ブギウギ

本心を打ち明けるタイ子 / ブギウギ 第96回

2024/2/16(金)第20週「ワテかて必死や」

あらすじ

スズ子はタイ子と向き合って話し合うことができました。スズ子が夢を叶えたのに対して、タイ子はどん底の状態にいる自分を嘆いていました。それ故にスズ子の親切を受け入れられなかったことをタイ子は打ち明けました。

その数日後、タイ子は医師の診断を受けることができました。スズ子を受け入れることができたタイ子はようやく笑顔を取り戻すこともできました。タイ子の心の再生をスズ子はおミネに報告しました。

そんな中、スズ子は羽鳥を訪ねて新曲のリクエストをしました。その際、スズ子はおミネのことを羽鳥に話しました。おミネたちのことをスズ子から聞かされた羽鳥は、スズ子の新境地を切り開く新曲の着想を得ました。

羽鳥が一気呵成に書き上げた新曲の名は『ジャングル・ブギー』。そして迎えたスズ子が新曲を披露するワンマンショーの日。会場にやってきたタイ子や達彦、おミネたちが見守る中、スズ子のパフォーマンスが始まりました。

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感想

今週の振り返り

前々週は、主人公の最愛の人の死。

前週は最愛の人の死という悲劇を乗り越えヒット曲が生まれるまで。

そしてヒット曲によって主人公が大スターになったところから今週が始まりました。

光が強く当たれば影が濃くなるわけですが、大スターになって光が強く当たることによって濃く浮かび上がる影が今週のテーマでした。

影にもいろいろありますが、今週描かれたのは嫉妬や反感。

一つ目の影はおミネさんを始めとする夜の女たちからの反感です。

大スターになったことでゴシップ雑誌の格好のネタになってしまったスズ子ちゃん。

記者の狡猾な誘導質問によって、今でいうところの炎上を招きかねない答えを特段の悪意もなく口にしてしまいました。

そのスズ子ちゃんのコメントが、おミネさんや夜の女たちには上から目線の発言に見えたのでしょう。

それに加えて夜の女たちに限らず大スターというのは憂いが何一つない暮らしをしていると思われがちです。

大スターの何気ない発言が、どのような反応を引き起こすのか。

この一件でスズ子ちゃんは学ぶことになりました。

しかし意外なほど早く誤解は解けました。

スズ子ちゃんのこれまでの生い立ちは、生まれてすぐに実の両親と離ればなれになり、育ての母を亡くし、弟を亡くし、最愛の人を伴侶になる直前に亡くしました。

夜の女たちの生い立ちを調べたところ、戦争で家族を亡くすまではスズ子ちゃんよりも幸福だった人もいました。

なのでスズ子ちゃんの生い立ちは、夜の女たちの誤解を解くには説得力のあるものでした。

二つ目の影はタイ子ちゃんの嫉妬。

嫉妬という表現がふさわしいのかどうか迷いはありますが、他に言葉が思い浮かばないので嫉妬ということにしておきます。

タイ子ちゃんが経験した悲劇とスズ子ちゃんが経験した悲劇。

悲劇というのはそれを経験した本人の受け止め方次第で、ディープな悲劇にもなれば軽い悲劇になります。

なので、あくまで第三者の視線でタイ子ちゃんとスズ子ちゃんの悲劇を比較すると・・・

タイ子ちゃんはズバリ妾の子でしたが、産みの母親に育ててもらいました。

スズ子ちゃんは許されない恋仲の二人の間に生まれ、実の父親な亡くなり産みの母親からも捨てられました。

出生についてはスズ子ちゃんの方が悲劇的な要素が大きい。

タイ子ちゃんはお母さんが空襲で死亡。

スズ子ちゃんは育てのお母さんが病気で死亡、さらに弟まで戦死。

お母さんの死亡という悲劇は同じですが、スズ子ちゃんは弟の死という悲劇にも見舞われているので、スズ子ちゃんの方が悲劇的な要素が大きい。

そして伴侶。

タイ子ちゃんは幸福に結婚し、祝福されながら子供を産むことができました。

スズ子ちゃんは結婚できないまま、出産と同じ日に最愛の人を亡くしました。

この点でもスズ子ちゃんの方が悲劇的な要素が大きい。

スズ子ちゃんが大スターになったその一方で、タイ子ちゃんはどん底。

今の二人の状況だけを比べるとタイ子ちゃんが悲劇のヒロインに見えますが、過去を整理するとスズ子ちゃんの方が圧倒的に悲劇のヒロインです。

タイ子ちゃんもその辺りのことが理解できたのでしょうか。

というわけで今週はスズ子ちゃんが大スターになったことで生じた反感と嫉妬。

しかし反感を抱いた人や嫉妬した人以上の悲劇を跳ね返してスズ子ちゃんは大スターになったのだということが、よくわかる週でした。

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予習レビューと史実のリアルエピソード

『ジャングルブギー』

ドラマの中では『ジャングルブギー』は次のようなきっかけから作曲されることになりました。

スズ子ちゃんは友達となった「ラクチョウのおミネ」をワンマンショーに招待。

しかし、そのワンマンショーの目玉となる新曲が未完成という問題が発生。

そんな中、スズ子ちゃんがワンマンショーに招待した友達=夜の女たちのことを詳しく聞かされた羽鳥先生は、あるインスピレーションを受けました。

そしてあっという間に書き上げた新曲が『ジャングルブギー』でした。

一方、史実での『ジャングルブギー』完成までのエピソードはまったく異なるものです。

笠置シヅ子さんが黒澤明監督作品『酔いどれ天使』に出演することが決定。

映画の中で歌う劇中歌として作曲され、作詞は黒澤明氏。

しかし歌詞の「骨も溶けるような恋」は元々「腰も抜けるような恋」でした。

この元々の歌詞を見た笠置シヅ子さんは「エゲツない歌詞を歌わせる」と言って歌うことを拒否。

そのため黒澤明氏が歌詞を書き改めました。

映画『酔いどれ天使』は昭和23年(1948年)4月27日に公開。

同年『ジャングルブギー』のシングルレコードも発売されヒットしました。

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POSTED COMMENT

  1. ひまじん より:

