2024/7/4(木)第14週「女房百日 馬二十日?」
あらすじ
穂高が最高裁の判事を退任することになり、祝賀会が開かれることになりました。そんな中で寅子は、祝賀会の手伝いを桂場と久藤から頼まれました。本音は断りたい寅子でしたが、桂場の依頼を引き受けることにしました。
一方で寅子は担当する離婚調停中の夫婦の息子・栄二のことが心配でした。両親は相変わらず親権を放棄すると主張し続けていました。一方の栄二は心を閉したまま口を聞こうとはせず、寅子にはなすすべがありませんでした。
そして迎えた穂高の退任の祝賀会の日。会場には、寅子、桂場、久藤、多岐川たちが集まりました。その祝賀会の挨拶で、穂高は理想を成し遂げられたなかった自分のことを「雨だれのひとずく」と表現しました。
寅子には穂高が口にした言葉を受け入れることができませんでした。寅子の目には穂高が理想を諦めたように映りました。寅子は穂高に対して落胆した気持ちをぶつけると、その場を立ち去ってしまいました。
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感想
今回はトラちゃんの中にある「理想」がテーマでした。
多岐川さんの理想
家庭裁判所は、少年部と家事部が合併し、二つの組織が一つになって家庭の問題に向き合うという理想を掲げて発足しました。
ドラマの中で二つの組織が理想を共有することができたのは直明くんの活躍によるものでした。
しかし、あの時の感動はどこへ行ってしまったのか?
前回から今回にかけて、少年部と家事部が一つにならないことに対してトラちゃんが悶々とする姿が描かれました。
理想と現実のギャップに苦悩するトラちゃん。
ところが、多岐川さんが思いがけないことを言いました。
少年部と家事部が一つになれないのは、理想と理想がぶつかり合っているからだと。
多岐川さんの言葉、実に深い。
多岐川さんの言葉に対してトラちゃんが問いました。
理想と理想がぶつかり合って、どうやって理想は達成できるのかと。
その問いかけに対する多岐川さんの回答はごもっとも!
「それが分かれば家裁の理想をとっくに達成している」
この返答にトラちゃんは深く落胆。
トラちゃんはきっと、多岐川さんはもう理想を放棄したのではないか。
そんなふうに考えているに違いない。
しかし、多岐川さんは理想を簡単に放棄するような人物ではない。
そう信じたい。
トラちゃんの考えも及ばぬ深い、または高いところで、多岐川さんは理想を追求しているような気がします。
もしそうだったとしたら、多岐川さんはいつどのような形で理想を達成するのか。
また、多岐川さんの深淵な理想を、トラちゃんはいつ理解できるのか。
そもそもトラちゃんは多岐川さんの理想を理解する日が来るのか。
離婚調停は朝ドラらしからぬエグい展開を見せていますが、その一方でトラちゃんと多岐川さんの理想談義もまた、朝ドラらしからぬ深いテーマでした。
穂高教授の理想
多岐川さんの語る理想にまで考えが及んではいないらしいトラちゃんが、今度は穂高先生と正面衝突しました。
穂高先生も理想を追い続ける人生を送ってきた人でした。
戦前の旧民法に異を唱え、女子学生に法律を学ぶ道を開き、最近でも「尊属殺の規定」は合憲という判断に反対の立場を取っていました。
すべて理想の追求のためです。
しかし、理想を追求する穂高先生は常に少数派の一人でした。
少数派ながら実現できたこともあったでしょうが、少数派ゆえに達成できなかった理想の方が多いに違いありません。
少数派ゆえに達成できなかった理想も、では多数派は理想と反対方向のことを目指していたかといえばそうではないかと
多数派には多数派の理想があり、多岐川さんの言葉を借りれば「理想と理想のぶつかり合い」を穂高先生は経験し続けてきたのでしょう。
そんな穂高先生は自分のことをやや自虐気味に「雨だれのひとずく」と表現しました。
トラちゃんはこの言葉が許せなかった。
穂高先生は、理想に対して自分は無力だったとあきらめたように映ったらしい。
そして「無数の雨だれのひとずく」を生み出したとまで言いました。
しかし「雨だれのひとずく」もそれが無数になれば岩に穴を開けるわけです。
法律の道が開かれた女子たち「無数の雨だれのひとずく」も、それが積み重なれば理想を達成できる。
穂高先生はそんなことを言いたかったような気もします。
トラちゃん、どうしてあんなに怒ったのかな?
