あんぱん

漫画が描いた新たな漫画 / あんぱん 第105回

2025/8/22(金)第21週「手のひらを太陽に」

あらすじ

のぶと嵩が衝突して以来、二人は別居生活を続けていました。そんな中、のぶと羽多子、そして登美子の三人が顔を合わせた席で登美子が言いました。嵩の名は中国の嵩山にちなんで命名した。だから山のように頑固なのだと。

その話を聞かされたのぶはある日一人で山に出かけました。そして、一人で山に登ったのぶは山頂で『手のひらを太陽に』を歌いながら嵩のことを考えていました。同じころ、のぶと過ごした日々を思い出した嵩は夢中になって漫画を描き始めました。

嵩が漫画を描き始めた日の夜、のぶはようやく自宅に帰ってきました。のぶは嵩に言いました。女子も大志を抱けという結太郎の言葉を胸に今日まで生きてきた。頑張ってきたつもりだったが自分は何者になれなかったと。

世間に取り残されたような気持ちだと涙を流して嘆くのぶを、嵩は励ましました。嵩に励まされ元気を取り戻すことが出来たのぶは、嵩の描きかけの漫画に目をやりました。それは、あんパンを手に空を飛ぶ太ったおじさんの漫画でした。

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感想

今週の振り返り:のぶちゃんと嵩くんのピンチ

今週は、嵩くんも安定のピンチでしたがのぶちゃんまでもがピンチでした。

のぶちゃんが会社を解雇されてしまいました。

解雇されただけでなく、嵩くんを支えるという生きがいのようなものまで失ってしまいました。

のぶちゃんは学校の先生という夢を戦後すぐに捨てました。

そして見つけた、薪先生のもとで働きながら何かを見つけるという夢も、薪先生からの解雇通告によって捨てざるを得ない事態になりました。

その後のぶちゃんは薪先生に紹介された民間の会社に就職。

おそらくその仕事ではのぶちゃんの大志を実現することはできなかったでしょう。

しかし会社の仕事でもらう給料によって嵩くんを支えるという生きがいがありました。

ところが嵩くんは今では仕事には全く困らない。

困っていることがあるとしたら仕事が多すぎてこなすのが大変なこと。

のぶちゃんの助けは必要なくなりました。

夢を二つも捨て生きがいまで失ったのぶちゃん。

かたや蘭子ちゃんは独立して自分の生きる道を見つけている。

メイコちゃんも二人の女の子のお母さんとして自分の生きる道を見つけている。

それに対して自分は何者にもなっていないと焦るのぶちゃん。

今週ののぶちゃんは見ていて痛々しいほどでした。

戦後、教員を辞めた前後ののぶちゃん以来の痛々しさでした。

一方、今週の嵩くんのピンチは漫画が描けないというピンチでした。

漫画を描こうとすると自分の漫画家としての才能のなさに自信を失ってしまう。

だから漫画に向き合えない。

そんなピンチです。

しかし、そんなピンチの中にようやく一筋の光が差し込んできました。

『アンパンマン』の原型の誕生です。

『アンパンマン』の原型

今週、アンパンマンの原型がついに登場しました。

あんパンの顔をお腹が空いた人に食べさせる今のアンパンマンではなく、あんパンをお腹の空いた人の配る中年男性のヒーロー。

これがアンパンマンの原型です。

アンパンマンの原型が今のアンパンマンになるのにはもう少し時間がかかります。

そして、今のアンパンマンが登場してからアンパンマンが大ブレイクするまでには、さらに時間がかかります。

そんなアンパンマンがブレイクするきっかけとなったアンパンマンのミュージカル化までの経緯を簡単にまとめてみました。

『アンパンマン』の連載

昭和48年(1973年)、『キンダーおはしえほん』の一冊として絵本『あんぱんまん』刊行。

これが今と同じアンパンマンが誕生した瞬間です。

しかし誕生してすぐに『アンパンマン』がヒット作になったわけではありません。

絵本『あんぱんまん』刊行の二年後。

昭和50年(1975年)、リアル嵩くんは自身が編集長をしている雑誌『詩とメルヘン』で、『熱血メルヘン 怪傑アンパンマン』の連載を開始しました。

リアル嵩くんは『アンパンマン』が気に入っていました。

しかし『アンパンマン』を描かせてくれる出版社は見つかりませんでした。

『アンパンマン』の評判はおもわしくなかったのです。

そこでリアル嵩くんは自ら編集長をつとめる雑誌で『アンパンマン』の連載を描くことにしたのです。

しかし、この連載も注目を集めることはありませんでした。

『アンパンマン』のミュージカル化

雑誌『詩とメルヘン』で連載された『熱血メルヘン 怪傑アンパンマン』も、注目を浴びることはありませんでした。

しかし、たった一人だけ『アンパンマン』をいたく気に入った人物がいました。

リアル嵩くんが書いた詩『てのひらを太陽に』に曲をつけた作曲家・いずみたくさんです。

いずみたくさんとはリアルたくやくんのことです。

いずみたくさんはリアル嵩くんに『アンパンマン』のミュージカル化を提案。

昭和51年(1976年)、『ミュージカル 熱血メルヘン 怪傑アンパンマン』の上演が開始されました。

このミュージカルはいずみたくさんが亡くなるまでの16年間も上演が続くロングランとなりました。

ところでミュージカル化される少し前から、アンパンマンは幼稚園や保育園に通う子どもたちの間で絶大な人気を誇るキャラクターになっていました。

書店ではなく幼稚園や保育園に絵本を卸している出版社が絵本『アンパンマン』を刊行。

この絵本が子どもたちの間で大人気となり、リアル嵩くん本人も知らぬ間にアンパンマンは日本全国の幼稚園や保育園で一番人気の絵本になっていたのです。

