虎に翼

原爆裁判を担当する寅子 / 虎に翼 第98回

2024/8/14(水)第20週「稼ぎ男に操り女?」

あらすじ

星家に訪問した寅子に航一が提案しました。一緒に暮らさないかと。航一の提案を、優未は寅子へのプロポーズだと受け止めました。話を聞かされた花江も、それがプロポーズだと確信しました。しかし寅子だけはプロポーズだと気がつきませんでした。

一方、猪爪家では花江と直明の対立が相変わらず続いていました。花江は、自分と嫁の関係がギクシャクすることを心配していました。直明は戦時中に家族と離れて暮らした経験から、家族と離れることを恐れていました。

そんな中、寅子が配属された民事第24部が「原爆裁判」を担当することが決まりました。その裁判の訴状に目を通した寅子は、原告代理人の欄に雲野の名前が記されていることに気がつきました。

同じころ雲野は轟とよねの事務所に足を運んでいました。雲野は、戦時中によねを辞めさせたことを詫びた上で、「原爆裁判」への協力を要請。快諾したよねに対して、雲野は涙ながらに礼を述べました。

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感想

優未ちゃん

小学生とは思えないような達観ぶりを三条で示した優未ちゃんのスペックがますますアップしていました。

航一さんが一緒に暮らさないかとトラちゃんに提案。

その航一さんの言葉に百合さんも反応を示しました。

朋一くんも反応していました。

優未ちゃんも、その提案が何を意味するのかを理解していました。

視聴者であるブログ主もすぐに分かりました。

しかしトラちゃんだけがその提案の意味するところがわからない。

トラちゃんが分かっていないことも優未ちゃんはどうやら分かっているらしい。

優未ちゃんがスペックの高さを示したのはそれだけではありません。

優未ちゃんだけが気づいていました。

星家の家族は、顔は笑っているのに目が笑っていないと。

そして優未ちゃんの観察したとおり、星家の家族だけの食卓では誰もが顔すらも笑ってはいない。

これが星家の家族の本当の姿。

本当の姿を見抜いてしまった優未ちゃんは末恐ろしいほどです。

しかも、顔は笑っても目が笑っていないことを血筋のせいにしたトラちゃんに対して、優未ちゃんがするど過ぎるツッコミを入れる。

百合さんは血のつながりがないはずだと。

ドラマの最終週のころ、優未ちゃんが何歳になっているのかはまだ不明ですが、出来ることなら大人になった最強の優未ちゃんを見てみたいものです。

原爆裁判

本作関連のネットニュースなどに日々よく目を通しています。

それらネットニュースの約2割は、次のような予測をしてました。

「原爆裁判」はドラマの中では描けないだろう。

残りの8割の多くも、「原爆裁判」をドラマの中で描かれるかどうかわからない、としていました。

今回、それほどデリケートなトピックを真正面からとり上げました。

原爆を扱うこれまでのドラマも映画も、ほとんどの作品は加害者が何者なのか、その罪はどのようなものなのかの描写が曖昧でした。

加害者の悲劇はしっかりと描かれているものの、加害者と加害者の罪については避けて通っているようなものが大半。

ここまでハッキリと加害者とその罪に踏み込んだドラマは、ブログ主の経験の中では初めてです。

これまでも本作は女性の生理を真正面から取り上げたことなどについて、異例の朝ドラと評価されていました。

今回で本作は異例の朝ドラのレベルを超えたかもしれません。

歴史に残るようなすごいものを見た。

そんな感想を持った『虎に翼』第98回でした。

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予習レビューと史実のリアルエピソード

原爆裁判

昭和30年、広島と長崎の被爆者5人が、岡本尚一弁護士を代理人として国を相手取り起こした2件の訴訟が併合されて審理されることになりました。

これが「原爆裁判」です。

原告側は損害賠償とアメリカの原爆投下を国際法違反とすることを求めました。

しかし、アメリカ合衆国に対する損害賠償請求権はサンフランシスコ平和条約で放棄されていました。

そのため、原告側は日本政府に賠償を求めました。

