らんまん

田邊が生前に遺した言葉 / らんまん 第102回

2023/8/22(火)第21週「ノジギク」

あらすじ

田邊が鎌倉で遊泳中に溺死したという報道を知った万太郎と藤丸は、驚きのあまり言葉を失いました。その日の夜、波多野も十徳長屋にやって来ました。波多野は大学から得た情報を万太郎と藤丸に告げました。

その数ヶ月後。聡子が十徳長屋にやって来ました。万太郎と寿恵子は、聡子を丁重に迎えました。その日、聡子が万太郎と寿恵子を訪ねてきたのは、田邊が生前に遺していた言葉を万太郎に伝えるためでした。

田邊は生前、聡子に打ち明けていました。私の蔵書はすべて万太郎に譲る。私の植物学は終わったと。続けて聡子は言いました。田邊は顔の広い人物だったが、その中で最も心に残っているのは万太郎だったのだと。

田邊の思いがけない言葉を聡子から聞かされた万太郎は、田邊の遺志を継ぐ決意を固めました。しかし万太郎が夢を叶えるためのお金が槙野家にはありませんでした。そこで寿恵子はみえの料亭「巳佐登」を訪問しました。

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感想

魂の自由を得た田邊教授

「私の植物学は終わった」

予告動画の中でも紹介された田邊教授のこのセリフ。

「終わった」と口にする田邊教授の表情は意外なほど穏やか晴れやかなものでした。

いつだったか、万太郎くんを大学から追い出した直後に田邊教授が聡子さんに言いました。

私の魂はようやく自由になったのだと。

実はあの時点では田邊教授の魂は自由になっていなかったのではないか。

そんな気がしています。

この度、田邊教授自身が大学から追い出され、植物学の道も断念せざるを得ない状況になりました。

もはや植物学者ではなくなった田邊教授にとって、万太郎くんは嫉妬の対象ではなくなった。

そのため「私の植物学は終わった」と自分の仕事に一区切りをつけることで、ようやく田邊教授の魂は自由になったのではないか。

以上がブログ主の見立てです。

さて、田邊教授のエピソードは今回で完結でしょう。

万太郎くんと田邊教授の複雑な師弟関係、まるで『アマデウス』のモーツァルトとサリエリのようでしたが、古い作品なので知らない人も多いでしょう。

最近の作品で、同様のケースはないかなと思い出してみたところ、ありました。

万太郎くんと田邊教授の複雑な師弟関係、3年前の朝ドラでも同様の関係が描かれました。

『エール』

3年前の朝ドラとは『エール』。

主人公と、主人公が尊敬する大御所の作曲家・小山田耕三氏との師弟関係の複雑さが本作の複雑な師弟関係とそっくりでした。

主人公の裕一くんがコロンブスレコードに採用されたのは小山田氏の推薦があったから。

しかしその推薦は悪意に満ちた推薦でした。

裕一くんが得意としていたのはクラシック音楽の分野でした。

しかし裕一くんの作曲家としての才能を見抜き、そしてねたんだ小山田氏は裕一くんの才能をつぶすために大衆音楽のレーベルに配属されました。

大衆音楽のレーベルでは裕一くんの才能は生かすことができない。

案の定、裕一くんはどれだけ作曲してもその曲が採用されることはありませんでした。

焦った裕一くんは壮大な交響曲を作曲するとその楽譜を小山田氏のもとに持参。

しかし小山田氏はその曲に対して冷たい反応を示し、裕一くんは完全に自信喪失。

裕一くん本人は天然な性格なので気づいていなかったようですが、小山田氏の裕一くんへの嫉妬心はかなり激しいものがありました。

そして最終回の一回前の回。

『エール』は最終回がコンサートだったので、最終回前の一回前が実質的な最終回。

実質的な最終回で小山田氏が死去。

小山田氏の秘書をつとめていた方が、小山田氏が亡くなる三日前に書いたという手紙を裕一くんに手渡しました。

その手紙には、裕一くんのクラシック音楽の才能に怖れを感じ、裕一くんの才能をつぶすために大衆曲の作曲の世界に押し込んだことが書かれていました。

亡き小山田氏に代わって詫びる秘書に対して裕一くんは言いました。

小山田氏に対しては感謝しかないと。

ところで『アマデウス』では、モーツァルトへの謝罪を口にしながら精神を病んだサリエリは精神病院で孤独な最晩年を過ごしていました。

『アマデウス』の最後はあまりにもむごいものでした。

