らんまん

博士号授与を勧められる / らんまん 第128回

2023/9/27(水)最終週/第25週「スエコザサ」

あらすじ

槙野家にやって来た波多野が万太郎に言いました。理学博士にならないかと。論文と学識が認められ、さらに徳永と波多野の推薦があれば、大学を卒業していない万太郎でも学位をとれる。そう波多野は説明しました。

波多野が持ちかけてきた話に万太郎は戸惑いました。大学に不義理をした上に図鑑もまだ完成していない中、学位を得ることに万太郎は二の足を踏んだのです。しかし植物学の将来のためにも理学博士になれと、波多野は万太郎に強くすすめました。

寿恵子も万太郎に訴えました。図鑑を出版してから理学博士になるのでは遅い。理学博士になってから図鑑を出版すれば図鑑は売れに売れると。寿恵子は、植物学の世界に槙野万太郎の名前が永遠に刻まれることを望んでいました。

波多野と寿恵子に説得され、万太郎は推薦をお願いしたいと波多野に頭を下げました。ほどなくして万太郎は理学博士号を授与。そして迎えた授与式、挨拶に立つ万太郎は寿恵子や世話になった人々に感謝の言葉を述べました。

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感想

徳永教授

徳永教授が久しぶりに登場しました。

そして、久しぶりに登場した徳永教授のたった一つのセリフの中に、徳永教授にとって万太郎くんの存在がどのようなものであるかがよくあらわれていました。

徳永教授は言いました。

「最後まで世話がやける」

徳永教授、どうやら万太郎の世話をやくのが好きだったらしい。

思えば万太郎くんが植物学教室に在籍中も、徳永教授が万太郎くんの世話をやいているらしいセリフがありました。

あれはたしか、万太郎くんが熊野に植物採集に行きたがったときのこと。

徳永教授は次のような言葉を口にしました。

「これ以上はかばいきれんぞ」

ともすれば好き勝手な行動に走りがちな万太郎くんは、大学関係者たちからいろいろと言われていたのでしょう。

その度に徳永教授は万太郎くんをかばっていたに違いない。

徳永教授が「これ以上はかばいきれんぞ」と口にしたとき。

この徳永教授の言葉についてブログ主は次のように考えていました。

万太郎くんを助手として採用したのは徳永教授だ。

だから万太郎くんの行動を正当化しなければ、万太郎くんを助手として採用した徳永教授の学内での立場もあやうくなる。

徳永教授は自己保身から万太郎くんをかばっているのだろうと。

実際に自己保身の要素もあったかもしれません。

しかしそれ以上に、徳永教授は万太郎くんのことを愛弟子か、あるいは息子のように思っていたのかもしれません。

今回の嬉しそうな徳永教授の表情を見てそう思いました。

おそらく徳永教授の出番はこれが最後でしょう。

万太郎くんの天敵として登場しながら、いつしか万太郎くんのことを認め、万太郎くんを愛弟子のごとく思うまでになった徳永教授。

素敵なキャラクターでした。

次回作でもこんな素敵な師匠キャラクターに出会えますように。

寿恵子ちゃん

前回に引き続き寿恵子ちゃんの様子がおかしい。

病院に行って診てもらおうという万太郎くんの提案を、寿恵子ちゃんは一度は拒むものの最後は受け入れました。

寿恵子ちゃん自身にも身体の異変への自覚はあるのでしょう。

というか、自分の身体のことは自分が一番よく知っているはずです。

今、寿恵子ちゃんの身体の異変を一番心配しているのは、他ならぬ寿恵子ちゃん自身かと。

そんな心配ごとを抱えながら本作もいよいよ残り2回となってしまいました。

1927年

今回のお話は1927年が舞台です。

次回作の第1週も1926年の後半から1927年の春先のころからスタートです。

ブギウギ

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予習レビュー

リアル寿恵子ちゃんが亡くなったのは昭和3年(1928年)2月23日です。

