2024/5/28(水)第9週「絶望の隣は希望」
あらすじ
のぶが帰宅すると家族の誰もがうなだれていました。異変を察したのぶに、豪が戦死したことを羽多子が告げました。その日の夜、草吉はのぶに問いかけました。お国のために死ねて豪は本当に喜んでいるのかと。
そして豪の葬儀の日。近所の人々やのぶの小学校の生徒が、豪に線香をあげにきました。弔問に来た人々は口々に戦死した豪を称えました。小学校の生徒たちも豪のような兵隊になりたいと言いました。
弔問客の言葉にいたたまれなくなった蘭子は席を外しました。そして、石置き場に行った蘭子は、そこで豪が仕事をしていた日のことを思い出していました。そこへのぶがやって来て蘭子に声をかけました。
のぶは蘭子に言いました。豪を立派だと言ってやりなさいと。のぶの言葉に蘭子は感情を爆発させて言い返しました。どこが立派だ、決して立派だと思わないと。そして蘭子は、羽多子の胸の中で泣きじゃくるのでした。
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感想
豪ちゃんの戦死
前回、慟哭するカマジイと言葉を失う蘭子ちゃんのカットで終了。
今回はその直後からのスタートかと思っていたら意外にも帰宅途上ののぶちゃんの姿から始まりました。
のぶちゃんが担任しているらしいクラスの男の子が捧げ銃(ささげつつ)。
前回も、同じ男の子たちがのぶちゃんに捧げ銃をしましたが、あの場面は今回の冒頭のためにあったとは。
本当に緻密な脚本です。
そしてのぶちゃんが帰宅すると、蘭子ちゃんは抜け殻のようになっている。
家族も皆うなだれている。
羽多子さんが豪ちゃんの戦死の事実を知らせると、横で泣き出すメイコちゃん。
のぶちゃんも言葉を失う。
一寸のスキもないような場面でした。
そして、集まってきた近所のおじさん方が口々に言う。
「立派」だと。
さらに近所のおじさんの一人がのぶちゃんに対して発言を求める。
「のぶちゃんやったら英霊になった豪に立派だと言えるだろう」
のぶちゃん、こんな迫られ方をしたら返す言葉は一つしかありません。
「豪ちゃんはお国のために立派にご奉公したがです」
蘭子ちゃん、どんな気持ちで近所のおじさんたちやのぶちゃんの言葉を聞いていたのか。
近所のおじさん、蘭子ちゃんの気持ちを考えてあげてと言いたかったけれど、近所のおじさんは蘭子ちゃんと豪ちゃんの関係はまだ知らないはず。
近所のおじさんもあの場では、あのような発言しか選択肢がなかったのでしょう。
カマジイもポツリと言いました。
「本人も本望かもしれん」
二人目の「息子」を亡くしてしまったカマジイ。
こう言うしか、自分を納得させる言葉がなかったのでしょう。
蘭子ちゃん
豪ちゃんに、切れた鼻緒を直してもらった日のことを思い出す蘭子ちゃん。
蘭子ちゃん、幸せいっぱいの表情を浮かべていました。
きっと豪ちゃんも同じ気持ちでいたのでしょう。
その日は夏の日差しがまぶしいほどの日でした。
でも同じ場所に豪ちゃんはいない。
そして、豪ちゃんがいた場所は今日は薄暗い。
見事な対比。
そして、蘭子ちゃん演じる河合優実さんの名演が始まりました。
思い出の夏の幸せいっぱいの表情から一転、魂が抜けてしまったかのような蘭子ちゃんの顔。
蘭子ちゃんが口を開きました。
「皆が立派だと言うたびに悔しくなる」
そして繰り返し口から出てくる「嘘っぱち」という言葉。
この言葉、のぶちゃんの心に深く突き刺さったはずです。
最後、羽多子さんの胸の中で蘭子ちゃんはやっと泣くことができました。
悲しすぎてレビューの言葉が見つからない回でした。
予習レビューと史実のリアルエピソード
柳井家からの電報
今週、寛先生の死という悲しすぎる場面が描かれます。
さて、前週の嵩くんはスランプにおちいっていましたが、今週の嵩くんはスランプを脱したようです。