リアルトラちゃんは2件の訴訟の併合後の訴訟を担当。

弁論終結まで行われたかれた口頭弁論は全9回。

リアルトラちゃんはすべての口頭弁論に参加しました。

当裁判は、古関敏正裁判長、高桑昭氏、そしてリアルトラちゃんの合議体で行われました。

ただし合議の秘密があるため、3人の裁判官の間で何が話し合われたかは不明。

リアルトラちゃんも個別の案件については一切語っていないため、判決が出るまでのプロセスは不明のままです。

昭和30年に始まった審理は判決が出る昭和38年まで8年続き、その間、3名の国際法の専門家3人が意見しました。

3名のうち2名は国際法違反と判断。

1名も国際法違反と判断する筋が強い、としました。

それに対して被告となった日本政府は、原爆投下は国際法違反には当たらないと反論。

日本政府はまた、審理の中で「原子爆弾の使用は日本の屈服を早め、戦争継続による双方の人命殺傷を防止した」とも主張しました。

そして昭和38年12月7日、東京地裁は米国の原爆投下を「国際法違反」と断じました。

判決理由は次のとおりです。

広島、長崎両市に対する原子爆弾による爆撃は、無防守都市に対する無差別爆撃として、当時の国際法からみて違法な戦闘行為。原子爆弾のもたらす苦痛は、毒、毒ガス以上で、不必要な苦痛を与えてはならないという戦争法の基本原則に違反している

一方、判決は日本政府の賠償責任を認めませんでした。

この判決に対して原告側は控訴しなかったため一審で確定。

原爆投下は国際法違反とする世界初の判決となりました。

賠償責任は認められなかったものの、この裁判の判決の影響は大きく、原爆特別措置法や被爆者援護法によって、被爆者を支援する仕組みが従前よりも拡大しました。

なお、原告の一人である下田隆三氏にちなんで原爆裁判は「下田事件」とも呼ばれています。

また、原告の名前からこの裁判は国際社会では「シモダ・ケース」と呼ばれています。

被爆者援護をめぐる他の裁判

桑原原爆訴訟
昭和44年、広島の被爆者が原爆症認定却下処分の取り消しを求めて提訴。
昭和49年、敗訴。

石田原爆訴訟
昭和48年、広島の被爆者が原爆白内障の認定却下処分の取消を求めて提訴。
昭和51年、勝訴。

原爆松谷裁判
昭和63年、長崎の被爆者が右半身不随麻痺の認定却下処分の取消を求めて提訴。
平成12年、勝訴。

京都原爆訴訟
昭和62年、広島の被爆者が白血球減少症と肝機能陳害の認定却下処分の取消を求めて提訴。
平成12年、白血球減少症のみ認定。

東訴訟
平成11年、長崎の被爆者が原爆症の認定却下処分の取消を求めて提訴。
平成17年、勝訴するも原告は確定前に死去。

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POSTED COMMENT

  1. 還暦のたつお より:

    「目が笑ってない。」優未ちゃん鋭い。あの中にいた人間の中では一番大人かも。えらい案件。原告側弁護士は、かつての上司、同級生。そうなると国側弁護士は誰が演じるのか気になる。

  2. ずんこ より:

    ああ…「スンっ」だ。
    「スンっ」の大渋滞だ。
    優未ちゃんは敏感に察したけど、今まで「スンっ」に敏感だったトラちゃんはあまり気が付いていない様子。
    航一さんが自ら溝を作ったせいなのか、もっと根深い問題があるのか…。

    ヒャンちゃん、また法律の勉強を再開したのですね。
    よねちゃんも弁護士になったし、仲間が再集結するのでしょうか。

    原爆裁判…。
    そこまで描くのですね。
    美佐江ちゃんの「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いかけと言い、凄いところまで踏み込むドラマだなと。
    原爆裁判は現在では一応の結論を得ているけれど、美佐江ちゃんの問いは未だに明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。
    彼女の問いへ答えが、最も根源的な問題になるのではないかと思います。

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