こうしてアンパンマンは、テレビアニメ化による大ブレイクの日に刻一刻と近づいていったのです。

最終週までの展開

最終週までの大まかな展開が発表されました。

最終週で描かれるのは『アンパンマン』がテレビアニメ化される頃です。

第24週で絵本『あんぱんまん』が刊行されるもののあまり売れない状態が続く。

第25週で『アンパンマン』がミュージカル化される頃まで。

そして最終週が『アンパンマン』のテレビアニメ化です。

最終週でのぶちゃんの最期が描かれた悲しすぎると思っていたのですが、悲しい結末は回避できるかもです。

第24週「あんぱんまん誕生」
第25週「ばいきんまん誕生」
最終週/第26週「愛と勇気だけが友達さ」

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予習レビューと史実のリアルエピソード

「困ったときのメガネくん」の回収

高知新報時代の嵩くんは、東海林さんから二度にわたって「困ったときのメガネくん」と言われたことがありました。

一度目は、嵩くんが高知新報の入社試験を受けた日の夜。

翌日の朝刊の紙面に穴が空きそうなところを、嵩くんが描いたイラストによって穴を埋めることができました。

二度目は、高知新報に採用された嵩くんが社会部に配属されたころ。

月刊くじらの誌面に穴が空きそうなところを、このときも嵩くんが描いた漫画によって穴を埋めることができました。

東海林さんは二度にわたる嵩くんの活躍を「困ったときのメガネくん」と表現したわけです。

この「困ったときのメガネくん」は史実にモチーフがある呼称です。

史実ではリアル嵩くんは「困ったときのやなせさん」と呼ばれていました。

ラジオドラマのための台本が放送に間に合いそうもなくなり放送に穴が空きそうになると、穴埋めの台本を頼まれる「困ったときのやなせさん」。

雑誌に掲載する漫画の原稿が間に合いそうもなくなり誌面に穴が空きそうになると、穴埋めの漫画を頼まれる「困ったときのやなせさん」。

そんなリアル嵩くんが経験した状況が、今週のドラマの中で再現。

東海林さんが言った「困ったときのメガネくん」が回収されるようです。

ドラマの中の嵩くんは「困ったときのメガネくん」として仕事が次々に舞い込み、仕事には困ってはいないようです。

しかし漫画家として相変わらず売れません。

ついに「アンパンマン」が誕生

今週の嵩くん、仕事だけはいっぱいあります。

今の時点で判明している嵩くんの仕事は、ショーの構成や舞台美術、そしてテレビ出演などなど。

仕事はいくらでもあるので食べるのに困ることはありません。

しかし、漫画家としては売れません。

漫画のヒット作も生み出せません。

仕事はあるのに漫画家として行き詰まる嵩くん。

漫画家としてスランプにおちいり、他の仕事は何でも引き受けるその一方で、漫画を描けなくなるようです。

そんな「たっすいがー」ぶりにのぶちゃんは腹を立て口論の末にのぶちゃんは家出。

ようやくのぶちゃんと仲直りできた嵩くんが気を取り直して描いた漫画は、のぶちゃんを大いに喜ばせるのだとか。

嵩くんが描いた漫画。

それは、太った中年男性があんパンを配るという漫画です。

【史実】「アンパンマン」誕生

ドラマの中では「太った中年男性があんパンを配る漫画」という形で登場したアンパンマン、またはアンパンマンの原型。

史実では、アンパンマンはどのように登場したのか。

その経緯をざっくりとまとめてみました。

「アンパンマン」というキャラクター名が初めて登場したのはラジオのコントの中でした。

毎日5分間ラジオ放送されていたコントの中に「アンパンから生まれたアンパンマン」というキャラが登場したもののラジオドラマなので姿はありません。

次に登場するアンパンマンも姿のないキャラクターでした。

リアル嵩くんは絵本の原作を依頼され、アンパンマンの物語を執筆したものの編集者に没にされました。

なお、このときの絵本ではリアル嵩くんは原作だけを担当。

絵は別の作者が描くことになっていました。

もし編集者がリアル嵩くんの原作を没にしていなければ、別の作者がアンパンマンの絵を描くことになり、その後の大人気キャラのアンパンマンは誕生していなかったと言われています。

アンパンマンの原型が誕生したのは昭和44年(1969年)。

リアル嵩くんは月刊誌『PHP』で大人向けの短編童話を連載しました。

この短編童話の一編が、お腹のすいた人にアンパンを配ってまわる、カッコよくないおじさんの物語でした。

あんパンの顔を食べさせるのではなく、あんパンを配る主人公。

今週のドラマの中で初めて登場するアンパンマンらしきキャラクターも、あんパンを配る主人公です。

なので『PHP』に掲載された短編童話の一編が、今週のドラマの中で登場する新キャラクターのモチーフと思われます。

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POSTED COMMENT

  1. ふうたん より:

    山で叫ぶ、のぶ。
    良かったです。
    今日はOPが無い、特別な回でしたね。

  2. 山頂で叫ぶのぶさんを捉えたロングショット、多分このドラマでは初めての、思いっきりの引きの画。ドラマの途中で突然、撮り方が変わると、ドラマが新たな展開を示す事が多いけど、今回もその例外では無かったですね。

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