そして、御免与の朝田家でのぶちゃんの祝言の準備が盛り上がっている中、東京の嵩くんは卒業制作に没頭しています。
そんな中、下宿に電報が届きます。
電報を受け取るのは、たまたまその時下宿にいたらしい健ちゃん。
実家からの電報といえば、当時は悪い知らせしかないはずです。
それを察した健ちゃん、受け取った電報を持って嵩くんが卒業制作に取り組んでいる学校へ。
そして、嵩くんに電報を渡しても嵩くんは関心も払わない。
嵩くん、それぐらい卒業制作に没頭しています。
しかし健ちゃんが半ば強引に嵩くんに電報を渡し、嵩くんはようやく電報を見ます。
すると、その電報には「チチキトク スグ カヘレ」。
「チチ」とはもちろん寛先生のことです。
寛先生の死
その電報のことを知った座間先生と健太ちゃんは、すぐに実家に帰れと言うものの、嵩くんは卒業制作の仕上げに没頭。
これを描き上げないと叔父さんに顔向けできないと言って、出発を拒みます。
座間先生は最後には、すぐに出発するか卒業制作を描き上げるかどうかは、それは嵩くん本人が決めることだと考え直します。
そこで嵩くんは卒業制作の作業を続行。
この選択が嵩くんを一時的に後悔させることになります。
その日、夜を徹して嵩くんは卒業制作を完成。
座間先生はその出来栄えに関心し、課題の修了を認めます。
卒業制作を完成させた嵩くんは御免与へ。
しかし嵩くんが柳井家に到着すると、すでに寛先生の顔には打ち覆いがかけられています。
おそらく嵩くんが柳井家に到着するのは昼過ぎ。
寛先生はその日の早朝に息を引き取ったようです。
数時間の差で寛先生の死に目に会えなかった嵩くん。
卒業制作を優先させた自分の選択を悔やむことに。
寛先生の亡骸に対して、大泣きしながらごめんなさいと謝る嵩くんに千代子さんが言います。
その日の早朝、それまで昏睡状態にあった寛先生が目を覚ますと千代子さんに言ったらしいのです。
「卒業制作をわしが邪魔するわけにはいかない」
「嵩も千尋も投げ出すことは許さん」
これが寛先生のの最期の言葉となりました。
嵩くん
その日、日が暮れるまで泣き続けた嵩くんはいつもの空き地へ。
そこへやって来たのぶちゃんが、嵩くんにあんぱんを差し出します。
この嵩くんとのぶちゃんの再会は、二つの点でとても重要な場面かと思います。
一つ目、嵩くんは生前の寛先生のことをいつも「叔父さん」と呼んでいましたが、実はあの呼び方は嵩くんが意地をはって「お父さん」と呼んでいなかったのだそうです。
そんなことを打ち明ける嵩くんは、泣きながら「お父さんごめんなさい」と言います。
嵩くんが寛先生に初めてお父さんと呼びかける瞬間です。
二つ目、嵩くんはのぶちゃんに自分の気持ちを打ち明けようとします。
なお、この時点で嵩くんはのぶちゃんの結婚が決まったことを知りません。
そして嵩くんが自分の気持ちを打ち明けようとするその直前にのぶちゃんが「うちは嵩の一番古い友達」みたいなことを言います。
この一言があったがために嵩くんはのぶちゃんに自分の気持ちを伝えることができませんでした。
仮に気持ちを伝えても、手遅れなのかもしれませんが。
そして、寛先生の初七日が済み嵩くんが東京へ帰る日。
嵩くんが朝田パンへ立ち寄ると、そこへ次郎さんがやって来ます。
そして、のぶちゃんと次郎さんの会話から、のぶちゃんが結婚することを初めて知る嵩くん。
一方、ショックを受けた嵩くんの顔を見て、のぶちゃんは嵩くんの気持ちを初めて知ることになるようです。
寛先生が亡くなり、のぶちゃんは結婚。
東京に戻った嵩くんは、抜け殻のようになってしまいます。
そんな嵩くんが東京で思いがけない人物との再会を果たします。
登美子さんです。
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