    本日放送の「ジャングルブギー」笠置さんオリジナルキーCマイナーで歌い切りましたね、音域少し拡がったのかな?但し「骨のとけるような恋」の歌詞の一番ではなく「胸がさける程泣いてみた」の歌詞の二番でしたが・・・。還暦のたつお様ご指摘、納得しました、マキノ監督「肉体の門」1948年同時期に、黒沢監督は「酔いどれ天使」を発表、強い女達よりもっと情けない非力なチンピラを描きたかったって事ですね。

  2. 名乗る程の者ではないでおま より:

    ヒョウ柄に関して追記

    ガガ様もヒョウ柄衣装多かったですね
    あと浜崎あゆみさんが「SURREAL」という曲のMVでヒョウのコスプレしています(因みに個人的には浜崎あゆみさんの曲では一番のオキニ、ライブ映像ではガンガンにギター演奏している野村義男さんがめちゃめちゃカッケーです)

  3. ハーブティー より:

    たい子さんは戦争でのトラウマで人生の扉を閉じざるを得なかった。。。それ故 福来さんへの態度は 実は嫉妬ではなく 心身に負った深い傷で心を開くことが難しかったのだと思います。心を閉じてしまうと どんな親切も 優しい言葉さえもなかなか受け入れられなくなる。。。でも ここで自分の本当の姿を知る 家族と言っても過言ではない 大切な幼馴染の福来さんが現れて 達彦君と共に 救われた事と思います。

    私の亡くなった家族の1人が 子供の頃に病弱で それに加えて子供時代に経験した戦争によるトラウマで 時々 フラッシュバックも含め 亡くなるまで 戦争の事で苦しんでいました。 その事で 私自身も本当に辛かったので 綺麗事ではなく 本当に戦争は 反対です。

  4. 還暦のたつお より:

    タイ子さんを真心で励ますスズ子さん。ようやくタイ子さんの心も解けてゆき。脚気だったんだね。おミネさん表情、口調穏やかになってる。歌の力。羽鳥先生オーバーワーク。ある映画監督って作品をイタリア映画にパクられたあの人。ところでひまじん様、「肉体の門」の映画化を、ある映画監督がマキノ雅弘監督に譲ったのは、マキノ雅弘監督の方が女性キャラの描き方が長けている(ある映画監督も女性キャラの描き方は下手ではないけど、男性キャラの描き方の方が巧い)からではないかと。特に「肉体の門」は個性の強い女性キャラが複数同時に登場してくるので、自分には向いてないと思ったのかな。間違っていたらごめんなさい。

  5. 名乗る程の者ではないでおま より:

    「こんなん着こなせるのはワテしかおらへん」、大阪のおばはんはこんな豹柄着ている人ばっかりでっけど(あと岩井志摩子さんもそうか)

  6. 丹善人 より:

    赤ん坊の微妙な顔。お母ちゃん、何考えとるの?とでも言いたそうな。
    しかし、こんな野性的な歌を歌っていたとは知りませんでした。

    次週は本格的に役者転業でしょうか。

  7. 林 芳彦 より:

    はじめて『酔いどれ天使』を観たのは多分、1972年、中学三年の時だったと思います(TV映画劇場で観ました)。三船敏郎がまぁ凄くて息を呑むような思いで観ました。その後、映画館でもビデオでも観ました。私にとっては黒澤映画の中で最も印象深い一本です。三船も最高です。大人になってから観た折には、笠置シヅ子の『ジャングルブギ』にも『いやー、これも凄いインパクトだなぁ』と感じました(本編の流れからすると、ちょっと唐突感あるんですけど)。

    • しい坊 より:

      『醉いどれ天使』を初めて看たのは僕もほぼ同じ頃。高校を卒業してハンガリーの大学に留学中でした。当時、ハンガリーのテレビ局で黒澤 明特集をやっており、毎週黒澤 明の映画が字幕で放送されておりました。実は字幕の下訳は僕が学生アルバイトでやってました😅 日本語の台本がないので映画会社で編集卓を操作して、まず日本語の聞き取りからやっていましたが、『生きる』の通夜のシーンは皆が酔っぱらって一斉に喋るので聞き取りが地獄でした😅 黒澤 明の映画はその時に初めてほぼ全作品を視ました。
       
      1970年代、一般の映画館で上映されていたのは『鬼婆』、『砂の女』等でしたが、新藤兼人の『裸の島』はハンガリーの文壇や映画界に多大な影響を与えていましたね。

  8. ひまじん より:

    「胸がさける程泣いてみた」は「骨のうずくような恋をした」やったそうな・・・、黒沢監督ほんまえげつない。
    なんで黒沢監督は「肉体の門」の最初の映画化をマキノ雅弘監督(吉本興業制作)に譲ったのかな?
    個人的には、「肉体の門」は鈴木清順監督日活版が押しやけど。

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