本放送:2012年2月4日(土)
再放送:2014年8月2日(土)
再々放送:2025年1月25日(土)
第18週「ライバル」
花言葉の花「ロベリア」
あらすじ
東京の洋裁学校の優子の教師・原口が小原家にやって来ました。千代は結婚の申し込みに来たと勘違いしうろたえるばかり。一方、店に置いてある生地が上等なものであることを指摘され、糸子は原口と意気投合します。
その夜遅くまで、原口の「デザイン」についての話しに聞き入り、優子がかぶれるだけのことはあると糸子は納得。その晩、小原家に泊まることになった原口は直子の描いた絵の才能に驚き、その後朝まで原口と直子は絵の話しをし続けました。
出発間際、直子の進路を尋ねる原口。店は姉が継ぐから自分は画家になるという直子に、原口は自分の店を持てばいいと助言。その言葉に直子は自分の歩むべき道を見いだし、高校卒業後は東京に行かせてほしいと糸子に手をついて頼み込みます。
昭和33年(1958年)正月。優子が里帰り、静子も長男長女を連れて小原家に新年の挨拶に来ました。直子の上京を優子は激しく拒絶。優子が拒絶するのは自分の才能が怖いからだと直子は言い放ち、優子を泣かせてしまうのでした。
感想
直子が絵の道を改め母や姉と同じ道を選ぶことになるその動機がずっと気になっていました。母の愛情のシェア争いで姉の優子に打ち勝ちたいあまり、母と姉の歩む道を自分も選ぶことになるのかな・・・?
そんなふうに想像していたのですが、優子の師匠・原口先生から才能を認められた上に、その原口先生から「母の継がないで自分の店を持てばいい、それはそれでカッコいい」と背中を押されたのが引き金。
母の愛情のシェア争いもあったのでしょうが、母の店を継ぐのではなく自分の店を持つという独自路線。しかもそれを「カッコいい」とまで言われてしまったら、直子の闘争心に火がつかないわかがない。
優子が美大進学をやめて専門学校に入学した前後からこの方、ずっと優子の優越感の前に旗色を悪くしていた直子でしたが、原口先生に背中を押された一件以来、形勢逆転の兆候が。
優子は形勢逆転の兆候に誰よりも早く反応。直子の上京をこれといった理由もなく頑なに拒絶したのは風向きが変わりつつあるのを敏感に察知したからでしょう。風向きに変化をいち早く感じ取ったのは直子も同じかも知れません。
直子の上京に反対する優子に強烈な鉄槌「姉ちゃんはなうちの才能が恐いんや」。直子が優子に口で真っ正面から反撃するのはかなり久しぶりかも知れません。風向きが変わった今がチャンスと思ったんでしょう。
風向きの変化を察知する能力は商人に必須ですから、その点では優子と直子は安心ですね。そして風向き察知能力ではこの二人に勝るとも劣らない糸子。二人の間の風の方向の絶えざる変化に「優子が笑ったら直子が泣き、直子が笑ったら優子が泣く、手に負えん」
風があっち向きに吹いたり、こっち向きに吹いたり。そんな中、僕が一番気になるのは「どこ吹く風」の聡子の行く末です。
確かに糸子は客の流れには敏感でしたが、こういう心理戦は疎いのでは?
片方が泣いているのは見れば誰でもわかる事ですし…。
一方、原口先生は直子の中にくすぶっている本心を巧みに
引き出していく様、名フィクサーぶりが光ります。
優子と直子を交互にキャラ立てした週でしたが
縦のラインで見ると、やはり糸子と対になる形での優子が大事。
糸子は子供時分から度胸と機転に「お父ちゃんより商売にむいとる」と
太鼓判を押され、その通りだったのに対して「アンタは絵が上手い」と
褒められた優子は直子の台頭でその才能に二流の烙印を押されてしまう。
そして直子が生まれる直前の善作の「今度こそ男や。小原の跡取りや」。
これは糸子が自らの意思で背負い込んだ重荷を可愛がっている優子に
背負わせる意思が全くない事を示しています。ところが糸子は
そこそこの才能しか持たない優子にそこそこ以上の生き方を要求し、
優子はそれに抗う気概も持てず母の跡を継ぐ(=糸子の影)という
選択肢しか選べない。第99回で千代さんに慰められていた場面の
子供部屋の薄暗さが優子の立ち位置を示しています。
ここでポイントは第11回。神戸に赴いた善作が清三郎に
「これからは洋服の時代や。お前みたいな呉服屋、もって後5年」
と宣告され、陽射しの中で洋服を着た祖父や従兄と戯れる糸子を
部屋の陰から生気の抜けた表情で見ていた場面。
優等生といえば聞こえはいいですが二流の才能しか持たず、才気あふれる
怖いお母ちゃんとゴッツイ妹の狭間で姉のプライドを保とうと
背伸びしている凡人にして、糸子の影という立ち位置の優子こそ、
松坂家と糸子に挟まれ娘の影になっていった商才に乏しい善作の後継者。
(善作の影響を優子一人に絞っていたのもこのため)
しばらく優子はイタイ言動が続きますが、これが家長の威厳を保とうと
威張り腐っていた善作と同種の弱さの裏返しな事を感じられるか否か。
長女が長女と君臨するのは当たり前だった糸子を基準に見ていては
優子の内面は解り辛いのですが、「カーネーション」は糸子の一代記である
以上に糸子と善作の物語であり重要になってきます。
今回も原口先生と糸子が意気投合の件。一見、何気ない場面ですが、
先の優子の担任が娘を褒めても聞き流していたくせに
父に鍛えられた生地の目利きを褒められると感謝感激。
その場、その場で娘の事を見て考えたつもりになった所で
糸子が最優先で意識を向ける相手は善作になってしまっている。
しかし優子を可愛がっていた善作が、それを喜ぶか?
こういう描写も後々、伏線になっていきます。