃんが出征し、最早、生きて帰って来れるかわからない。そんな別れなのに堂々と見送ってあげられないそのつらさ。
八重子さんが精一杯の笑顔で「行ってらっしゃい、家のことは任せてください」泰蔵兄ちゃんも三人の息子たちに「お母ちゃんをよお助けるんやで」。この二人の別れ、奈津には眩しかったことでしょう。
さて、万歳と叫んで力尽きて倒れてしまった善作お父ちゃん。こんな状況でも強い糸子「うちが絶対治したる、なにがなんでもあの元気でやかましいお父ちゃんに戻しちゃるよってな」と決意を固める。
でも、清三郎おじいちゃんと貞子おばあちゃんが神戸から見舞いにやって来た直前の「すべてが灰色に見える」状態に戻りつつあるような気がします。看病、家事、商売。糸子はこの苦境をどのように乗り越えるのか。心配です。