寿恵子がノジギクを出品 / らんまん 第105回

2023/8/25(金)第21週「ノジギク」

あらすじ

岩崎が言い出した菊比べに寿恵子も参加することを決めました。そして寿恵子は、次の植物採集の際に菊を探してきてほしいと万太郎にお願いしました。万太郎は植物に優劣をつけるのは気が進まないものの寿恵子のために頼みを受け入れました。

そして迎えた菊比べの日。みえや菊千代たちが持ち寄った華やかな菊ばかりが並ぶ中、寿恵子が持ち込んだのは白くて小さなノジギクでした。寿恵子は菊の原種・ノジギクの魅力を物おじせずに語りました。

菊比べで一等をとったのは菊千代の菊でした。しかし、ノジギクは我が国自生の原種の菊であるという寿恵子の言葉に心を動かされた岩崎は、一等を逃した寿恵子のノジギクを高値で買い取ることにしました。

ノジギクを高値で買い取ってもらえたことをまだ知らない寿恵子は、ノジギクが一等を逃したことを万太郎に報告しました。一方の万太郎も東京大学に助手として雇われたことと寿恵子に報告しました。

感想

「巳佐登」

料亭「巳佐登」の美しい料理。

そして、菊比べに寄せられた美しい菊。

美しい菊を活けた美しい器。

目だけでも楽しめる回でした。

目だけでも十分に楽しめる回でしたが、菊比べに集まった方が皆さん紳士。

こんな一流店に育て上げたみえさん、さすがです。

そして、寿恵子ちゃんの夫に関心を示した岩崎さま。

次週あたり何らかのアクションがあるのかな？

第21週振り返り：田邊教授

万太郎くんが田邊教授に見出され、田邊教授から嫉妬された末に見限られ、再び田邊教授のハートの真ん中に戻ってゆく。

万太郎くんと田邊教授の複雑な師弟関係が完結する週でした。

生前に田邊教授が聡子さんに言ったという言葉。

「私の蔵書は槙野に譲る。私の植物学は終わった。この先はMr.Makinoに」

この言葉を口にしたときの田邊教授のこれまで見たことがないような安心感に満ちた表情が忘れられません。

田邊教授が万太郎くんと初めて出会ったとき、田邊教授は万太郎くんを有能で変わった青年としか思わなかったはず。

このときの田邊教授は万太郎くんの才能よりも、万太郎くんの植物標本の方に興味があったのでしょう。

この頃は標本が足らず、新種の検定は欧米に頼る以外なかったころ。

そんなところで、まとまった量の標本が・・・

しかもそれら標本は、東京大学がまだ採集を行なっていないエリアの植物ばかり。

あの頃の田邊教授としては喉から手が出るほどにほしかったはず。

それからしばらくして、田邊教授は万太郎くんを音楽会に連れて行きましたが、想像していた以上に見どころがあることをあの頃に悟ったのでしょう。

しかし万太郎くんが次々に成果を出す一方で、自分は成果を出せない。

周囲から成果を求められる焦りもあって、田邊教授の中での万太郎くんの存在は、意外なほど有能な青年から嫉妬の対象へ。

田邊教授の「魂が不自由」になったのはこのころからでしょうか。

嫉妬心の奴隷になってしまった田邊教授、自分は万太郎くんの奴隷になってしまったのか？くらいの気持ちだったと推察します。

なので万太郎くんを自分の奴隷にしてしまえば、「嫉妬心の奴隷」の苦しみから逃れられると思ったのか。

「私のものになりなさい」

ところが万太郎くんはこれを拒否。

万太郎くんを自分の奴隷にすることで「嫉妬心の奴隷」の苦しみから自由になれると考えていたらしい田邊教授の目論見は大きくはずれました。

その後も万太郎くんの快進撃は続きました。

田邊教授は「嫉妬心の奴隷」としてますます深みにおちいることに。

ある時期から、田邊教授は万太郎くんを大学から追い出すしかないと考えていたはず。

万太郎くんが大学からいなくなり研究の環境を失えば、もはや万太郎くんは嫉妬の対象ではなくなるからです。

しかし、自分が万太郎くんを大学に招き入れた以上、追い出すにもそれなりの理由が要る。

理由もなく追い出したら気まぐれの決定を周囲から揶揄されかねない。

田邊教授の性格から考えて、それだけは避けたい。

万太郎くんを追い出すいい口実はないかと思案しているときに、その口実を万太郎くん自身が作ってくれました。

田邊教授はご自身が口にした通り「魂は自由に」なりました。

魂が自由になった田邊教授は、いくつも苦難を経て植物学に専念するようになり、植物学に対してこれまにないほど愛情を持つように。

その愛する植物学の道を断たれてしまった田邊教授。

こんなふうに考えたのでではないでしょうか。

自分は植物学の道から追い出されてしまったが、自分がいなくても植物学の道は今後も続いてゆく。

その道に欠かせない才能が万太郎くんの才能なのだと。

そして愛する植物学の将来のために万太郎くんの才能を受け入れた瞬間の田邊教授の言葉が

「私の蔵書は槙野に譲る。私の植物学は終わった。この先はMr.Makinoに」

田邊教授はここで初めて真の魂の自由を得たはずです。

魂の自由を得て、もう一度自分の人生を生きようと決意した矢先での不慮の事故。

やるせない最期でした。

予習レビュー

今週、ドラマの中で「岩崎弥太郎の弟・岩崎弥之助」の名前が登場します。

岩崎弥太郎とは言わずと知れた三菱財閥（現：三菱グループ）の創始者です。

生家は、弥太郎の曾祖父の代に貧しさから郷士（下級武士）の地位を売って地下浪人に。

地下浪人（じげろうにん）は、土佐藩の身分の一種です。

岩崎弥太郎は、1835年（天保5年）、岩崎弥次郎と美和の長男として生まれました。

藩の仕事を通して商売をおぼえ、1873年（明治6年）に三菱商会を設立。

弟の弥之助は1851年（嘉永4年）岩崎家の次男として誕生、兄の弥太郎よりも16歳年下です。

16歳のときに藩校に入学。

21歳のときに米国に留学。

弥太郎が三菱商会を設立した1873年（明治6年）に米国から帰国すると、三菱商会に入社して副社長に就任しました。

1885年（明治18年）2月に弥太郎が死去後、二代目総帥に就任。

史実では、現在の貨幣価値に換算して3000〜4000万円ほどの借金をリアル万太郎くんはつくってしまいました。

その借金を岩崎弥之助が肩代わりしています。

岩崎弥之助がリアル万太郎くんの借金を肩代わりしたエピソードがドラマの中で描かれるとしたら、おそらく次週以降になるものと思われます。