予習レビューと史実のリアルエピソード
リアルトラちゃんと再婚相手との馴れ初め
昭和25年(1950年)7月。
リアルトラちゃんが、米国の家庭裁判所の視察旅行のために訪米しているとき、最高裁初代長官の三淵忠彦氏が亡くなりました。
三淵忠彦氏の訃報をリアルトラちゃんは米国に滞在中に知りました。
視察旅行を終えたリアルトラちゃんが帰国したのは昭和25年(1950年)8月のことでした。
帰国するとすぐに神奈川県小田原の三淵家を訪問。
リアルトラちゃんの訪問を受けた三淵忠彦氏の奥様・静さんは、リアルトラちゃんのことをすっかり気に入ってしまいました。
この訪問がきっかけとなりリアルトラちゃんと三淵家の人々との交流が始まりました。
その三淵家には奥様をすでに亡くした独身の長男がいました。
その長男の名は三淵乾太郎。
ドラマの中で岡田将生さんが演じる星航一の実在モデルと思われる人物です。
三淵乾太郎氏は、リアルトラちゃんより8才年上。
亡きお父上同様にご本人も裁判官。
リアルトラちゃんと三淵家の人々との交流の中で、リアルトラちゃんと三淵乾太郎氏はお互いに意気投合したのではないかと言われています。
リアルトラちゃんと三淵家の人々との交流が始まったのは、昭和25年(1950年)8月から数ヶ月以内のタイミング。
昭和27年(1952年)にリアルトラちゃんは名古屋に転勤。
名古屋時代、リアルトラちゃんと三淵乾太郎氏が一緒に動物園に行ったとの証言が残されています。
なので、その頃にはリアルトラちゃんは三淵家の人々との交流を経て、三淵乾太郎氏との交際を始めていたのではないかと推測されています。
そして、それから数年が経過した昭和31年(1956年)8月。
リアルトラちゃんは三淵乾太郎氏と再婚しました。
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理想と理想とのぶつかり合い
そのことに気付いて、少年部は少年部の理想を追い求めている、という気持ちで当たったから、少年部の檀さんも聞く耳を持ってくれたのではないかと思います。
多岐川さん、素晴らしい上司です。
桂場さんはトラちゃんと穂高先生の仲がギクシャクしているのを知っていて、仲を取り持つつもりで幹事を依頼したのではないでしょうか。
あの貼り付けたような笑顔が不気味でしたが(笑)
でもあの場では、上手くいきませんでしたね。
トラちゃんの怒り。
うーん、でも私、正直何をそんなに怒っているのか理解できません。
雨だれも、一粒二粒では岩を穿つことはできません。
でも、落ち続けることで岩を穿つことができる。
そもそも、落ち続けること、最初の一粒二粒であることにも、大変な意味のあることだと思います。
例え自分には穿てなくても、次の一粒、さらにその次の一粒が続くことによって、ことは成されるのではないでしょうか。
岩を穿てなかった雨だれであること、名もなく散っていった雨だれであることも、次に続くものに理想を引き継ぐ大きな意義があったと思います。
トラちゃん、何か誤解してない?
退任祝賀会の幹事。本当なら断りたい。「国でなんとか。」無責任だろ!家裁の理想。まだ闇の中
栄二君の処遇まだ先行き不透明。穂高先生退任祝賀会。寅子さん、花束贈呈をパス。そして穂高先生への抗議。そして屋上で吠える。やりきれない怒り。困惑の表情で見つめる上司三人。