以下、リアル寿恵子ちゃんが亡くなる前後の出来事をまとめます。

大正15年(1926年):現在の東京都練馬区東大泉に居を構える
昭和2年(1927年):リアル万太郎くんが理学博士の学位を受ける
昭和2年(1927年):11月21日、東京を出発し札幌へ
昭和2年(1927年):11月22日〜26日、札幌滞在(マキシモヴィッチ生誕百年祭に参加)
昭和2年(1927年):11月30日〜12月4日仙台に滞在し新種のササを発見
昭和3年(1928年):1月、リアル寿恵子ちゃん原因不明の体調不良で入院
昭和3年(1928年):2月23日、リアル寿恵子ちゃん死去
昭和3年(1928年):発見した新種のササを「スエコザサ」と命名

広大な土地を手に入れ、標本館と植物園を開く夢を語っていたころ、リアル万太郎くんは理学博士の学位を授与。

これから次のステージの冒険が始まるというそのときの悲劇でした。

リアル寿恵子ちゃんの死去について『牧野富太郎自叙伝』では次のように記されています。

この家の標本館を中心に東大泉に一つの植物園を拵こしらえて見せよう、というのが妻の理想で私も大いに張り切り、いよいよ植物の採集にも熱中したのですが、これもとうとう妻のはかない夢となってしまいました。
引用:『牧野富太郎自叙伝』

リアル寿恵子ちゃんの最期は、池波正太郎氏の短編小説集『武士(おとこ)の紋章』に次のような記述があります。

富太郎は丁度、仙台へ採集旅行中だったが、すぐに駆け戻り、寿衛子の遺体の前にピタリと坐り、両手をついて、深く頭をたれた。
「わしは、お前に、女としてのたのしみを何一つ与えなんだ。芝居見物ひとつさせるじゃなし、流行の帯一本買ってはやらなんだ。済まんかった。よく今まで、わしにつくしてくれよった。今こそ、わしは、こうして、お前の前に両手をついて、あやまらねばならん」
泣いて泣いて、富太郎の涙は枯れつくした。

引用:『武士(おとこ)の紋章:牧野富太郎』

ドラマの中でも、こんな悲しい別れの場面が描かれたらつらすぎると案じていたのですが、悲しい別れを省略した美しい別れの描写になるようです。

なお、最終週で描かれる場面をまとめると次のとおりです。

・大正10年代:新しい土地を手に入れ夢を語る万太郎くんと寿恵子ちゃん
・昭和33年:万太郎くんの遺品整理をする大人になった千鶴ちゃん
・昭和2年:万太郎くんの博士号授与と寿恵子ちゃんの病気
・昭和3年夏:万太郎くんと寿恵子ちゃんの最後の会話
・昭和13年:万太郎くんが植物観察会に参加

恐らく最終回は昭和3年夏の「万太郎くんと寿恵子ちゃんの最後の会話」を経て、昭和13年に万太郎くんが植物観察会に参加する場面にスキップ。

万太郎くんと寿恵子ちゃんの別れの瞬間はスキップされるものと思われます。

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POSTED COMMENT

  1. 名乗る程の者ではねえ より:

    教授と万葉集上の句と下の句を歌い袂を分かってから20年間ぐらいか
    古典の歌は良い、美しい情景が見える
    スイーツ短歌とは違う、趣とか品とか格とか
    まあ単に私がスイーツ短歌が大キライなだけなんだがね
    とにかく次のブギウギにはまずスイーツ短歌をムリヤリはめ込む展開がないだろうことは個人的には安心だわ

  2. 還暦のたつお より:

    「売れて、売れて大増刷になるじゃないですか。」やはり寿恵さん一枚上手。幸せな祝宴。でも一旦博士号を固辞した万さんの気持ちわからないでもない。徳永さんいい人だった。彼を疑った自分が恥かしい。「植物にも人にも命がある。」そのあと寿恵さんのミディアムショット。このあとどうなるかわかっているだけに切ない。

  3. もーりー より:

    昭和2年は、1927年ですね。
    「らんまん」、一緒に楽しんで参りました。また次回作もよろしくお願いします。

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