虎鉄との出会いから三年 / らんまん 第96回

2023/8/14(月)第20週「キレンゲショウマ」

あらすじ

万太郎が虎鉄の教師からの問い合わせが応えたことがきっかけとなり、全国の教師たちから植物についての問い合わせが集まるようになりました。そして、そんな要望に応えるため万太郎は新聞広告を出すことにしました。

それから三年の間に、十徳長屋の住人たちは次々と旅立ち新しい生活を始めました。月日は流れ、槙野家では千歳が4歳、次に生まれた百喜が2歳、さらに寿恵子は妊娠中でした。そんな中、波多野と藤丸が十徳長屋にやってきました。

万太郎は、植物標本を保管するための部屋を新たに借り、そこへ波多野と藤丸を招き入れました。波多野と藤丸は田邊の近況を報告しました。田邊はそのころ二つの学校の校長を兼務し、大学に不在がちでした。

波多野と藤丸は自分たちの近況も報告し万太郎と談笑しているそのとき、こわもての男が十徳長屋にやってきました。寿恵子が掲げた赤い旗を見た万太郎は息をひそめました。その男は借金取りだったのです。

感想

今週は前週から３年スキップします。

次週もまた今週から３年スキップします。

そんな谷間のような一週間。

今週、万太郎くんに大きな動きはありません。

一方で大きな動きがあるのは田邊教授です。

なので今週は、田邊教授の一週間と言えなくはない。

そんな一週間が始まりました。

ネタバレあり：田邊教授の一週間の予習

今週の最後、田邊教授は東京大学から追放されます。

追放されるだけでなく、植物学の世界からも去って行きます。

そんな週のエンディングに至るまでに田邊教授の身の上に起こることを予習します。

一番はじめの大きな変化は田邊教授が校長先生をつとめる高等女学校の廃校です。

田邊教授が高等女学校の校長先生になったきっかけは森有礼文部大臣の推挙でした。

この森文部大臣が暗殺されてしまいます。

森文部大臣の暗殺は史実をモチーフにしたエピソードです。

暗殺の理由は「伊勢神宮不敬事件」と呼ばれる騒動。

明治20年（1887年）、新聞に次のような記事が掲載されました。

とある大臣が伊勢の神宮（伊勢神宮）を訪れた時、土足厳禁の拝殿に靴を脱がずに上がり、目隠しの御簾をステッキで払い上げて、その中をのぞき込む振る舞いに及んだ

伊勢神宮に祀られている神様は皇室の祖先、よって神宮に対する不敬は皇室に対する不敬と同じ。

そんなわけで世論が沸騰。

しかしメディアは「とある大臣」の実名は報道しませんでした。

ところが「とある大臣」は森有礼文部大臣に違いないという憶測が拡大。

そんな憶測が拡大した理由は、ドラマの中でも描かれた「日本語を廃止して英語を公用語に」という主張が欧米崇拝者とみなされていたから。

なお、「伊勢神宮不敬事件」の真相はいまだに謎のままなのだそうです。

話をドラマの中の田邊教授に戻します。

森文部大臣の暗殺によって、文部省は学校制度改革を理由に高等女学校を廃校。

校長先生のポジションを失った田邊教授は聡子さんに背中を押される形で植物の研究に没頭するようになります。

その後、田邊教授は

・東京聾唖学校の校長を辞任
・帝国大学の評議員を辞任

して、ますます植物学の研究に専念するように。

それからしばらくして、田邊教授に何かにつけて嫌味を言っていた美作教授の兄上の圧力によって、田邊教授は理科大学の学長の座をも追われることに。

そんな中でも田邊教授は植物学の情熱を注ぎ、これから日本の植物学は欧米に頼らず独自で新種を認定し発表すると欧米に宣言。

これは、史実の中で日本の植物学史上に残る宣言と言われています。

そしてついに田邊教授は新種を発表。

その数ヶ月後に大学から追放され、植物学の世界からも身をひくことに。

今週は田邊教授のは、アップダウンの激しい一週間になるはずです。

万太郎くんの一週間

一方、本作の主人公である万太郎くんとその周囲に、特段の大きな変化はありません。

今週描かれる万太郎くんの目立つエピソードは次の二つくらい。

借金取りに追われるようになり、その対応を寿恵子ちゃんが一手に引き受けるお話。

そして、アメリカから帰国した佑一郎くんと万太郎くんとの再会です。

また、万太郎くんも新種らしき植物を見つけて研究を進めるのですが、この新種らしき植物は田邊教授も研究を進めていた植物。

最終的に田邊教授が先に新種と認定し、万太郎くんは心の中で田邊教授を祝福。

今週の万太郎くんの動きはこれくらい。

ただし、史実の中のリアル万太郎くんはリアル田邊教授の失脚をもって、自分自身の受難に一区切りついたと言葉を残しています。

なので、今週はドラマの中の万太郎くんにとっても一区切りの週なのかもしれません。

予習レビュー

今週は槙野家の借金のエピソードが描かれます。

今週放送されるドラマの中で描かれる借金のエピソードは史実の中のエピソードにもとづいたものです。

一方これまで放送されたドラマの中では、万太郎くんと寿恵子ちゃんが結婚したのを機に、万太郎くんは実家からの仕送りをもらっていません。

祝言の際に綾ちゃんから渡されたお金が実家から最後にもらったお金。

そのお金は、石版印刷の設備への投資ですべて使ってしまいました。

その後、図譜を売って投資の一部は回収したようですが、それでも生活にあてるお金はごくわずか。

寿恵子ちゃんの内職だけではとても足りない状況であることが描かれました。

では史実の中ではどんなことがあったのでしょうか。

リアル万太郎くんは結婚後も実家からの仕送りに頼っていました。

しかしリアル田邊教授に大学を追い出された直後に、実家の経営が行き詰まり仕送りが途絶えることに。

実家からの仕送りは途絶えてもなお、リアル万太郎くんは高価な文献などの購入をやめませんでした。

その結果、実家からの仕送りが亡くなってから２〜３年の間に借金は2000円。

現在の貨幣価値でおおよそ4000万円ほどになったのだとか。

4000万円という金額だけでも大変なことですが、4000万円の借金には高利貸しからの借金も含まれています。

リアル万太郎くんの家計、とんでもない状況になっていたのでしょう。