そういった意味でも、本作『らんまん』の万太郎くんと田邊教授の関係は『エール』のそれに近いのかもしれません。

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予習レビュー

今週のドラマの中では、生前の田邊教授が次のような言葉を遺しました。

「私の蔵書は槙野に譲る。(中略)この先はMr.MAKINOに」

田邊教授が大学から追放され植物学者として研究を続けられなくなるのを機に、田邊教授が積み重ねてきた植物学を万太郎くんに継承。

これによって田邊教授は単なる悪役ではない終わり方をしてドラマの中から退場します。

以上のエピソードは脚色された創作エピソードと思われます。

リアル万太郎くんが著した『牧野富太郎自叙伝』には、そのような記述がないからです。

またドラマの中とは異なり、リアル万太郎くんはリアル田邊教授に対して並々ならぬ対抗心を持っていたことも『牧野富太郎自叙伝』に記されています。

大学を追い出された直後のリアル万太郎くんが出版を続けた動機として

「大学の矢田部教授と対抗して、大いに踏ん張って行く」
「矢田部氏に対抗しつつ、出版を続けて十一冊まで出した」
「今度は大いに矢田部氏に対抗してやる考えであった」

などの記述が『牧野富太郎自叙伝』にはあります。

リアル万太郎くん、ドラマの中の万太郎くんとは異なりアスリートなみの闘争心を燃やしていたものと思われます。

そしてリアル田邊教授が大学を追放されたことについては

「当面の敵が大学を退いてみると」

と記述しています。

リアル万太郎くんの中でリアル田邊教授ははっきりと「敵」と認識されていたようです。

そして敵が大学を退いたことで第一の受難が終わったともリアル万太郎くんは『牧野富太郎自叙伝』の中で記述。

リアル田邊教授の死については溺死の事実を述べるだけになっています。

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POSTED COMMENT

  1. 名乗る程の者ではございません より:

    雷おこし食べに行きましょう

    一瞬構えてしまいますた
    粟おこしであれ岩おこしであれ
    歯は大丈夫かと思ってしまう年齢のワイ
    そんな折りにネットニュース見て驚いた
    デヴィ夫人(83)歯28本全て自前
    日本一元気過ぎる後期高齢者だし、おもしろいし、頭の回転早いし
    とにかくスゲーなあ、この人

  2. ばなななち より:

    私も田邊教授、お子さんを残していったんだーくらいで見てました

    言われてみると子孫を残さないシダが好きだった教授が、最後は子孫を残していったと考えると感慨深いものがありますねえ。

  3. 名乗る程の者ではございません より:

    ドラマ公式サイトに借金取り役の六平さんと質屋役の小倉さんが同じ歳ということでツーショットがアップされています
    小倉さんがメガネかけているからそう感じるのかもしれませんが、なんと言うか歳を重ねたムックとガチャピンなんですよね
    なんか微笑ましくってねえ😁

  4. スイーツトロル より:

    私も今日まで見逃していたので、恐縮ですが、聡子さんが妊娠していたエピソードの記述が何処にもないのが気になります。
    このエピソードが本筋に関わってくるのかは分からないですし、それが主さまの意向であると言われたらそれまでだと考えます。

  5. 還暦のたつお より:

    名乗る程の者ではございません様。そういえば、及川奈央さんは平成仮面ライダーの映画版で西野七瀬さん以前に蜂女やってました。どちらもきれいで怖い。

  6. 還暦のたつお より:

    「大学が殺したようなもんじゃない。」三人、とりわけ万さんに田邊教授がした仕打ちを考えても、やはり彼がいなければ万さんは東大に出入りできなかった。恩も大きい。聡子さんに託された手紙。「生きようとされてたんですよ。」でも植物学者としての遺書だったのかも。ただ本当に死ぬとは。
    万さん植物学の先駆者としての覚悟。味方は多いが、力はない。金もない。須惠子さん、叔母さんの所へ。おい番頭ちゃん取り次げよ。

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